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小林敦志「自動車大激変!」

新型軽SUV「タフト」はスズキ・ハスラーを脅かすのか?販売トップを死守したいダイハツ

文=小林敦志/フリー編集記者
新型軽SUV「タフト」はスズキ・ハスラーを脅かすのか?販売トップを死守したいダイハツの画像1
ダイハツの「タフト」(「新型TAFT先行予約キャンペーン|ダイハツ」より)

 間もなく、ダイハツ工業からSUVスタイルの新型軽自動車「タフト」が正式デビューする。このタフトについては、今年1月に開催された東京オートサロン2020会場にコンセプトカーが出品されている。車名のタフトは、コアな4WDファンなどは“なつかしいなあ”とすぐに思い出す、かつてダイハツでラインナップされていた、クロカンと呼ぶにふさわしいジープ風モデルで使われていた車名である。

 軽自動車であること、その見た目や開発コンセプトを見ても、タフトはスズキ「ハスラー」をかなり意識したモデルであることは明らか。いうなれば、ダイハツが“ハスラーキラー”として、満を持して投入するモデルといっていいだろう。

 それでは、ライバルとされるハスラーはというと、2013年秋に開催された第43回東京モーターショーに参考出品された後に、同年12月24日に初代モデルが正式発表され、翌年(2014年)1月8日に正式発売となっている。実用性の高いトール系ワゴンの軽自動車とは一線を画す、趣味性が高く、丸いヘッドライトを採用したりする愛くるしさを持っているが、ヒルディセントコントロールを採用するなど、本格派志向のメカニズムも採用しているのがウリであった。

 デビュー当初、初代ハスラーは爆発的なヒットとなった。ハスラーのようなクロスオーバーSUVスタイルのモデルは“都市向けSUV”などと言われがちなのだが、地方のクルマユーザーの支持も大きかったことが、その大ヒットを導いたとも言われている。地方部、特に北海道などの降雪地域では、「最低地上高の高い軽自動車が欲しかった」という、降雪路を走りやすいという、ある意味地域限定ともいえる注目度の高い実用性の高さも、販売に大きく影響したようだ。

 初代ハスラーが登場した背景について、初代デビュー時に「鈴木修会長が、Keiの生産中止を惜しむ声を聞き、開発を進めるように打診した」といった、鈴木会長が市場の声を聞き逃さずに開発に導いたことが“ハスラー誕生”のきっかけとなったという話があった。

 その「Kei」とは、スズキが1998年から2009年までラインナップしていた、クロスオーバーSUVタイプの軽自動車。「アルト」のSUV版というような雰囲気のモデルで、ハスラーよりは乗用車に近いモデルであり、最低地上高は高めとなっていた。今でも乗り続けている人も多く、中古車市場でも活発に取引されている。ハスラーのヒットは、Keiユーザーの乗り替えも大きく貢献していたともいえる。

タフトとハスラーは好勝負を展開か

 近々登場するタフトも、いきなりハスラーのライバルとして登場したわけではなく、SUVタイプの「テリオスキッド」(1998~2012年)や、見た目ベースとなるが遊び心あふれる「ネイキッド」(1999~2004年)といったモデルをダイハツはラインナップしていたので、その点ではハスラーと同じようなバックボーンを持っていると言っていいだろう。

 ハスラーの後を追った“二番煎じ”モデルともいえるが、タフトデビュー後は、現行2代目ハスラーと販売面では好勝負を見せるのではないかと、業界関係者を中心に期待が持たれている。

 タフトハスラーを意識している一例として、最低地上高がハスラーより10mmほど高くなっているとのこと。これだけ見ても、初代ハスラーをよく分析している様子がうかがえる。もちろん、開発段階でじっくり検討した結果なのだろうが、それは「タント」と「スペーシア」といった、生活密着型の実用車同士の比較では、“足元が○mm広いです”などという“スペック勝負”はかなり有効。

 ただ、ハスラーとタフトでは、趣味性の高いモデル同士の比較なので、“スペックはすべてハスラーより上です”としても、「ヘッドライトが丸目ではない」などの主観的理由でハスラーが選ばれてしまうケースも多いので、あまりスペックを突き詰めるのもどうかと、個人的には考える。

 しかも、現行ハスラーはNA、ターボともに全車マイルドハイブリッドシステムが搭載されているが、そこについてタフトは対抗していない(マイルドも含めハイブリッド仕様ではないようだ)ようなので、ハイブリッドという、クルマが売れやすい“おまじない”のないタフトと、それを持つハスラーとの差が、販売にどう影響してくるのかも興味深い。

スズキとダイハツの熾烈な販売トップ争い

 グラフは2014年1月8日より初代ハスラーが発売となっているので、2014年から2019年までの、それぞれ暦年締め年間販売台数の推移を示したもの。初代デビュー時の月販目標台数5000台に対し、2014年は月販平均約8600台となり、まさに大ヒット。

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 モデル末期となった2019年でも月販平均台数は約4800台、2014年から2019年までの総トータル販売台数ベースでの平均月販台数は約6600台となっているので、統計台数上でも初代は大ヒットを納めたといえよう。現行2代目は2020年1月20日発売。1月単月の販売台数には初代がまだまだ多数含まれているが、2020年1月から4月までの累計販売台数は2万6009台で、月販目標台数6000台に対し、平均月販台数は約6500台となっている。

 新車販売業界の事情通氏いわく、「販売現場で聞いて回ると、現状ではさすがに2代目は初代ほどの爆発的な売れ行きとはなっていないようです。購入者層を見ても、初代ハスラーからの乗り替えも目立っているようです」とのこと。

“大ヒットモデルの2代目の宿命”ではないが、細かい部分は初代とは異なるものの、全体ではキープコンセプトとなっており、初代ほどの“サプライズ感”がないことも、比較的おとなしい立ち上がりとなっているようだ。

 スズキとダイハツは軽自動車を多くラインナップし、長いこと良きライバル関係を続けている。ここのところは、ブランド別では暦年であれ、事業年度締めであれ、販売台数トップはほぼダイハツがキープしている。そのダイハツの強みは、「ムーヴ」やタントといった量販モデルのほか、ムーヴ キャンバスや「ミラ トコット」といった派生モデルを積極的にラインナップし、人気モデルになっているというところ。

 特に、ムーヴ キャンバスなどは大ヒットモデルの1台となっている。キャンバスは感度の良い大人の独身女性をターゲットとしているが、“ママ層”や“年配層”ユーザーも注目しているのがヒットの要因となっている。

 トコットも見た目は“かわいい系”を意識しているが、いざ運転してみると、あくまで筆者の私見となるが、「キャスト」よりも乗降性が良かったり、静粛性なども含め、意外なほど上質なイメージに驚かされる。

タントが意外な販売苦戦に陥っているダイハツ

 一方のスズキは、もともと「ワゴンR」やスペーシア、アルトといった量販モデルが販売の中心となり、派生モデルが少ないなか、ハスラーが2014年にデビューし大ヒット。そのため、ブランド別販売台数でダイハツとデッドヒートを繰り広げていたスズキの販売台数にボーナスのように、ハスラーの販売台数が上積みされ、2014暦年締め販売台数で久しぶりにダイハツを抜き、ブランド別販売台数でトップとなった。そのスズキも、最近はスペーシアにSUVテイストを与えた“ギア”を設定したりもしている。

 ダイハツもタフトの投入で販売台数の上積みを図り、軽自動車販売トップブランドの地位を盤石なものとしたいのかもしれない。2019事業年度締めの年間販売台数では、トップのダイハツと2位のスズキの差は3万3918台(月販平均差約2800台)となっており、今でもダイハツのトップの地位は盤石なものにも見えるのだが……。

 実は、2019年7月にフルモデルチェンジを行ったタントの販売が芳しくないのである。統計台数で見ると、2019事業年度締め販売台数では7000台ほど差をつけられているが、ホンダ「N-BOX」に次いで2位となっているので、「本当に販売苦戦しているの?」と思う人もいるかもしれない。

 しかし、タントはすでに大量の自社届け出を行い販売台数の上積みをしているのが目立ち、それが届け出済み未使用中古車として大量に流通していることは、新車販売業界に精通している人の間では有名な話になっているとのこと。

 つまり、自社届け出で販売台数を上積みして統計上は面目を保っているが、“真水”ともいえる、きちんとした売り先のある純粋な新車販売台数ベースでは、かなり苦戦しているというのである。

「モデルチェンジがライバル車と比べて後発のわりには、目新しい仕掛けがなかったことが響いているようです」とは、前出の事情通。

 タフトがタントの苦境を見て開発されたわけではないだろうが、結果的には、名実ともに軽自動車販売トップブランドの地位を固めるという使命を帯びて発売されるといってもいいだろう。

 しかし、ハスラーにあってタフトにはない要素があるのだが、それについては次稿に詳述したい。
(文=小林敦志/フリー編集記者)

小林敦志/フリー編集記者

小林敦志/フリー編集記者

1967年北海道生まれ。新車ディーラーのセールスマンを社会人スタートとし、その後新車購入情報誌編集長などを経て2011年よりフリーとなる。

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