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カイロ大卒…学歴詐称疑惑の小池百合子、私が仰天した“嘘で塗り固められた政治家”の正体

文=粟野仁雄/ジャーナリスト
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「小池百合子フィシャルサイト」より

 2006年1月、筆者は「週刊金曜日」に『小池環境相の二枚舌』と題する記事を書いた。概要はこうだ。前年の05年6月に兵庫県尼崎市のクボタ工場の従業員や周辺の住民が多数、がんや中皮腫で亡くなっていたことが毎日新聞の大島秀利記者のスクープで判明。追うようにアスベスト問題を取材していた。いわゆる「クボタショック」だ。

 当時、小池百合子氏は小泉純一郎政権下の環境大臣。尼崎市を訪れた小池氏は中皮腫に侵されていた土井雅子さん(故人)をテレビカメラの前で励まし、「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」の古川和子代表世話人に「崖から飛び降りてでも風を起こしてほしい」といわれ、「古川さん、見ていてください。崖から飛び降りますからね」と言った。

 だが石綿新法の補償内容などは、再三口にした「隙間なく」との約束とは裏腹に、著しく後退。被害者らが傍聴する翌年1月の環境委で民主党議員に「(崖から)飛び降りる」発言の有無を問われるとあっさり否定した。終了後、古川さんが詰め寄ると「そんなこと言ってませんよ」と言ってのけた。平気で嘘をつく姿に古川さんと仰天したものだ。 

『女帝 小池百合子』

 さて、『女帝 小池百合子』(文藝春秋)が話題だ。著者の石井妙子氏は3年ほど前、冒頭の私の記事を見つけたらしく、面識はなかったが突然「話が聞きたい」と電話してきた。会ったあと彼女は私に紹介された古川さんの元へ取材に走った。

 小池氏は関西随一の高級住宅街とされる芦屋市で生まれ育った。石井氏が贈ってくれた本著は、そうした町の裏の空気もよく描けていると感心した。神戸在住の筆者が「こっちに親しい人がいるの?」と訊くと「いませんけど、いろいろ歩いてみて感じたんです」。観察力が鋭いのだろう。

 貿易商をしていた小池氏の父は大言壮語の人物だったようで、国政選に出て落選し、のちに事業に失敗する。「お嬢さん学校」とされる甲南女子中学、高校に通っていた娘・百合子氏は肩身の狭い思いをしたようだ。

 さて、「カイロ大学卒業」「アラビア語通訳」は若い頃から一番の「売り」だった。当時から箔をつける留学先は欧米なので不思議だったが、本著で父がカイロに進出した影響と知った。日本でも英語ぺらぺらの帰国子女も増えてくるなか、差をつけたかったのだろう。「カイロ大卒」「アラビア語通訳」を武器にメディアへ売り込み、日本テレビではアシスタント、テレビ東京でメインキャスターの座を射止めた。

 その後は政界に転身。「政界の渡り鳥」として時の最有力者にすり寄り、環境大臣、防衛大臣、都知事など、東大卒の秀才でも容易には手にできない大きな権力を手にしてきたことは周知のとおり。若い頃、可愛がってくれたテレビ東京の社長に始まり、細川護熙、小沢一郎、小泉純一郎――。現在は自民党の二階俊博幹事長のようだ。

 上昇志向の強い政治家は大なり小なり、心苦しい思いで恩人などを裏切ってゆく。しかし本著からは、小池氏がそんなことを歯牙にもかけない性格だとわかる。利用価値がなくなればさっさと捨てる、の繰り返し。

事実なら公選法違反

 著者の石井氏は『おそめ 伝説の銀座マダム』『原節子の真実』(共に新潮社)などでさまざまな賞を受賞した売れっ子のノンフィクションライターだが、名のあるライターのインチキも筆者は知る。

 仰天したのが佐野眞一氏だ。2005年に尼崎市で起きたJR福知山線の転覆事故。発生直後から筆者が遺族宅を必死に回っていることを知った有名月刊誌に、佐野氏の「ゴースト」をやらされそうになった。断ったら後日、ある遺族宅で筆者の代わりに急遽、派遣されたライターと鉢合わせした。知人だった。佐野氏はこの知人の取材などを、さも自分が対面取材したかのように描写しており、「有名ライターってこんないい加減なことしてるんだ」と驚いた。この経験からも、筆者や古川さんを熱心に訪ねる石井氏は本物だと感じるのだ。

 本著は取材に3年半かけた力作だ。小池氏の「カイロ大学首席卒業」という触れ込みも、小池氏と同居していたカイロ市在住の日本人女性を訪ねて「詐称」と断じている。学歴に関して筆者は取材していないが、以前からも噂は絶えず、さまざまな記事を読むとどう見ても卒業したとは思えない。アラビア語も稚拙で石井氏は「中一レベルの英語でハーバードを首席卒業したと称しているようなもの」。それで「首席」「通訳」とは。

 有名会社の社長が学歴コンプレックスから学歴詐称するのは勝手かもしれない。しかし議員は公選法違反である。プロ野球の故野村克也監督の沙知代夫人も生前、国政選挙に出たが、学歴詐称がばれてオシャカになった。7月に投開票が迫った都知事選、「詐称」を否定して堂々と選挙公報に載せるのか。まあ、エジプトはかなりいい加減そうで、彼の地に手は打っている可能性もあるだろう。

 石井氏は、小池氏が「男性中心社会に泣く女性たちの味方」を演じながら、男に媚び「キレイどころを揃えました」などと言っていることも指摘する。男性でも女性でも、若い頃からしたたかに渡り歩く人はいくらもいる。手玉に取られるジジイどもが情けないだけの話だ。もちろん彼らも小池百合子という人間を利用したのだが……。

 小池氏を大臣や都知事、さらには「総理大臣候補」にまでのし上がらせた最大の責任者は「空虚なメディア」なのだ。とりわけ中身よりも「絵になること」を求めるテレビメディア。たとえば重要な会議の取材。多くは「頭取り」だけで退出させられ、都合の悪いことを隠した終了後の発表会見を報じる。しかし映像を見た人は会議が公開されているように見える。伝え手はそれで「一丁上がり」。若い頃からメディアに接し「記者なんてちょろいものだわ」と見下し、利用してきた小池氏。都知事選で追及されるであろう学歴詐称疑惑に、どう対処するのかが見ものである。

粟野仁雄/ジャーナリスト

粟野仁雄/ジャーナリスト

1956年生まれ。兵庫県西宮市出身。大阪大学文学部西洋史学科卒業。ミノルタカメラ(現コニカミノルタ)を経て、82年から2001年まで共同通信社記者。翌年からフリーランスとなる。社会問題を中心に週刊誌、月刊誌などに執筆。
『サハリンに残されて−領土交渉の谷間に棄てられた残留日本人』『瓦礫の中の群像−阪神大震災 故郷を駆けた記者と被災者の声』『ナホトカ号重油事故−福井県三国の人々とボランティア』『あの日、東海村でなにが起こったか』『そして、遺されたもの−哀悼 尼崎脱線事故』『戦艦大和 最後の乗組員の遺言』『アスベスト禍−国家的不作為のツケ』『「この人、痴漢!」と言われたら』『検察に、殺される』など著書多数。神戸市在住。

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