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サブリース会社に騙され人生狂わされた!家賃保証に目がくらんだ賃貸経営の末路

文=林美保子/フリーライター
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「Getty Images」より

 レオパレス21の家主100人超が未払い賃料支払いを求めた集団訴訟、スルガ銀行の不正融資も明らかになったシェアハウス「かぼちゃの馬車」事件など、近年サブリース関連の問題が続発している。

 サブリースとは、家主が個別に物件を貸し出すのとは違い、不動産会社がアパートなどを一括して借り上げ、転貸(又貸し)する仕組みである。多くはアパート建築とのセットで、「家賃収入を年金代わりに」とか「相続税対策に」などというセールストークを仕掛けてくる。家賃保証で空室リスク・滞納リスクを回避できるというメリットがある半面、賃料減額などで家主がアパートの住宅ローンを支払えなくなり、なかには自己破産にまで追い込まれるケースも少なくないのだ。

 サブリースの被害は、これらの社会問題化されたケースだけではない。都内に住むAさん夫妻(60代)が不動産会社B社を相手取って訴訟を起こしたのは、サブリースの違う側面での問題があったからだ。

サブリース会社は、「普通のマッサージ店」と主張

 2011年11月、Aさんは今まで住んでいた自宅(1階店舗、2~3階住居)のサブリース契約(5年更新)をB社と結んだ。きっかけは近所に貼ってあったB社の広告が目に入り、近所の飲食店数軒もB社を利用しているという話を聞いたからだった。

「サブリースを選んだのは、やはり、管理の手間がかからないことと、家賃保証をしてくれるからでした」

 B社は店舗専門の不動産仲介会社だったが、契約時には「2~3階は住居用として使う」と約束、「賃借人が見つからなければ、当社の社員寮にしてもいい」とも言っていた。

 別の区に住まいを移したAさん夫妻がしばらくして立ち寄ってみると、1階はおでん屋のテナントが入っていた。ところが、住居用として約束したはずの2~3階には、「癒し系マッサージ」という看板が見えるではないか。近所の人に話を聞いて、驚いた。

「中国人の女性店員がかなりきわどいことまで行う風俗系マッサージらしいという噂ですよ」

 B社に抗議したが、「いやいや、普通のマッサージ店です」と噂を否定、警察に問い合わせてみたものの、性風俗関連特殊営業であるという確証をつかむことはできなかった。癒し系マッサージ店は繁華街でもないこのあたりでは異質で、近所から迷惑がられていたのだが、それだけではなかった。

 そもそも路上の立て看板自体、違法ではあるが、その立看板が倒れたのが原因でドアが損壊した。ラーメンやオイルを流して排水管を詰まらせた挙句、排水管破裂で汚水が噴き出て隣の敷地まで迷惑をかける羽目にもなった。度重なる不祥事に、マッサージ店に出て行ってもらうようにB社に申し入れるが、聞き入れてもらえない。

「こんな風俗店をやっていた物件を買うのか」と捨てゼリフ

 サブリースは家賃保証があるなど、家主には一見メリットがあるように思われがちではあるが、契約後にデメリットの大きさに気づく家主は少なくない。

 多いのは前述したように、アパート経営を持ちかけて、「30年家賃一括保証」を前面に出しながらも、途中で家賃減額になるケース。これは、もともと建物を持っていたAさんにはあてはまらないのだが、意に反して風俗まがいの店がテナントに入ってしまったのは、サブリースの場合、家主は又貸し相手を選ぶことができないからだ。

 また、サブリース会社が一括借り入れする以上、サブリース会社は家主に対して借主の立場になる。借主保護の性質が強い借地借家法の適用対象になるため、契約解除を申し入れても、そう簡単には解約できない場合が多いのだ。

 その後しばらくしてマッサージ店は退去したものの、Aさんは賃貸経営をあきらめることにした。B社には契約の更新をしない旨伝え、大手不動産会社に仲介を依頼して、建物を売却することに決める。

 しかし、その後も問題は続いた。売買契約の決済日にB社担当者が現れ、「こんな風俗店をやっていた物件を買うのか」と買主に向かって、腹いせとしか思えない暴言を言い放ったのだ。何も知らされていなかった買主は怒り、480万円の値引きで対応せざるを得なくなったという。

国交省もサブリース問題に乗り出す

 2017年9月、Aさんは、「サブリースの被害に泣いている人がいるということを知ってもらいたい」という思いから訴訟を起こすことを決心する。訴訟期間中の2年半の間には心労から不眠症にもなったが、東京地裁からの和解勧告により、今年1月、B社が損害賠償金を支払うことで和解が成立した。

「でも、弁護士費用もかかり、値引き分の480万円には到底およびません」

 後で知ったことではあるが、AさんがB社と契約を結んだのは、同社がサブリース事業に乗り出してそんなに日が経っていない頃のことで、ほんの数件目だったらしい。いまでは、契約店舗数は1000件にも上り、サブリース事業はB社の稼ぎ頭になっている。「今後また、サブリース問題の新たな火種となっていくのではと懸念しています」と、Aさんは語る。

 2018年10月、国交省は「サブリース契約に関するトラブルにご注意ください! ~トラブルの防止に向けて金融庁・消費者庁と連携~」と題した報道発表資料を公表、オーナーに向けて、さまざまな注意を促している。

 賃貸経営と聞くと、一見、ラクして儲かるようなイメージがあるが、実際にはそんなに甘いものではないようだ。

(文=林美保子/フリーライター)

林美保子/ノンフィクションライター

林美保子/ノンフィクションライター

1955年北海道出身、青山学院大学法学部卒。会社員、編集プロダクション勤務等を経て、執筆活動を開始。主に高齢者・貧困・DVなど社会問題をテーマに取り組む。著書に『ルポ 難民化する老人たち』(イースト・プレス)、『ルポ 不機嫌な老人たち』(同)、『DV後遺症に苦しむ母と子どもたち』(さくら舎)。

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