ビジネスジャーナル > 政治・行政ニュース > 菅原議員の不起訴、裏で“司法取引”か
NEW
永田町の「謎」 現役議員秘書がぶっちゃける国会ウラ情報

菅原一秀前経産相、選挙違反を認めたのに不起訴処分…裏で自民党と検察が“司法取引”か

文=神澤志万/国会議員秘書
菅原一秀前経産相、選挙違反を認めたのに不起訴処分…裏で自民党と検察が司法取引かの画像1
会見で公選法違反を認めて謝罪する自民党の菅原一秀衆議院議員(写真:読売新聞/アフロ)

 国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。

 国会は閉会しましたが、永田町は相変わらずざわついています。大きな原因は、やはり前法務大臣の河井克行衆議院議員と河井案里参議院議員の夫妻が公職選挙法違反容疑で逮捕されたことですね。去年の参議院議員選挙で広島県内の首長、県や町の議会議員など94人に現金を配布していたことが明らかになり、三原市の天満祥典市長は現金の受け取りを認めた上で辞職を表明しました。

 おそらく、小選挙区制度になってから最大規模の買収行為ではないでしょうか。ここまで大きくなったのは「ドケチ夫妻」の純粋な収入からだけでなく、自民党からの1億5000万円もの原資があったからこそ、です。

 これには、さすがに自民党内からも憤りの声が続出しています。なぜ河井夫妻にだけ、こんなにたくさんのお金が流れたのか。これから解明されるのでしょうが、今後、自民党本部はどんな重点候補に対しても、1億5000万円もの支出は二度とできないでしょう。内部の決裁機能も強化されるでしょうからね。

 通常なら選挙関連の資金は党の選挙対策委員長に決裁権があるはずですが、この規模の金額だと、二階俊博幹事長から指示されたと見るのが妥当ですね。それも、安倍晋三首相筋から二階幹事長へ連絡がいくルートだと思います。もちろん、さすがに安倍首相本人が二階幹事長へ直接伝えることはないと思いますが……。実際のところはどうなんでしょうか。

逮捕当日に起きた河井克行議員の“脱走問題”

 6月18日の逮捕当日、克行議員の身柄について、ちょっとした騒ぎがありました。逮捕前日に赤坂の議員宿舎に入る姿は確認されているものの、いつ出て行ったのかが不明だそうです。マスコミに追いかけられたくなかったのでしょうね。

 この「脱走問題」について、知り合いの週刊誌の記者と、ボスが逮捕された経験のある秘書たちと一緒に、脱出方法を探ってみました。真相はわかりませんが、おそらく宿舎の地下1階の駐車場入り口に第三者の乗用車を用意して乗り込み、後部座席かトランクに隠れたのだろうという結論になりました。

 どちらにしろ、衆議院議員・前法相とは思えない姿で宿舎を出て、検察が指定した場所まで移動したと思われます。身から出た錆とはいえ、情けないですね。

 克行議員といえば、現在は立憲民主党の参議院議員で、以前は広島県内の選挙区で国民新党に所属していた塩村文夏議員を尾行していたことを「週刊文春」(文藝春秋)が報じていました。警察OBの“探偵”に依頼して、3カ月も尾行させていたそうです。塩村議員は気づかなかったそうですが、本人によると「これまでも尾行や盗撮は何度かあった」そうです。

 実は、その人物は神澤も知っているのですが、「プロってすごい!」の一言です。逆に言えば、調査対象者になった場合、自分の気づかない間に情報収集されている可能性があるということで、背筋が凍ってしまいます。

 一方で、文春が河井夫妻の買収疑惑をスクープしたときは、車3台分の人員を広島に送り込み、13人のウグイス嬢へ同日の同時刻に一斉に突撃取材したそうですから、これまた警察並みの機動力ですよね。良くも悪くも、ターゲットになったら人生おしまいということです。

菅原議員が不起訴の裏に自民党との司法取引?

 そんな余談もあって、秘書仲間と盛り上がっていた最中、前経済産業大臣の菅原一秀衆議院議員の不起訴処分の速報が入り、一同驚きました。これまで多くの証拠や証言が出てきていたので、「さすがに起訴はされるでしょ」というのが永田町の住人たちの大方の見解だったからです。

 菅原議員の公設秘書が選挙区内の有権者に香典を渡していた現場がスクープされ、公選法違反の疑いで告発されていましたよね。ほかにも、選挙区内で贈答品を送ったり、「会費」と称して寄付を行っていた裏帳簿の存在が明らかになったり、公選法違反は明確でした。菅原議員自身も、16日に記者会見で公選法違反を認めて謝罪しています。それなのに、東京地検特捜部は不起訴処分(起訴猶予)にしたのです。納得がいきませんね。

 一部では、菅原議員は次の選挙では到底勝てないだろうから、議員辞職させて10月に補欠選挙をするのではないかとも言われていただけに、なんともスッキリしません。

 神澤は、自民党と検察上層部の間に「高度な司法取引」があったと見ています。16日に菅原議員が自民党本部で会見を行ったあたりから、なんか腑に落ちないことが多かったのです。

 まず、会見のタイミングです。東京地検の事情聴取を受けていたことが報道される「直前」でした。そして、会見の場所です。自民党本部が場所を提供するということは、菅原議員の不起訴が前提だったはずです。起訴されるような議員ならば、即離党。それが自民党ですから。

 とはいえ、25日に不起訴の連絡を受けるまで、菅原議員は気が気でなかったはずです。新型コロナでの自粛期間中も女性と焼肉デートを楽しむ余裕があった菅原議員ですが、ここ最近はおとなしくしていたようです。不起訴を受けて、また表情が明るくなり、遊び出すかもしれないと思うと、「東京地検は尻込みするんじゃねえ!」と言いたい気分です。きっと、現場の検事も忸怩たる思いでしょうね。

 検察にとって、菅原議員の不起訴は河井夫妻の起訴に焦点を絞るという決意の表れなのかもしれません。首相官邸としても、河井夫妻の身柄を差し出す代わりに、菅原議員については勘弁してもらったのでしょう。

 そして、もうひとり、谷川弥一衆議院議員(長崎3区)の選挙区でも選挙違反容疑で逮捕者が続出していますが、谷川議員はもう高齢で次の選挙には出馬しないでしょうから、そっちは粛々と捜査するスタンスなんでしょうね。

 いずれも、国民感情とはかけ離れた物差しで起訴するかどうかを決めているのが見え見えです。「検察の正義」なんて、たかが知れていますね。心底がっかりしています。

(文=神澤志万/国会議員秘書)

『国会女子の忖度日記:議員秘書は、今日もイバラの道をゆく』 あの自民党女性議員の「このハゲーーッ!!」どころじゃない。ブラック企業も驚く労働環境にいる国会議員秘書の叫びを聞いて下さい。議員の傲慢、セクハラ、後援者の仰天陳情、議員のスキャンダル潰し、命懸けの選挙の裏、お局秘書のイジメ……知られざる仕事内容から苦境の数々まで20年以上永田町で働く現役女性政策秘書が書きました。人間関係の厳戒地帯で生き抜いてきた処世術は一般にも使えるはず。全編4コマまんが付き、辛さがよくわかります。 amazon_associate_logo.jpg

菅原一秀前経産相、選挙違反を認めたのに不起訴処分…裏で自民党と検察が“司法取引”かのページです。ビジネスジャーナルは、政治・行政、, , , , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!