地元有権者に秘書が香典などを提供していたとして、公選法違反(寄付行為)容疑で告発されていた前経済産業相の菅原一秀衆院議員(58)が不起訴処分(起訴猶予)になった。東京地検特捜部が25日、発表した。事実上の無罪放免ともいうべき措置で、インターネット上では怒りの声が広がっている。元東京地検検事の郷原信郎弁護士も「#菅原前経産相の不起訴に抗議します」とのハッシュタグを自身のTwitterアカウントで拡散した。菅原氏はなぜ起訴されないのか。郷原弁護士に聞いた。
共同通信は26日、記事『特捜部、辞職を考慮し起訴猶予 菅原前経産相への公選法違反告発』で、地検特捜部の見解を「経産相を辞し、公の場で事実を認めて謝罪したことなどを考慮した」と説明。そのうえで、以下のように報道した。
「菅原氏は『告発されたことを重く受け止めるとともに、不用意に行ったことを心から反省し、深くおわび申し上げます』とのコメントを出した。
特捜部は、支援者らの葬儀の大半では菅原氏が自ら弔問し、秘書らが香典を持参したのは例外だった点を考慮。『公選法を軽視する姿勢が顕著とは言えない』と判断した」
つまり、「菅原氏が経産相を辞任し、謝罪した」「香典を持って行った回数は秘書より、『自身が持参する香典』のほうが多かった」ので不起訴にしたというのだ。
これに対して郷原弁護士はTwitterで以下のように反論している。
「【大拡散‼】免許持って運転する人がスピート違反して赤切符切られたら罰金払う。選挙で当選した国会議員の公選法違反が発覚したのに、『大臣辞めた』『謝罪した』から罰金も払わないで済まされる。そんなことが罷り通るのか?もう誰も交通違反の罰金など払わない。#菅原前経産相の不起訴に抗議します」(原文ママ)
【大拡散‼】免許持って運転する人がスピート違反して赤切符切られたら罰金払う。選挙で当選した国会議員の公選法違反が発覚したのに、「大臣辞めた」「謝罪した」から罰金も払わないで済まされる。そんなことが罷り通るのか?もう誰も交通違反の罰金など払わない。#菅原前経産相の不起訴に抗議します
— 郷原信郎【「深層」カルロス・ゴーンとの対話 起訴されれば99%超が有罪となる国で】 (@nobuogohara) June 25, 2020
郷原弁護士「まず秘書が訃報を収集して、菅原氏が行くか判断」
巷間では「謝ってすむなら、警察(検察)はいらない」というのが常識だが、いったいどういうことなのか。菅原氏の秘書の代理人も務める郷原弁護士は次のように語る。
「常識では考えられない。謝罪と辞任は不起訴の理由になりません。秘書の香典持参について菅原氏は『選挙が目的ではなく、弔意を示すべき人物の葬儀に参列したまでで、どうしても自身でそれができない場合に、例外として秘書に香典を持たせて参列した』などと述べています。事実はまったく逆です。なぜ地検特捜部が菅原氏の供述をすべて鵜呑みにしているのか甚だ疑問です。
こちらが検察に提出した供述は『まず選挙区内で誰かが亡くなったという情報を秘書が入手する。当然、菅原氏本人がその情報を入手することもあるが、区内で議員と関係している人が亡くなったら香典を出すということは決まっていた。いくらにするのかを菅原氏が決める。実際に菅原氏が行かないと顔が立たない場合には、例外的に菅原氏本人が参列する』というものです。菅原氏は秘書にすべての責任を転嫁するような発言を続けていますが、許しがたい行いです」
一連の菅原氏の疑惑に、自民党衆議院議員の関係者は「国政、地方問わず議員事務所の秘書の朝は、地元新聞の訃報欄を確認するところから始まる。菅原さんの件を立件されたら、これまでずっと地域で行ってきた政治活動ができなくなる。有権者と議員の人間関係を壊すのか」などと話す。だが知人や恩人に哀悼の誠を示すのと、葬儀を口実に選挙区民を取り込むことは、似て非なるものではないのだろうか。
(文=編集部)