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Mac、変貌&価格低下の兆し…iPhoneアプリ利用可能か CPU自社開発の衝撃

取材・文=A4studio
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Apple HP」より

 2020年6月23 日に開催されたアップルの開発者会議「WWDC」にて、同社は今後すべてのMacシリーズ(iMac、MacBookなど)のCPUを、自社開発の「Apple Silicon(アップルシリコン)」に移行させると発表した。初めてこれを搭載するモデルは2020年末までに発売される予定だという。

 アップルは06年からこれまでインテル製のIntel CoreシリーズをCPUとして採用しており、CPUの変更は14年ぶり4度目。アップルCEOであるティム・クック氏が「Macにとって極めて大きな一歩」「Macの将来にこれほどワクワクしたことはない」と述べたことからも、アップルがシリコンにどれだけ注力しているかがわかるだろう。

 しかし、現段階で発表されている情報だけでは、CPUを自社製にすることによってMacがどう変わるのか、いまいち掴みきれないところ。そこで今回はITジャーナリスト・石川温氏に、シリコンに寄せられる期待や、アップルの内情と思惑などについて聞いた。

インテル頼りだったこれまでのCPU、アップル的にはやりにくかったのか

 そもそもCPUとは、PC上でOSを処理するための重要な半導体で、PCの動作の軽い・重いを大きく左右するチップである。先述の通り、これまでMacはIntel製のCPUを14年も使っていたのだが、あのアップルが長年頼りにしていたというIntelのCPUにはどんな特徴があったのだろうか。

「14年前にアップルはCPUをIBM/モトローラ製のPower PCから、インテル製のIntel Coreシリーズに切り替えました。その当時、インテル製のチップは非常に高性能だったんです。アップルのみならず、Windowsでもここ十数年、インテル製チップが主流となっており、圧倒的なCPUシェアだったといえるでしょう」(石川氏)

 だがその一方で、アップルなりの苦悩もあったのではないかと石川氏は分析する。

「インテルのチップは相当進化していましたが、アップルとしてはPCの重要な部分を他社に握られているという意味で、やりにくい部分もあったんでしょう。たとえば、インテルがチップセットを生産していくなかで、なかなかアップル向けのものが回ってこなかったり、プロセッサをインテルに頼ってしまうことでMacが独自に進化していけなかったりと、不自由に感じる面も多々あったんだと推察できます。

 しかし、ここ10年でスマホ向けのチップセットがどんどん進化してきて、高い性能と省電力を両立できるようになってきています。アップルもiPhone用、iPad用のチップセットを自社開発してきたことで、着実に実績を上げてきたのです。そこで、アップルとしてはOSからチップセット、ハードウェアまで一貫して自分たちでつくればより自由度が上がると考え、今回Macも自社開発のチップに移行することに決めたんでしょう」(石川氏)

 そんな背景を知るIT業界では、今回のアップルの決断を「自然な流れ」と見る人が多いようだが、それと同時にシリコンは熱い視線を浴びているようだ。

「CPUをシリコンに切り替えることによって今後、iPhoneやiPad向けのアプリケーションがMacで動く可能性があると見られています。現状、スマホ市場で存在感のあるiPhoneに比べ、PC市場においてのMacの存在感はさほど大きくありません。ですからシリコンの搭載が、アプリケーションのエコシステムをMacに持ち込むことができる転換期として見れば、PC市場でMacが存在感を強めていくという期待ができるわけです。そういう意味ではPC業界的にも、今年はかなりMacに注目が集まる印象的な年になるだろうと感じています」(石川氏)

シリコン搭載でiPhone 向けアプリが使えるように?

 では、シリコンが搭載されたMacはどんなPCになるのだろうか。

「やはりシリコンはiPhoneで培ってきたものなので、シリコン搭載のMacは高い性能と省電力を実現するでしょう。また、Wi-Fi環境がないところでもインターネットに接続でき、LTEや5Gがつながるということも可能性として十分にありえます。それを踏まえると今後のMacは利便性などが高くなり、よりiPhoneやiPadに近い存在になってくるのではないでしょうか」(石川氏)

 近年は、スマホとPCが切磋琢磨し、お互いをより良くしているように見える。スマホはPCの背中を追い続けた結果、高性能を実現し、PCと並べて語られることも多くなった印象だ。今回のシリコンによってPCもスマホの進化を応用し、高性能であるがゆえのデメリットを潰していけば、スマホとPCの境界線が曖昧になるのではないだろうか。しかし、その一方でアップルにも少なからず不安材料があるのだという。

「アップルは今後2年ほどかけてMacをシリコンに寄せていきたいとアピールしていましたが、まだまだインテル製のチップを搭載したこれまでのMacでないと使えないアプリやソフトも多く存在します。そういうアプリを日頃から使っている人は、シリコン搭載のMacに気軽に乗り換えられないでしょう。そのあたりはアップルにとっても歯がゆい懸念材料のはずです」(石川氏)

 そんなシリコンは、Intel Coreシリーズに匹敵するレベルのCPUになれるのだろうか。

「パソコン向けのシェアでいうとなかなか厳しいと予想しています。シリコンを採用するのは当然iMacやMacBookといったアップル製品のみになるでしょうし、WindowsベースでPCをつくっているメーカーは今後もインテルや他社のチップを採用するでしょう。シリコンが搭載されたからといって、いきなりMacがドカンと売れるようなことはないと思います。

 ただ、MaciPhoneやiPadに近づくということは、アップル独自の進化としては大きいです。iPhoneユーザーがPCの購入を検討したときに、『iPhone向けのアプリが使えるからMacBookにしようかな』というように、Macが選ばれやすくなるでしょう。また、自社開発によってコストカットが実現し、Macの価格が下がることもあり得るので、『最近、Macが安くなってきたからMacにしようかな』といった選ばれる理由が増えるかもしれません。選択肢としてMacが挙がりやすくなって、結果的にシェアがじわじわ広がってくる可能性は充分あるのではないでしょうか」(石川氏)

 Macがシリコンを搭載したからといって、PCライフが劇的に便利になるということはなさそうだが、MacがiPhoneに近づき、より身近な存在になっていくのではないだろうか。テレワークやオンラインミーティングが当たり前になってきた昨今の世情を踏まえれば、小さいようで大きな進化となるかもしれない。

(取材・文=A4studio)

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A4studio

エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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