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さんきゅう倉田「税務調査の与太話」

「B勘屋」が指南する驚愕の脱税手法…海外に法人を設立して経費水増し&所得を圧縮

文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人
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「Getty Images」より

 元国税局職員、さんきゅう倉田です。好きな勘定は「どんぶり勘定」です。

「B勘屋」という職業があります。B勘定の領収証を販売する人たちのことです。おそらく、A勘定という言葉はなく、「正規の取引でないもの」という意味で「B」と付けたのだと思われます。正規の取引ではない領収証を販売する、つまり架空の領収証を発行する業者です。

 法人や個人事業者にとって、領収証は現金と同じくらい大切なものです。業務に関係する支払いがあれば、証拠書類として領収証などを保管しなければいけません。

 帳簿には、領収証を見て支払い金額や支払いの相手を記載します。この支払いが経費になるので、支払いが多ければ多いほど経費が増えます。経費が増えれば所得が減るので、納税額が少なくなります。だから、領収証は会社の宝です。

 もし、支払いがないのに領収証がもらえたらどうでしょう。税法に反することですが、納税額が減るので、会社の財政面だけで考えれば有利になります。そのように考える経営者に領収証を販売するのがB勘屋です。

 とはいえ、ぼくは実際に会ったことはなく、その存在を噂で耳にする程度でした。「実物を見た」という人がいなかったので、ユニコーンやドラゴンのような空想上の生き物のように思っていました。

B勘屋が提示した脱税スキーム

 ところが先日、B勘屋に会ったことがあるという税理士の先生に出会いました。B勘屋は税理士事務所へ営業に来るそうです。どの面下げて、税の専門家のところに来るのでしょうか。「いいですね、クライアントに提案しますよ」などと言ってもらえるのでしょうか。先生から、B勘屋が持ってきたスキームについて教えてもらいました。

・カンボジアに広告宣伝費名目で送金する。
・そのお金で、カンボジアに法人を設立する。
・その法人から出資して、香港にも法人をつくる。
・その香港の法人を潰して、出資金を現金で日本に持ち込む。

「この方法なら絶対バレませんよ」と言っていたそうです。昔のB勘屋と異なり、手法が複雑です。ふらっとタバコ屋さんのようなところへ行って、領収証の束を買うのではないんですね。

 広告宣伝費を送金するということは、経費が増えます。その分、所得が減るので、納税額が減る。しかし、実際に送金をしているので会社の現金も減ってしまいます。

 カンボジアと香港の会社法はわかりませんが、法人の設立や清算結了(会社を潰すこと)の登記が無料でできるということはないように思います。それらにお金を使いつつ、どこかのタイミングでB勘屋が手数料を抜くと、香港で現金に変えるときは、8割くらいになるでしょう。この割合で、どれほどのメリットがあるのか計算してみましょう。

 このスキームで1億円を不正に支払うと、手元に8000万円の自由なお金が発生します。ただ、会社のお金は1億円減りますね。B勘屋を利用しなかった場合は、1億円のうち、3000万円を正しく納税して、7000万円が会社に残ります。

 会社とスキームを利用した社長がイコールだとすると、トータルのキャッシュには1000万円の差が出ます。架空外注費1億円の10%です。たかだか10%のために、脱税に手を染める必要があるのでしょうか。いつかばれるかもしれないとびくびく過ごしたり、どこの馬の骨ともわからない反社会的なB勘屋に手数料を支払ったりするくらいなら、生まれ育った国に正しく払ったほうがいいように思います。

 B勘屋に払っても誰のためにもなりませんが、国に払えば自分の子供や次世代の若者のためになります。それでも、B勘屋を利用してでも納税額を減らそうとする成り上がりの社長が後を絶たないようです。

 この話をしていたら、知人が自分の父親の話をしてくれました。

「ぼくは、ほとんど父親に会ったことがないんです。この間、母親に『親父って、どんな人なの?』って聞いたら、『建設業だったんだけど、仕事が少ないときは懇意にしている業者の依頼で請求書だけ出して、請求書の金額を振り込んでもらって、90%を現金でバックしてたわ』と言われました。親父はB勘屋だったんです」

 意外と周りにいるんだなと驚き、笑いました。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)

さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人

さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人

大学卒業後、国税専門官試験を受けて合格し国税庁職員として東京国税局に入庁。法人税の調査などを行った。退職後、NSC東京校に入学し、現在お笑い芸人として活躍中。著書に『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』(総合法令出版)、『お金持ちがしない42のこと』(Kindle版)がある。
さんきゅう倉田公式ホームページ

Twitter:@thankyoukurata

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