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ドコモ、格安サブブランド設立か…ソフトバンクとKDDI、“かたちだけの”値下げ

文=編集部
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NTTドコモ代々木ビル(「Wikipedia」より)

 菅義偉首相が強く求めてきた携帯電話料金の値下げ。とりあえず、これにこたえるかたちでKDDI(au)とソフトバンクは10月28日、新たな料金プランを発表した。いずれも主力のブランドではなくサブブランドでデータ通信の容量が大きく、低額のプランを追加する。

 5G(第5世代移動通信システム)対応の大容量プランは現在、家族利用や期間制限などの割引を除くとNTTドコモが月額7650円、auが同8650円、ソフトバンクが同8480円(共に税抜き)である。メインブランドで月額1000円値下げすれば、単純計算で年間で数千億円規模の減収になるため、それは避けたいという本音が透けて見えてくる。

 総務省は10月27日、「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」を発表した。ほかのキャリアや格安スマホへのユーザーの乗り換えを促すのが目的であり、菅政権が熱望する値下げを実現する即効性はないといわれていた。菅政権が求めているのは、動画の普及などで利用が伸びているデータ容量が20ギガバイト以上の大容量プランの値下げである。

KDDIとソフトバンクはサブブランドで割安プラン

 KDDIは主力のauとは別のサブブランドで展開している「UQモバイル」で、月額3980円(税抜き、以下同じ)のプランを発表した。データ通信の容量は20ギガバイトで、通話オプションの料金や各種割引が含まれていない。

 auは4Gの現行プランでは、50ギガバイトでデータ使用無制限のプランを月額7650円とする一方、UQでこれまで用意していた容量は10ギガバイトまでだった。この間を埋めるプランということになる。KDDIでは「最も安い500円の通話オプションをつけた場合でも消費税を含めて月額5000円を下回る」と説明している。来年2月以降に導入する方向だ。

 ソフトバンクはサブブランドの「ワイモバイル」で、同じく20ギガバイトで月額4480円となる。1回当たり10分以内の国内通話は無料だ。ソフトバンクの50ギガバイトの大容量プランは月額7480円。「ワイモバイル」の14ギガバイトまでのプランの上と位置付けるサービスで、今年12月に導入を予定している。

 総務省が携帯各社に要求したのは「容量20ギガバイト、税込みで5000円を切るプランに5分の通話無料を含める」という条件だったとされる。菅政権の値下げ要請にKDDIとソフトバンクは、かたちだけ応えた。その一方で主力ブランドの値下げは見送った。

 携帯電話は基地局など大規模な設備投資が先行する装置産業である。4G投資が一巡し5G投資を進めている。大容量プランの値下げで、5Gの投資を継続するのに必要な体力が奪われることを懸念している。官製値下げで投資余力がなくなれば、5G戦略を見直さざるを得なくなる。

NTTドコモ、サブブランドを用意か

 最大手のNTTドコモは値下げの方向は示すが、具体的な対応策は明らかにしていない。親会社のNTTがドコモの株式の公開買い付けを実施している最中なので、株価に影響を与えかねない新料金プランは打ち出しにくいという事情がある。正式な値下げ発表は、TOB期間が終わる11月16日以降になる見通しだ。

 実はドコモは問題を抱えている。すでに20ギガバイトに近い30ギガ(月額7150円)のプランがあり、20ギガで新料金を設定するには、料金体系の全体を見直すことが不可欠なる、とみられているからだ。ドコモは現在、KDDIの「UQモバイル」やソフトバンクの「ワイモバイル」のような格安のサブブランドを持っていない。

「ドコモ本体を月額1000円値下げすると、年間5000億円の収入がふっ飛ぶ。月額2000円の値下げだと赤字に転落する」(ドコモ関係者)

 本体の値下げに踏み切れない事情があるため、格安のサブブランドを新たにつくるしかないという見方がある。ドコモはこれまで格安ブランドに否定的だった。だが、NTTが打ち出したドコモの完全子会社化で変化の兆しが出てきた。ドコモの新社長に就任する井伊基之氏は記者会見で、格安ブランドについて「考慮しなければいけない」と述べている。

 12月1日の井伊社長就任に合わせて、「ドコモは格安のサブブランドを発表するのではないか」(同)ともいわれている。KDDIとソフトバンクはとりあえずサブブランドの新料金を先行して発表し、あとは様子見だ。ドコモの値下げプランを見て、必要とあればさらなる値下げを打ち出してくるのだろう。

「値下げが格安ブランドだけで打ち止めにはならず、主力ブランドを含めた価格競争が本番を迎える」(業界筋)といった厳しい見方もあるが、3社とも本音では主力ブランドと5Gの料金は聖域にしたい。

 5Gの本格普及を見据え、基地局整備にドコモは2019年から5年間に計1兆円、KDDIとソフトバンクは今後10年でそれぞれ2兆円を投じる計画だ。つまり、携帯電話3社は膨大な設備投資を民間で続けることになる。菅政権が主力ブランドの大容量プランで、見せかけではない真水(まみず)の値下げを実現するには「値下げしろ」というムチだけでなく、5Gの設備投資に財政支援をするといったアメも必要だとの指摘もある。アメとムチの難しいカジ取りが菅政権はできるのか。やらなければ、かたちだけの携帯料金の値下げに終わる。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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