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『相棒』元日スペシャルのトリビア集…これを知っていたら、相当な“『相棒』マニア”

文=上杉純也/フリーライター
【完了・元日の放送前までに掲載希望】『相棒』元日スペシャルのトリビア集…これを知っていたら、相当な『相棒』マニアの画像1
「相棒19」公式サイトより

 かつて、お正月の夜を彩る名物的なテレビ番組といえば、『元祖どっきりカメラ』(日本テレビ系)や『新春かくし芸大会』(フジテレビ系)などが長らく親しまれていた。この2番組は昭和~平成と時が移ろいゆくなかで、その役目を終え、惜しまれつつ終了していった。

 そして21世紀以降、お正月番組としての地位を完全に確立しているコンテンツを1つだけ挙げるとしたら、この番組しかないだろう。今や日本を代表する人気刑事ドラマとなった『相棒』(テレビ朝日系)の元日スペシャルである。

 その前に放送されている『芸能人格付けチェックSP』から続けて観ている人も多いのではないだろうか。“元日の夜といえば『相棒』”というのは、番組ファン以外の人でも当たり前のことのような気がする。

 だが、実は『相棒』が元日にスペシャルとして放送されるようになったのは、2005年10月~06年3月にかけて放送された「season4」が最初なのである。途中から本作を見始めたファンにとっては意外に思われるかもしれないが、初期から見ているコアなファンにとっては、お馴染みの感もある“トリビア”だ。逆に「なぜ、最初の1本目からではないのか?」 と疑問に思う方のために、まずこの『相棒』というドラマの成り立ちから説明してみたいと思う。

 かつてテレビ朝日の土曜夜に放送されていた人気の2時間サスペンスドラマ枠『土曜ワイド劇場』。そのなかで『相棒』の主人公である杉下右京役・水谷豊が主演する『探偵事務所』というシリーズものが放送されていた。1994年10月に第1作が発表されてから99年6月まで全5作が制作された人気作だが、『相棒 警視庁ふたりだけの特命係』ノベライズ版の「あとがき」によると、『探偵事務所』は原作もののドラマ化であったために、その小説が残り1本となった時点で、同番組のプロデューサーが水谷主演の新シリーズを立ち上げることになったという。

 さらに、同じ土曜ワイド劇場内でこのプロデューサーが寺脇康文主演のシリーズものも手掛けていた縁で、寺脇が水谷に憧れていることを知ったという。ここで寺脇から水谷との共演希望があったことから、水谷&寺脇のコンビものという企画に決定、こうして寺脇は『相棒』の初代相棒・亀山薫を演じることとなったのである。

『相棒』、国民的人気ドラマになるまでの軌跡

 その記念すべき幕開けは、2000年6月3日の『土曜ワイド劇場』だ。そのサブタイトルは「刑事が警官を殺した? 赤いドレスの女に誘惑され…死体に残る4-3の謎とは?」だった。

“人材の墓場”と呼ばれる窓際部署の「特命係」を舞台に、超人的な推理力と洞察力を持ちながらも、その変人ぶりから集団に馴染めず独りで事件に挑む杉下右京。そしてそんな杉下とひょんなことからコンビを組むこととなった肉体派の熱血漢・亀山薫の活躍を描いたこの刑事ドラマは、難事件の捜査過程における謎解きミステリーとしても秀逸だったこともあり、視聴率はなんと17.7%と高い数字を記録。

 この高評価もあって、01年1月には「パート2」、さらに同年11月には「パート3」が同じ土曜ワイド劇場枠で放送されている。この2本も高視聴率(パート2が22%、パート3が17.4%)を獲得したことで、翌02年10月から1クール、全12話ながら待望の連続ドラマ化が決定した。ちなみに、最初は『相棒・警視庁ふたりだけの特命係』が正式タイトルだった。

 そう、『相棒』の「season1」は10月スタートの1クール放送だったため、元日スペシャル自体がなかったのである。そしてこの「season1」は、全12話で平均視聴率13.1%となかなかの数字を獲得したこともあり、続編の放送が決定。タイトルも『相棒』と簡略化され、放送期間も2クール・半年間に延びた。ただ、03年10月から始まったこの「season2」でもお正月スペシャルはまだ放送されず、年明け最初の放送日は1月7日だった。

 ようやく『相棒』史上初のお正月スペシャルが放送されたのは、この次の「season3」である。ちなみに、今ではすっかりお馴染みとなった「ちゃ~ちゃららっ ちゃっちゃ~ちゃら~」という、あのオープニングテーマは、ここで初登場。以降のseasonでもさまざまなアレンジがなされ、現在まで継承されることとなる。

 ただ、それでも放送日は元日ではなく、放送曜日の水曜日に当たっていた1月5日だった。実は「season3」は初回から14.5%という高視聴率をマークし、7話連続で2ケタ超えをマークするなど、全19話の平均視聴率は13.2%をマーク。そのなかでもっとも高い15.2%を記録したのが、この5日に放送されたスペシャルだった。

 こうした実績が評価されたのか、05年10月からスタートした「season4」にて、ついに曜日に関係なく元日には2時間~2時間半のスペシャルが放送されることになった。しかもこのときの元日スペシャル「汚れある悪戯」は、各局の並みいる元日特番を向こうに回し、堂々の視聴率16.1%を獲得。これによって翌年以降も元日スペシャルの放送が継続されることになったと推測できる。

『芸能人格付けチェック』→『相棒』の鉄壁布陣が完成

 08年からは、この『相棒』の前に前述した『芸能人格付けチェック』が編成され(『芸能人格付けチェック』自体は05年からお正月特番が始まり、2日や3日に放送されていた)、これにより『格付けチェック』→『相棒』という布陣が完成。続けて視聴されるケースが多くなり、さらに元旦特番のイメージが強くなっていったワケだ。

 そしてこの元日スペシャルを定着させるうえで重要なポイントとなったのが、初期のこの勝負作にほかならない。「season5」の元日スペシャル「バベルの塔~史上最悪のカウントダウン!」である。劇場版にも匹敵するのではないかと思えるほど壮大なスケールで物語りが展開された本作は、なんと07年の日本民間放送連盟賞・テレビドラマ番組部門の優秀賞を受賞したほど。現在、衣笠藤治警視庁副総監役で出演している杉本哲太が事件のキーパーソン役で出演しているということもあって、『相棒』ファン必見の1本となっている。熱心な『相棒』ファンのなかでも、“歴代屈指の名作”との呼び声高い名作だ。

 こうして06年から始まり、20年までに15本が制作された『相棒』元日スペシャルだが、お正月を彩る特番とあって、「バベルの塔」以外にも名作、傑作、力作が揃っている。なかでも「season10」の「ピエロ」は、ファン投票『あなたが選ぶ「相棒セレクション」』(13年実施)で、当時すでに200本を超えていた全エピソードのなかから堂々1位に輝いた名作。

 このエピソードでピエロに扮して子供たちを誘拐した犯人・速水智也を演じていたのが、実はブレイク前の斎藤工である。知的でクールで頭のキレる犯人役をスタイリッシュに演じたその姿は、まさに“カッコいい敵役”であった。ちなみにこの回は『崖の上のポニョ』の主題歌で一躍人気子役になった大橋のぞみの芸能界引退前の最後のテレビドラマ長編作でもある。誘拐された子供の1人・島村加奈を健気に演じている。

 斎藤工のように『相棒』の元日スペシャルには、今となっては「えっ! この人がこんな役で出ていたの?」と驚愕させられるような人気俳優・有名女優が、まだ無名だった時代に続々と出演しているのも特徴だ。

 たとえば「season6」の「寝台特急カシオペア殺人事件!」には、現在、サイバーセキュリティ対策本部の特別捜査官・青木年男役でお馴染みの浅利陽介が、寝台列車の乗客の1人・安藤博貴役で出演している。ちょっとグレてしまった不良少年を好演しているが、まさかのちに別の役でレギュラー加入することになるとは、このときは夢にも思わなかった。

 乗客役から、もう1人紹介したい。松永京子演じる人気モデルの友人・折原国子役で、いまやP&Gの『ファブリーズ』のCMでもお馴染み、今やドラマや映画、舞台などで名バイプレイヤーとして欠かせない平岩紙が出演している。まだブレイク前とあって、気づかなかった人も多いのではないだろうか。ただ、少ない出番ながらも存在感は抜群だ。

あの人気俳優たちが無名の頃に出演

「season9」の「聖戦」では、冒頭に爆殺される被害者役で天野浩成が出演している。「その人、誰?」と思う方もいるかもしれないが、女優・雛形あきこの旦那さんといえば、おわかりだろう。最近は夫婦揃ってバラエティ番組に出演して大活躍中だ。ちなみに、このときは雛形と結婚する2年以上前の回である。

「season11」の「アリス」には、朝の連続テレビ小説『あさが来た』(NHK)の主人公・白岡あさ役でブレイクし、今や連ドラの主演女優として活躍中の波瑠が出演している。演じたのは、この回のヒロインである二百郷茜役だった。

 杉下右京と旧知の仲だった二百郷朋子(酒井和歌子)が、ロンドンで息を引き取った。その臨終に立ち会った弁護士から右京に、いまわの際に朋子が発した謎の言葉が伝えられる。それは現在の二百郷家の当主である茜に身の危険が迫っていることを知らせるものであったことから、特命係が捜査に乗り出すという展開となっている。そこから茜の住む旧早蕨村で、昭和30年のクリスマスイブに起きた少女失踪事件が絡んでいくのだが、その失踪した少女で元子爵の令嬢・瑠璃子を演じたのが、広瀬アリスだった。

 当時の彼女は18歳で、まだブレイク前だったが、まさに“深窓の令嬢”という雰囲気を醸し出し、物語に華を添えている。「アリス」というサブタイトルで広瀬アリスを起用したスタッフの遊び心も面白い。ちなみに、この回にはルポライターで実は真犯人だった遠野弘明役に滝藤賢一が扮している点も注目だ。

「season16」の「サクラ」には、こんな人も出演している。20年10月に、ひき逃げなどの疑いで逮捕された伊藤健太郎である。当然、まだ『今日から俺は!!』(日本テレビ系)が大ヒットする前のことで、演じたのはクリスマスイベントの会場で起きた発砲事件に関係しているとみられ、半年以上前から行方がわからなくなっている3人組の高校生のリーダー格・上条喬樹役。この回の最重要人物であった。この放送の約7カ月後の18年6月30日に芸名を伊藤健太郎と改名しているため、放送当時は旧芸名の“健太郎”での出演となっている。

『相棒』史上初の“女性相棒”が登場したのも、元日スペシャルだ。それが「season7」の「ノアの方舟~聖夜の大停電は殺人招待状!」である。渡哲也演じる現職の法務大臣・瀬田宗明の息子がテロ事件に関わっている疑いがあり、その真偽を極秘捜査するため、法務省の官房長補佐官である姉川聖子が右京のもとに派遣されてきた。演じたのは田畑智子だったが、実はこの「season7」の途中で右京の初代相棒だった亀山薫(寺脇康文)が警視庁を退職してしまい、特命係が右京1人だけになってしまっていた。そこに現れたのが、警視庁に出向という形で、今回の一連の事件を右京とともに捜査することになる姉川だった。『相棒』史上、非常に珍しい“女性相棒”が登場した貴重な回となっている。

 最後に、元日スペシャルのなかでもっとも視聴率が高かった回を紹介しておこう。それは「season12」の「ボマー」である。身体中に爆弾が巻き付けられた少年と、成宮寛貴演じる3代目相棒・甲斐享が謎の男から脅迫され、行動を共にすることになるというエピソードは、なんと驚異の19.6%を叩き出したのだ。これに続くのが前述した「season9」の「聖戦」で、これまた19.3%という高い数字をマークした。

 さて、現在放送中の「season19」の元日スペシャルのサブタイトルは「オマエニツミハ」。右京を執拗につけ回すフリージャーナリスト役を岸谷五朗が演じ、そこに十数年前の少年事件と都内の河川敷で起きた撲殺事件が複雑に絡み合う展開となっている。数々の名作・傑作を生み出してきた『相棒』の元日スペシャル。今回はいかなる衝撃が待っているのか。期待大である。

上杉純也/フリーライター

上杉純也/フリーライター

出版社、編集プロダクション勤務を経てフリーのライター兼編集者に。ドラマ、女優、アイドル、映画、バラエティ、野球など主にエンタメ系のジャンルを手掛ける。主な著作に『テレビドラマの仕事人たち』(KKベストセラーズ・共著)、『甲子園あるある(春のセンバツ編)』(オークラ出版)、『甲子園決勝 因縁の名勝負20』(トランスワールドジャパン株式会社)などがある。

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