
年の瀬も迫る12月25日、楽天は自社グループ3社合計で最大148万6291件の個人・企業情報が流出した恐れがあると発表した。発表によると、通販サイト「楽天市場」を運営する楽天、同社子会社でクレジットカード大手の楽天カード、電子マネー事業を手掛ける楽天Edyが対象で、システムの不備の影響で2016年から外部アクセスが可能な状態になっていたという。
今年、楽天では新規参入を行った携帯電話事業を担う楽天モバイルを中心にトラブルが頻発した。一連のトラブルの背景について、楽天グループの複数の下請け業者から「トラブルの発生は楽天グループの社内公用語を英語に設定してから顕著になった」との指摘が出ている。いったい、どういうことなのだろう。
2月には楽天市場の出店者に事実上の送料の負担を強いる「送料無料」を打ち出した結果、作業服大手のワークマンやウォルト・ディズニーなどの大手が撤退。7月には楽天モバイルが必要な技術認証を受けないまま、自社開発スマホ「Rakuten Mini(楽天ミニ)」を販売したとして、総務省から行政指導を受けた。
10月、楽天モバイルのスマートフォンを分割払いで購入した一部のユーザーに対し、一括払いで販売してしまうシステムトラブルも発覚。11月にはやはり楽天モバイルで、同社回線エリア外で回線を提供していたKDDIが順次、楽天スマホの接続を打ち切り、首都圏主要駅などで「圏外」になる事例が相次いだ。
英語公用語化はうまくいっていない?
楽天関係者は「いずれも社内の関係部署、お客様とのコミュニケーション不足や課題・情報共有不足が招いたという認識で、三木谷浩史社長を中心に再発防止に取り組んでいます」と語る。だがこのコミュニケーションに関し、楽天モバイルの下請け事業者のある営業担当社員は次のように指摘する。
「楽天さんが社内公用語を英語にしたことで、無駄な仕事が増えているのが一番の要因だと思いますよ。楽天モバイルのようにスピード感をもって進めなくてはいけない巨大プロジェクトを抱えているのに効率的ではありません。トラブルの原因とは言いませんが、そうした無駄な労力がかかっていることで、社員の体力を奪い、一連のトラブルが発生する土壌になっているのではないでしょうか」
三木谷浩史社長が世界と渡り合うために「社内の公用語を英語にする」と宣言したのは2010年のこと。同グループでは以降、朝の全体ミーティングや幹部会議など社内での基幹コミュニケーションを英語で実施してきた。その姿は日本発のグローバル企業の理想像として、テレビや新聞など大手メディアに好意的に取り上げられてきた。