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病まない会社はこうつくる IT企業のメンタルヘルスマネジメント(1)

メンタル不調が起こる社会的背景とIT業界特有の要因

文=編集部
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『IT技術者が病まない会社をつくる』(言視舎/浅賀桃子)

 急激な社会の変化や過重労働、人間関係など、さまざまな理由からメンタルを病んでしまう人が増え続けている。その中でも、IT技術者は比較的「病みやすい」環境に身を置いているため、メンタルのケアをしっかり行わなければいけない。

 この連載では、カウンセラーでありベリテワークス株式会社代表の浅賀桃子氏が執筆した著書『IT技術者が病まない会社をつくる』(言視舎刊)を通して、IT企業におけるメンタルヘルスマネジメントを紐解いていく。そして、IT業界特有の病んでしまう環境、メンタル不調者が出づらい組織の特徴、どんな組織をつくっていけばいいのか、事例を交えながら「病まない会社」づくりをサポートしていく。

IT業界はメンタル不調になる要因が一際多い

 その第1回のテーマは、メンタル不調が起こる社会的背景とIT業界特有の要因だ。

 厚生労働省の「平成29年労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、過去1年間にメンタル不調によって連続1カ月以上休業した従業員は、全体で0.4%。産業別に見ると、IT業界が含まれる情報通信業が1.2%と、最も高い割合となっている。

 確かにIT業界は「3K(キツい、厳しい、帰れない)」といったイメージを持たれていた。実際、情報通信業において、長時間労働の問題は特に目立っている。厚生労働省が2016年に公開した「過労死等防止対策白書」によれば、正規雇用従業員の月間時間外労働時間が20時間超と回答した企業の割合は、情報通信業で53.7%と、業種全体の平均(25.4%)を大きく上回る結果となった。

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『IT技術者が病まない会社をつくる』(言視舎/浅賀桃子)

 また、この1年間は世界的に流行している新型コロナウイルスの影響によって、社会が大きく変化し、見通しのつかない日々を送ることを余儀なくされている。特に2020年4月に一度目の緊急事態宣言が出され、多くの企業が在宅勤務(リモートワーク)を推奨するようになった。

 もちろん、通勤がなくなることのストレス軽減はあるが、一方で「コロナうつ」といった言葉が登場した。いつ収束するかわからない不安や、オンオフの切り替えができなくなったこと、外出自粛のストレスがきっかけとなって、心のエネルギーが低下していくというものだ。

 しかも、この変化は「急に」起きたものであり、適応できないまま新しい生活様式を実践せざるを得なくなったという人も多いだろう。そうした背景が、心を病んでしまうことにつながるのだ。

「多重下請け構造」「客先常駐」…IT業界で働く人たちのメンタルを追い込む構造

 IT業界で働く人たちのメンタルを蝕む業界特有の要因は他にもある。浅賀氏は、その業界構造に問題があることを指摘する。

 IT業界の中でも、多くの会社数を占めている「受託開発ソフトウェア業」。ここには独特の業界構造があるというのだ。その一つが「多重下請け構造」である。

 受託開発においては「下請け構造」が用いられる。これは依頼主(顧客企業・官公庁)から元請け、二次受け(1次下請け)、三次受け(2次下請け)と仕事が下っていく構造だ。元請け企業は顧客と直接やりとりをするため、要件定義やシステム設計・見積もりといった上流工程を担当することが多い。一方、下請け企業は開発をはじめとする下流工程を担当する。

 この下流工程での開発の過程において、意図せぬトラブル発生や仕様変更などが生じると、最初に見積もったスケジュールでは納品が間に合わないことが起こる。しかし、納期を後ろにずらすこともできないため、結果的に下請け企業が長時間労働をして対応するということになるのだ。

 また、「客先常駐」も問題だ。下請け企業の多くは、自社内ではなく毎日客先に出勤し、客先で働いてから自宅に戻るという生活を送る。

 1つの顧客案件に対して複数の企業がコミットしていることは珍しくなく、自社から送り込まれる社員は自分ひとりという例もある。仕事の相談がしづらく、結果的に抱え込んでしまう。また、下請けの企業だからと、扱いが悪くなることもあるという。浅賀氏いわく、相談に乗ってきたIT業界の社員の悩みに「客先常駐がつらい」というものが相当数あるそうだ。

 他にも、技術革新の速さに戸惑いを覚え、「今までの常識が数年で通用しなくなる。このままついていけるか不安になった」「新しい技術がどんどん出てくるので、自分たちがこれまで学んだ技術が必要じゃなくなるかもしれない」という声も聞かれるという。

 IT業界には、こうした業界特有のさまざまな要因が存在しているのだ。

 では、病みやすい組織・人とは、いったいどういう特徴があるのか。次回はその部分に切り込んでいく。

(文=編集部)

※本記事はPR記事です。

BusinessJournal編集部

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