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埼玉県行田市の有名ゲームセンターに聞く「コロナ禍のゲーセン経営」【後編】

風営法とオンラインクレーンゲームのウラ側…埼玉の“世界一のゲーセン店”が業界の真実

文=編集部
【確認中】「ギネス申請は高いから諦めた」“世界一”のクレーンゲーム店が語った「ゲーセンの裏側」の画像1
有名ゲームセンター「エブリデイ 行田店」(埼玉県行田市)は「クレーンゲーム設置台数世界一」ギネス認定店。

 コロナ禍で苦境が続くアミューズメント業界。2020年11月にはなんと、ゲーム業界大手セガサミーホールディングスが、ゲームセンター運営事業を売却、ゲームセンター事業からの事実上の撤退を行うなど、暗い話題が続いている。

【前編】ではそうしたアミューズメント業界の現状について、埼玉県行田市の有名ゲームセンター「エブリデイ 行田店」店長である五十嵐直也氏と運営会社である株式会社東洋の広報部統括マネージャーである緑川裕一氏に話を聞いた。

 続く【後編】では、最近注目を集めつつあるオンラインクレーンゲームと実店舗のクレーンゲームとの違いや、クレーンゲームにおける「取りやすさ」などのゲーム性について、同じく両氏に話を聞いていく。

 PCやスマホなどから遠隔操作でクレーンゲームを楽しみ、獲得に成功した場合は郵送で景品が送られてくる「オンラインクレーンゲーム」は、セガやタイトーなどのゲーム業界大手企業が、近年相次いで参入。さらにコロナ禍の巣ごもり需要にもマッチしたのか、2021年4月からは、総合アミューズメント施設を運営するラウンドワンも参入を発表するなど、ここにきて大きな盛り上がりを見せている。

 一方で2020年11月には、サイバーステップが運営する業界最大手のトレバが、景品獲得阻止のために従業員が裏操作をしていたという疑惑が報道されるなど、問題も少なくない状況だ。

 現時点では実店舗でのクレーンゲームがメインのエブリデイでは、こうしたオンラインクレーンゲームについてどう考えているのだろうか?(取材は2021年1月下旬)

【前編】はこちら

風営法の規制によって、高額な景品を置くことはNGなクレーンゲームの世界

――【前編】では五十嵐さんから、御社のオンラインクレーンゲーム参入の可能性もあるとの意向もお聞きしました。実際、現在多くのアミューズメント企業が参入しているこのサービスは、コロナ禍の需要にマッチしているようにも思えますが、そのあたりをどうお考えでしょうか?

五十嵐氏:ゲームセンターで遊ぶリアルなクレーンゲームとオンラインクレーンゲームとでは、ほぼ別物だと私は考えています。一緒にされてしまうと、ちょっと違和感がありますね。オンラインクレーンゲームは、景品がプレイステーション5であったりだとか、非常に豪華であることも多い。

――となると、1回あたりの料金も高額となってくるのでしょうか?

五十嵐氏:はい、1回1万円なんていうものも。なので、少々ギャンブル的な側面があるのかなとも思いますね。またゲームセンターは風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)によって24時までしか営業できませんが、オンラインだと24時間営業が可能ですよね。この違いも大きい。

――では、実店舗でもそういった高額クレーンゲームを設置して、景品も豪華にする……というやり方をするのはどうなのでしょう。【前編】で出た客1人あたりのインカムも、そうすれば上がるのでは……と考えてしまうのですが。例えば大型ショッピングモールなどには、1回1000円以上するような高額のガチャガチャが置いてあったりしますよね?

五十嵐氏:それは不可能なんです。ゲームセンターの営業について風営法の23条2項において、「遊技の結果に応じて賞品を提供してはならない」という一文があります。要は賭けごと的なことは許されていない。射幸心をあおるギャンブル的な要素があってはだめなんです。ただしクレーンゲームに関しては、物品がおおむね800円以下のものを提供する場合はこれには当たらない……という、“お目こぼし”的な形での運用がなされているにすぎないんです。

――なるほど、風営法の規制で、高額の景品を置くことはそもそもできないわけですね。

五十嵐氏:はい。先ほど例に挙がったガチャガチャというのは「自動販売機」の扱いになり、法的にはクレーンゲームとは別ものなんですね。で、オンラインクレーンゲームも風営法に縛られないので、高額の景品を置くことが可能となるわけです。それからスーパーやショッピングモールなどに併設されているゲームコーナーなども、風営法は適用されない形となっています。

――そうなると、高額景品や24時間営業という利点がある上、巣ごもり需要にもマッチするオンラインクレーンゲームのほうが今の時代には合っているようにも思われますね。実店舗で行うクレーンゲームだからこその強みはなんだとお考えでしょうか?

五十嵐氏:やはり、その場での体験、達成感ではないでしょうか。オンラインの場合、ビデオゲームとの差があまりないと思うんですよ。あくまでも画面越しの操作となりますし、使用するお金も電子マネーであることが多いですから。その点、実際にお金を投入し、品物もその場で手に取れるリアルなクレーンゲームは、やはり得られるワクワク感がまったく違うのではないかと。

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巣ごもり需要で大きな盛り上がりを見せている「オンラインクレーンゲーム」だが、やはり実店舗で行うクレーンゲームの醍醐味といえば、実際に景品を手にしたときの達成感、ワクワク感だろう。
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店内に掲示された「クレーンゲームアドバイザー」のスタッフの皆さん。より多くの景品を取れるようアドバイスしてくれるそうだ。

アームのパワーや景品を置く位置で、クレーンゲームの難易度を調整

――オンラインクレーンゲームでは、従業員による不正操作が報じられたトレバが問題化しています。こうした問題についてはどのようにお考えでしょうか?

五十嵐氏:報道内容が正しいとすれば、やはり途中で設定を変えたりすることは明らかにだめですよね。クレーンゲームをやり慣れたお客様は、店側が設定している「景品の取りやすさ」を見極めることも含めて楽しんでおられますよね。その設定がゲーム途中で不正に変えられている……となると、これはもう信用を毀損する行為なのは明らか。その点、その種の信頼性がきちんと担保されているという意味では、実店舗に利がありますよね。お客様が景品をゲットしそうになったら突然店員が寄ってきて台の設定をガチャガチャいじり始めたら、怪しいのは明々白々ですからね(笑)。

――クレーンゲーム好きとしてお聞きしたいのですが(笑)、ゲームセンターにいると、客のいないクレーンゲームの扉を開けて、従業員さんが何やら操作したり景品の置かれた場所を変えたりしていますよね。あれって実際のところ、何をいじっておられるんですか? クレーンが景品をつかむ際のアームのパワーが設定で変えられる……というのは、まあ比較的知られているとは思いますが。

五十嵐氏:それはもうケースバイケースというか、景品の重さとか形状とかによってさまざまですね。

緑川氏:現在もっとも普及しているクレーンゲームの筐体は、セガさんが発売しておられる「UFO CATCHER 7」という台なんですが、これは商品の取り出し口の位置が固定されています。最近の台だと取り出し口をどこにでも変えられる台などもありますが、そうした台に比べると、取り出し口の場所が固定されているものは、景品を置く位置によって難易度が大きく変わってきますから、その微妙な位置をうまく変えたり……ということはやっています。あと、アームは横方向に開閉するものが多いですから、景品を縦(前)に運んでこなければ獲得できないような配置にすると、当然お客様は景品を取りにくくなりますしね。

都市部のクレーンゲームは難しく、郊外のクレーンゲームが簡単なワケとは?

――クレーンゲームの筐体については、種類によってそもそもの難易度も異なるのでしょうか?

五十嵐氏:いえ、筐体によってクレーンのアームが大きかったり押し込む力が強かったり、あるいはスピードが速いとか遅いとか、それぞれの特性やクセというのはあると思いますが、難易度そのものにはあまり差がないと思いますね。そうした筐体ごとのクセと、景品の形状や重さ、取り出し口との位置関係などを把握して難易度の設定を行うことこそ、まさに店のオペレーターの腕の見せどころなわけです。

緑川氏:それに対してお客さんのスキルというものがもう一方にあるわけです。YouTubeでもクレーンゲームのコツを解説する動画がたくさん上がっていますが、ただストレートに商品の真ん中をアームで狙うだけではなく、横に寄せるとか、アームの片方だけを景品にぶつけるだとか、景品を取るためにはさまざまなスキルを駆使しなければいけませんから。

――そうすると、クレーンゲームの腕自慢が集う地域とそうではない地域とでは、店側が設定している難易度にも違いがあるのでしょうか?

五十嵐氏:都市部には知識やスキルが豊富なお客様が多いでしょうし、そもそも入居している物件の家賃も高いから、店舗側の利益を考えるとある程度難易度を上げなければやっていけない……という事情もあるでしょう。そういう都市部のエリアで鍛えられたお客様が、そうではない郊外店などでクレーンゲームをプレイすると、非常に難易度が低い、つまり景品を比較的容易にゲットできてしまう……ということはあるかもしれませんね。

――そうした地域差以外で、店側が設定する難易度の差は、どのような要素によって左右されるのでしょうか?

五十嵐氏:大きいのはやはり、景品の価格帯やニーズ、それからターゲットの違いでしょうね。景品にも100円相当のものから800円相当のものまで幅がありますし、誰に向けた商品なのかという問題もあります。例えば大人のコレクター向けの景品と、子どもやファミリー向けの景品を比べた時、後者を取りにくい設定にするというのは、ニーズに合致していませんよね。また、うちは基本的に何度も店舗に足を運んでくださるようなファミリー層がメインターゲットですから、あまり難しくしてお客様の支払い単価を上げても、結局客数が減って売り上げが下がってしまう……という結果を招きます。一方で都市部の店舗は知識のあるお客さんが多いのに加えて、外国人観光客などの一見さんも多いでしょうから、ある程度は設定を厳しくすることも可能ではないかと考えています。

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もちろんクレーンゲーム以外のゲームも充実。幅広い年齢層に楽しんでもらえる。

東京五輪でのインバウンドを見込んで外国語対応を充実させたものの、コロナ禍が到来

――外国人観光客といえば、エブリデイさんの公式ホームページは中国語にも対応しています。これはインバウンド客を意識してのものなのでしょうか?

緑川氏:もともと、2014年頃に「ギネス記録の店」としてテレビで取り上げていただいたをきっかけに、県外など遠方からのお客様にもお越しいただけるようになりまして。

五十嵐氏:その頃には、外国人観光客も多かったですね。ところが英語や中国語を話すことができるスタッフがいなかったので、その頃はポケトークやタブレットPCのアプリを使うなどして対応していました。

緑川氏:そうした経緯もあってオープンしたのが、2019年にできた「エブリデイとってき屋 東京本店」(埼玉県八潮市)なんです。その頃はまだコロナのコの字もなかったですし、翌2020年に開催予定の東京オリンピックでのインバウンドを狙った店舗でした。だから中国人留学生を採用して、中国語への対応や海外への広報を開始したわけです。結局新型コロナの影響で、その目論見は外れてしまったわけですが……。

ギネス申請には180万円ものお金がかかる、であれば「世界一」よりもお客様へ還元したい

――そもそも、ギネスに申請しようなんていう話は、どこから出てきたものなのでしょうか?

五十嵐氏:実は弊社は、以前は埼玉県内で3店舗、小規模のゲームセンターを運営していたんです。それが経営などの問題で一度それらの店舗をたたんで大きな店舗を作ることになり、「エブリデイ 行田店」がオープンした……という経緯があります。でも、設置しているゲームの台数は多くても、かなりの田舎にあるゲームセンターである以上、やはり話題性がほしいところ。そこで弊社代表がギネス認定を思いついた……というわけなんです。調べたところ、うちより台数が多いところはなかった。それでギネス申請し、無事認定されたというわけです。

緑川氏:ところが2020年8月に、タイトーステーションの府中くるる店さん(東京都府中市)が、新たにギネス記録となる台数を申請されまして、認定されたんです。さらに今年の1月7日には、セガ新宿歌舞伎町店さん(東京都新宿区)が、さらにそれを上回る台数でギネス申請し、認定されまして……。なので、実は現在「エブリデイ 行田店」は、“世界一”ではないんですよ。

――エブリデイさんを上回る他店舗が出現していたとは!

緑川氏:ただ、埼玉県八潮市の「エブリデイとってき屋東京本店」は、実はそのセガ新宿歌舞伎町店さんよりもさらにクレーンゲームの台数が多いんですよ! ただ、まだギネスには申請していなくて……。

――それは何か理由が?

緑川氏:実はギネスの認定には、結構お金がかかるんです。認定員さんがイギリスから来るための旅費の負担などもありまして……。「エブリデイ 行田店」で認定を受けた時には70万円程度かかったのですが、現在では180万円と倍以上になっています。「世界一」の記録を取り返すためだけにそんな出費をするくらいなら、その分お客さんへの払い出しに還元したほうがいいかな……と弊社としては判断したわけです。

――記録よりもお客の満足度を選んだわけですね、すばらしい! では最後に、エブリデイさんに興味を持たれた読者に向けて、何かメッセージがあればお願いします。

五十嵐氏:「エブリデイ 行田店」では引き続き、お客様に安心してご遊戯していただけるよう全力を尽くすつもりです。当店には「クレーンゲームアドバイザー」というスタッフがおりまして、お客様がより多くの景品を取れるようアドバイスすることも可能です。実店舗ならではの、この「取れる楽しさ」を味わいにきてくださいませ!

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 コロナ禍以前より、スマホゲームなどの隆盛によってゲームセンターが苦境に立たされているという報道が多くなされてきた。しかし、「リアルな体験の共有」という点においては、まだまだ実店舗ゲームセンターにこそ一日の長があるのではなかろうか。

【前編】はこちら

【確認中】「ギネス申請は高いから諦めた」“世界一”のクレーンゲーム店が語った「ゲーセンの裏側」の画像7
今回取材を受けていただいた「エブリデイ 行田店」。小さいお子様から大人の方までどなたでも楽しめます! 住所:埼玉県行田市下忍644-1 営業時間:平日12:00~24:00、土曜日10:00~24:00、日曜日10:00~23:00 電話: 048-598-8649

(文=編集部)

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