
面子を潰されて怒る防衛大臣
5月17日、菅義偉首相の肝いりで始まった、自衛隊による新型コロナウイルスワクチンの「大規模接種」オペレーションの予約。これをめぐり同日、実在しない接種券番号でも予約ができてしまうことを実際に確かめつつ報じた朝日新聞出版と毎日新聞に対し、岸信夫防衛相は前掲のツイートで猛批判した後、防衛省として両社に対し、書面で抗議した。でたらめな番号でも予約できることを実際に確かめる「裏取り」作業をしたことを具体的に報じたことが、とにかく気に食わなかったようだ。
岸防衛相のツイートに連なる世間の反響(引用ツイート)の中には、防衛相の実兄である安倍晋三前首相の、
といったものもあり、輪をかけて賑やかになって今では“お祭り騒ぎ”の様相を呈している。実在しない接種券番号でも予約できることを、裏取りしながら報じた記事には日経クロステックのものもあるのだが、引用ツイートの中には、「日経には抗議しないの?」と防衛相に尋ねているものもある。
ただ、引用ツイートのコメントに目を通していくと、防衛相を支持するものと、朝日や毎日の記事を支持するものが半々といった情勢。ネット民の大勢は今のところ、どちらか一方に与しているわけではなさそうだ。朝日の記事(AERAドット)には、
「予約が始まった直後、『ワクチン予約に大変な欠陥が見つかった。システムのセキュリティが機能していない』(防衛省関係者)という情報が飛び込んできた」
とある。事実であれば、取材の端緒は内部告発だったことになる。朝日だけでなく毎日や日経も、予約が始まった5月17日のうちに当該記事を配信しており、この内部告発者(一人なのか複数なのかは不明だが)は、サイトの不備が原因で「大規模接種」が大規模な混乱に陥ることを危惧し、複数のメディアに対し、そうなる前にリークしたことになる。「実在しない接種券番号でも予約できる」と伝えたのは、システムに素人の記者でもすぐ理解できるように、特にわかりやすい問題点を選んで知らせた可能性が高く、予約システムにはそれ以外にも重大な欠陥が潜んでいる恐れがあるかも、と筆者は睨んでいた。