旭川医科大への不法侵入で記者逮捕、違法性は阻却される?北海道新聞が調査報告を発表の画像1
「Getty Images」より

 北海道新聞社は、6月に同社の記者が北海道旭川市の旭川医科大学で行われた学長選考会議の取材中に、立ち入りが禁止されていた大学の建物に入った疑いで逮捕された件について、7日朝刊で調査報告を掲載した。

 報告によると6月22日、旭川医科大で吉田晃敏学長の解任をめぐる学長選考会議には同社の記者4人が取材に当たったという。このうち、入社1年目の記者が指示を受け、会合が開かれていた建物の4階に向かった。大学側から入構禁止が発表されていたが、この記者には伝わっていなかった。

 新人記者は会議のあった部屋のドアの隙間に自分の判断でスマートフォンを差し入れて会議内容を録音。これを大学職員が発見して現行犯逮捕された。

 北海道新聞社は、新人記者を単独で校舎内に立ち入らせたことや、倫理上、無断録音は原則禁止するとした指針が徹底されていなかったことなどが問題だったと発表。小林亨編集局長は「事態を重く受け止めている。記者教育や組織運営の在り方などを早急に見直す」としつつ、そのうえで「事件にひるむことなく、国民の知る権利に尽くす」と発表。

 この事件については多くの新聞記者から、新人記者が逮捕されたことへの違和感を綴る声が続出している。特に、メディアで働く女性ネットワーク(WiMN)は、「旭川医大で取材中の女性記者逮捕・身柄拘束に関する抗議声明」を発表。「報道機関による取材・報道の自由に抵触し、取材活動に委縮効果をもたらしかねない重大な問題をはらんでいる」と批判している。

 私人逮捕した職員は、新人記者に身分や目的などを尋ねたものの明確な返事はなく、さらに逃げようとしたため、学外者が許可を得ずに無断で構内に侵入したと判断し、警察に連絡したとしている。一方WiMNは、記者が警察に対して記者であることと取材目的を明らかにしており、逃亡や身元不明の恐れがないため、逮捕・身柄拘束は行き過ぎた措置だと批判している。

 さらにWiMNは、「国立大学法人である旭川医大は国民の税金で維持されており、その庁舎は国民の財産」であるとして、研究・教育活動の妨害や器物損壊の恐れがあるといった特段の理由がないかぎり、「取材記者の通行も当然認められるべき」との見解を示している。ほかにも複数の新聞記者が、取材活動では住居侵入の違法性が阻却されるといったツイートを行っている。今回の騒動に関し、山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士は、次のように解説する。

「建物や囲いがされた土地など、所有者や管理者が『立ち入り禁止』としている場所に許可なく立ち入れば、住居侵入罪が成立します。今回も、立入り禁止の区画にいたとのことなので、間違いなく住居侵入罪が成立します。

 これに対し、『取材活動の場合、違法性が阻却される』という考えもあるようですが、『正当な業務としての取材活動』であれば、刑法35条の規定により違法性がないとも考えられます。しかし、『許可を得ずに忍び込み、許可を得ずに録音する』取材活動は、到底『正当な業務』とはいえないので、違法性は阻却されません」

【刑法35条】

「法令又は正当な業務による行為は、罰しない」

 逮捕された北海道新聞の記者は48時間、身柄を拘束されたのちに釈放されたが、警察は在宅で捜査を続けている。ジャーナリストや新聞記者たちは、今後の取材活動への影響が出るおそれがあるとして、捜査の行方に高い関心を示している。

(文=編集部)

出前館、3年分の利用代金を一括請求?システムエラーで未決済、時効消滅分まで請求かの画像2山岸純/山岸純法律事務所・弁護士

時事ネタや芸能ニュースを、法律という観点からわかりやすく解説することを目指し、日々研鑽を重ね、各種メディアで活躍している。芸能などのニュースに関して、テレビやラジオなど各種メディアに多数出演。また、企業向け労務問題、民泊ビジネス、PTA関連問題など、注目度の高いセミナーにて講師を務める。労務関連の書籍では、寄せられる質問に対する回答・解説を定期的に行っている。現在、神谷町にオフィスを構え、企業法務、交通事故問題、離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験をさまざまな方面で活かしている。

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