6月28日に千葉県八街市の市道で起きた、大型貨物トラックが下校中の同市立朝陽小学校の児童の列に突っ込んだ事故。男児2人が死亡、女児1人が意識不明の重体、2人が重傷を負うなど計5人の死傷者を生んだこの事故では、運転手の梅沢洋容疑者が飲酒運転をしていたことがわかっており、すでに千葉県警は梅沢容疑者を危険運転致死傷容疑で千葉地検に送検している。
痛ましい事故の状況をテレビ各局のニュース番組が報じるなか、6月30日に放送された『news every.』(日本テレビ系)の取材手法に疑問の声があがっている。『every』内では記者が、亡くなった2人の男児の友達にインタビューを行っているのだが、その内容は以下のとおり。
【放送内容再現】
(ナレーション「亡くなった小学2年生の川染凱仁くん、7歳。いつも元気で明るい男の子だったといいます」)
凱仁くんの友達「鬼ごっこで遊んで、それで仲良くなった。明るくて元気で、すごく楽しそうにしてた様子でした」
(ナレーション「凱仁くんが亡くなったことは、昨日の夕方に知ったといいます」)
記者「凱仁くんじゃないといいなって、思ってたんだよね?」
凱仁くんの友達「はい」
記者「どうだった? 最初それ聞いたときは?」
凱仁くんの友達「ショックで悲しかった。天国で元気で過ごしてほしいです」
(ナレーション「凱仁くんと同じクラスだった女の子。思い出を話してくれました」)
記者「誰とお友達だったんですか?」
女児「凱仁さんです」
記者「凱仁くんと、どんなことして遊びました?」
女児「折り紙」
(ナレーション「小学3年生の谷井勇斗くん8歳は、体育が得意で、誰とでも仲良くできる男の子だったといいます」)
同じクラスだった女児「勇斗くんも人気なの。いろいろと友達とか、楽しく遊んでた。なんか悲しいって」
――再現ここまで――
インタビューを受けた3人の児童の表情や声からは、動揺を隠しきれない様子が伝わってくるだけに、『every』内での記者の質問内容や、児童たちにインタビューを敢行したことに対して、ネット上で次のように疑問の声があがっている。
<悲しい事件や事故で 年端も行かない子供にインタビューする感覚がわからん>(原文ママ、以下同)
<傷口えぐって…>
<その歳の子によくそんな質問出来るよ>
<マスコミの連中はこれのどこが悪いのか分かってるんでしょうかね>
<仕事とは言え言葉選べよ>
当事者のリアクションだけを取るための取材
今回の『every.』の取材手法の問題点について、上智大学文学部新聞学科教授で元日本テレビ『NNNドキュメント』ディレクターの水島宏明氏はいう。
「取材の様子を映像で見る限り、災害の被災者や犯罪被害者などに報道機関が集中する“メディアスクラム”が起きていることがわかる。また、児童に質問している人間が、必ずしも当該のメディアの記者とは限らない。
『news every.』の報道を見る限り、女性の取材者が子どもを誘導するかのように質問している。これは以前、ワイドショーのレポーター取材で頻発した『今のお気持ちを聞かせてください』というような典型的な『当事者のリアクションだけを取材する』インタビュー手法で、現在、テレビ報道では根絶されたと考えていた。
が、また今回のような取材手法がメディアスクラムのなかで起きてしまったことは、かなり深刻だ。しかも放送されたのはワイドショーではなく、ニュース番組である。質問をしたり、あるいは編集した人間は記者である可能性が高い。ということは、夕方のニュースが情報ワイド化するなかで、報道番組の『劣化』が実は深刻な形で進んでいたということができる。ワイドショーのレポーターのような『反応を取る』ためだけの質問を記者がしてしまっているのだとしたら、各局の報道の幹部は記者教育のあり方を考え直す必要があると思う」
メディア全体の報道姿勢が、改めて問われているといえよう。