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野村直之「AIなんか怖くない!」

水田の病害虫チェック、人間なら14万人必要→AI活用なら「年2万円」で実現?

文=野村直之/AI開発・研究者、メタデータ株式会社社長、東京大学大学院医学系研究科研究員
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「Getty Images」より

 以前の記事『5万円でできるのに1千万円も費用投下?“過渡期のAI”導入がDXを遅らせる!』、そして『真のDX推進を実現する正しいAI導入のコツ…人間は人間にしかできない仕事をして利益を最大化』では、旧来の非効率なワークフロー、特に紙や黒板・白板に書かれた文字をテキスト化するようなAIが、本格的なDXを阻害しがちだ、と書きました。本格的なDX、言い換えれば、業務や取引のフルデジタル化とは、劇的に生産性、正確さを向上させ、ひいては数十倍速水準のスピードの向上や省力化を達成するものです。

 一方、「では正しいAI導入とは?」といわれたときに、「従来人間にできなかったことをAIにやらせる」というひとつの勝ちパターンがあることを具体例で示しました。人間には物理的に無理な稼働中のガス管や水道管に入り込んで管の内壁を検査する仕事とか、あるA4用紙1枚の文章と似ている記述を100万件の文章から漏れなく見つけ出す(その裏返しに不存在の証明=悪魔の証明も可能)とかです。

 今回は、人海戦術で莫大な時間、コストをかければできなくはなかったが、従来は【経済的に事実上不可能】だったのを、AIや周辺の自動化ツール群が可能にする事例を取り上げます。

従来は不可能だった水田の稲の予防的大規模検査

 前回、自動化の先にある課題として「人間は人間にしかできない仕事を」しましょう!と提唱。「AIには機械、道具(=AI)にしかできない高速・大容量の作業をさせよ!」の裏返しです。特に、「なぜ?」を5重、6重に問うて、因果関係を深堀りするなど、AIには不可能な課題を、拙著『AIに勝つ!』を引いて紹介しました。この『AIに勝つ!』の「第6章 新たに生まれる仕事群を楽しむ」には、AI導入以前には【経済的に事実上不可能】だった、おもしろい事例を詳述しています。少し長いですが、その全体を引用します。

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AI利用の意義を水田農家の病害虫チェックの例で考える

 最近の講演で、数字を使って好んでプレゼンしているのが、水田の葉の病害虫を毎日チェックする、という仕事です。10ヘクタールの水田の稲の葉のほぼ全部を、何百種類もの病害虫にかかっていないか毎日チェックするのにどのくらい時間がかかるでしょうか。株式会社アスクの「たわら蔵」という米作りを解説したホームページに、計算に必要な数字がありました。一部引用します:

(ホーム>お米の話>お米を作る>葉・茎・根の成長

「こうして苗として植えられた一本の稲は数十本もの茎に増える。しかし、田植では一株として5〜6本の苗を植えるし、株数も平方メートル当たり20株程度ですから、多くの分げつの芽は退化します。一本から7〜8本の分げつが出るだけで、ふつう一株では30〜35本くらいの茎に増

えます。

……中略…

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