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840万人が悩む頭痛、どう付き合う?9割が日常生活に支障、緊急症状の見分け方

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
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周囲は気づきにくいが、頭痛に悩む人は多い(Shutterstock.com/写真はイメージ)

 同僚や取引先と仕事を進めていて、相手が「突然の病欠」をした経験は多くの社会人が持っているだろう。もちろん、自分自身が体調を崩すこともあるので、お互いさまだが……。

 そうした体調不良として、最近クローズアップされるのが頭痛、特に片頭痛だ。周囲からは「その程度なら」と思われがちだが、本人は深刻だ。実は見逃せない問題を抱えていることもあり、ビジネス記事で紹介する例も増えてきている。先日、「片頭痛」をテーマにしたオンライン発表会があり、筆者も出席した。

 片頭痛とは、一般的に頭の片側(両側の場合もある)に起き、ズキンズキンと痛み、吐き気がしたり、光や音に敏感になったりする疾患だ。今回は発表会の内容を紹介しつつ、併せて過去に行った取材内容も紹介。前半は片頭痛、後半はほかの頭痛の構成で、ビジネスパーソンを悩ます「頭痛との向き合い方」を考えたい。

症状を把握・記録することでコントロール

 10月16日に、「片頭痛コントロールカレッジ」というオンラインイベントが開催された。同イベントでは、まず医師が「片頭痛の症状とコントロール方法」を説明し、症状をコントロールする「頭痛ダイアリー」も紹介。さらに、片頭痛持ちのインフルエンサーが医師とやりとりする「パネルディスカッション」も行った。

 当日、登壇したのは、頭痛専門医の平田幸一氏(獨協医科大学副学長)、坂井文彦氏(埼玉神経センター 埼玉国際頭痛センター長)、松森保彦氏(仙台頭痛脳神経クリニック院長)の3人。インフルエンサーは、岩間恵氏(@iwamame)、くぅちゃん氏(@megum.nakan)をはじめとする16人だった。それぞれの症状を説明しながら活発な意見交換がされた。

 イベントの主催は、一般社団法人・日本頭痛学会、JPAC(頭痛医療を促進する患者と医療従事者の会)、製薬メーカーのアムジェン株式会社の3団体だ。それぞれの取り組みは公式サイトなどに記されているので、ここでは片頭痛コントロールの概要を簡単に紹介したい。

 まずは片頭痛の症状を知る。そのためのツールが「頭痛ダイアリー」で、記録することで頭痛の傾向の把握や、かかりつけ医など医師との症状・治療効果の共有がスムーズに行えるという。それほど重くない場合、多くの人は「また頭痛が起きた」と放置しがちだ。症状や状況を記録することで、片頭痛を「見える化」させるのだ。

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オンライン上で活発な意見交換も行われた

25~55歳が多く、約840万人が悩む

 片頭痛について、データ面でも紹介しよう。

  • 片頭痛は慢性頭痛の一種で、日本人の約840万人が悩むといわれる
  • 働き盛りの25~55歳の年齢で発症することが多い
  • 特に30~40代の女性に多く、女性は男性の3倍以上の割合で発症するといわれる
  • 患者の約5人に1人は、片頭痛の症状のために仕事を休んだ経験を持つ
  • 患者の約9割が、活動が妨げられ日常生活に支障があると感じている
  • 片頭痛による欠勤がもたらす経済損失は年間2980億円と試算された

 過度に煽るつもりはないが、わかりやすく伝えるためポイントを下線で示してみた。

 筆者の仕事仲間の男性(30代の会社役員)は、「私も頭痛持ちで、そこまでひどくはないけれど楽でもありません。仕事や日常生活に影響するので、できれば解消したいといつも思います」と明かす。別の女性(20代の会社員)は、普段は元気印だが、体調不良で欠席することも多い。周囲の人に目立つと、今は健康でも他人事では済まされないだろう。

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「片頭痛が日常生活におよぼす影響」では日常生活に支障をきたすが合わせて74%にも

頭痛の自覚症状は「緊急度」も大切

 片頭痛に限らず、具体的な頭痛の対処については医療機関を受診していただきたいが、ここでは以前、頭痛について取材した内容を「症状の目安」として紹介したい。

 都内でクリニックを運営する脳神経外科医は、頭痛の症状を「まずは緊急度で判断する」と話した。どういう意味か。

「たとえば『2週間前からずっと頭が痛いのです』と訴える患者さんは、緊急度が低いと判断します。2週間は日常生活ができたからです。逆に深刻なのが、急性で程度が重い頭痛。これは身体のどの部位でもいえますが、『突然、激痛が走った』場合は要注意です。

 頭痛の場合、もし脳出血を発症していたら死亡する可能性も高まるので、対応は一刻を争います。自宅でこうした症状が起きた場合は、迷わず救急車を呼びましょう」

 取材なのでわかりやすく説明してくれたが、頭痛は「急性の頭痛」(二次性頭痛)と「慢性の頭痛」(一次性頭痛)に分けられる。急性の頭痛は生命にかかわる危険が高いのだ。一般的な片頭痛は慢性の頭痛だが、実は「肩こりや首こりから来る頭痛も多い」(同)という。

「その理由は、姿勢の悪さと運動不足が大半です。大人の頭の重さは約5kgもあり、姿勢の悪さで身体のバランスが乱れると、頭全体が重苦しくなったりします。前かがみでパソコン作業を続けたり、無理な姿勢でスマホ画面を長時間見続けるのもよくありません」(同)

 こうした日常生活の乱れも、可能性としては大きい。

生活習慣を見直し、ストレスを減らす

 では一体、頭痛に対して、どんな予防をすればよいのだろうか。多くの専門家が指摘するのが「日常生活の質を高め、生活習慣を改善する」ことだ。

 たとえば、片頭痛の原因としては、「睡眠不足、疲れ、過度なアルコール摂取」などが挙げられる。仕事に追われる時期もあるだろうが、まずはそれをできるだけ避けること。

 原因対策と予防を尊重しつつだが、長年取材をしてきて「365日、生真面目に生活をすることを勧めない専門家」も増えたと感じる。たとえば、気が抜けない仕事からようやく解放されて「今日ばかりはビールやワインをぐいぐい飲みたい」人もいるだろう。そうした日があっても、翌日以降から切り替える。慢性的にしないことが大切なようだ。

 頭痛には、精神的なストレスによる「緊張型頭痛」もある。その一方、心身のストレスから解放された時に起きる「片頭痛」もあるという。ストレスと無縁な人はいないので難しい問題だが、時には「この仕事が失敗してもすべてを失うわけではない」といった気持ちも大切なようだ。

がんと血管の病気予防でリスクを軽減する

 頭痛と片頭痛を見てきたが、人生100年時代の健康寿命として次の話を紹介したい。

 最近の日本人の主な死因は、(1)がん、(2)心臓の病気、(3)老衰、(4)脳の病気、(5)肺炎の順となっている(2019年、厚生労働省の発表※)。
※発表では、がん=悪性新生物、心臓の病気=心疾患、脳の病気=脳血管疾患

 前述の脳神経外科医は、こう説明する。

「実は2位と4位は、心臓と脳の『血管の病気』です。心臓の血管が詰まれば心筋梗塞になり、脳の血管が詰まれば脳梗塞になります。5位の肺炎で亡くなる人の大半は寝たきり生活だった高齢者ですが、寝たきりになる最大要因は脳の血管の病気です」

 つまり、2大死因である「がん」と「血管の病気」を予防すれば、病気リスクが軽減できるのだ。血管の病気の原因は「動脈硬化」が進むこと。高血圧な人もリスクが高い。そうしたリスクを減らすのは、やはり食事と運動、そしてストレス対策だ。

食生活、運動不足は「現代人の衰え」

 健康関連の取材をすると、「現代人の食生活の衰え」を知ることが多い。たとえば、「唾液を出すための食事」では、「戦前に比べて現代人は4分の1しか噛まなくなった」と聞いた。多くの人が好きなカレーライスやラーメンは、流し込むように食べられる。噛み応えのある青魚やゴボウのような食物繊維など、日によっては昔の日本人の食事に戻したい。

 昔に比べて現代人は運動もしなくなった。スポーツウェアに着替えて行うものなどと難しく考えないのも大切だ。在宅勤務が一段落したら外出して歩く。スマホのアプリで歩数計算する人も増えた。ウォーキングやジョギングで景色が変わる楽しさは気分転換にもなる。「手軽に取り組み、無理なく続けるのも大切」と、運動科学の専門家は話していた。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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