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東芝の経営混乱を招いた車谷氏、社長辞任直後にライザップ顧問に就任…社外取締役へ

文=Business Journal編集部
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ライザップのロゴ

 東芝の元社長兼最高経営責任者(CEO)の車谷暢昭氏が、トレーニングジムを運営するRIZAP(ライザップ)グループの社外取締役候補に内定した。6月24日の株主総会後に就任する。車谷氏は2021年7月からライザップの経営顧問を務めている。同社は「財務基盤の強化をはじめとする経営の監督、アドバイスを期待する」としている。

 創業者で社長の瀬戸健氏は著名経営者を次々と経営陣に招いてきたが、車谷氏の招聘も、有名人好きの表れだ。車谷氏は華麗な経歴を誇る。東京大学経済学部卒。1980年、三井銀行(現・三井住友銀行)に入行。政財界に大きな影響力を持ち、“三井のドン”といわれた小山五郎氏の秘書役を3年間務めた。小山氏は三越の岡田茂社長(当時)の解任を主導したことで知られている。

 車谷氏は三井銀行の経営戦略室長として住友銀行との合併交渉を担当。合併した三井住友銀行では経営中枢の経営企画畑を歩き、2015年、持ち株会社三井住友フィナンシャルグループ副社長と三井住友銀行副頭取を兼務し、投資銀行部門と証券を担当した。17年、上席顧問に退いた。

 17年5月、英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズは日本法人の会長兼共同代表に車谷氏を起用。LIXILグループの前社長、藤森義明氏を最高顧問に任命した。18年4月、車谷氏は東芝の会長兼CEOに招かれた。東芝は不正会計問題や原発事業の巨額損失などで経営危機に陥った。投資ファンドに6000億円の第三者割当増資で巨額の出資を仰ぎ、債務超過への転落を免れた。このため、海外投資家の比率が7割に高まった。

 投資ファンドとの丁丁発止の交渉は東芝の生え抜きの社長では無理。そこでメインバンクの三井住友銀行は投資や証券業界に精通しているとされる車谷氏を送り込んだ。車谷氏は“プロ経営者”の異名をとる藤森義明氏を東芝の社外取締役に招請した。19年6月のことだ。“もの言う株主”対策の一環である。

 だが、車谷氏は窮地に立たされた。21年3月18日の臨時株主総会で、村上ファンド系のエフィッシモ・キャピタル・マネジメントの議案が賛成多数で可決されたからだ。エフィッシモは20年7月の定時株主総会において、「大株主に対してある人物が議決権を行使しないよう圧力をかけた」と暴露し、調査を求めていた。調査結果が明らかになれば、「車谷社長の経営責任が問われるのは必至の情勢となった」(東芝の関係者)。

“もの言う株主”に追い詰められた車谷社長を支援するため、藤森義明氏がCVCキャピタル・パートナーズと組んで東芝の買収を仕掛けた、というシナリオが指摘された。車谷社長はCVC日本法人の前会長であり、東芝社外取締役の藤森義明氏はCVC日本法人の最高顧問である。

 CVCから買収提案を受けた東芝の取締役会は「車谷社長が自己保身のため、CVCと“出来レース”を仕掛けた」と判断。これが社内や株主から猛反発を招いた。車谷氏は21年4月14日、臨時取締役会で辞任した。突然の辞任劇の、わずか3カ月後の同年7月、車谷氏はライザップの経営顧問に就いていたことになる。

大物経営者2人は1年で退任

 ライザップの瀬戸社長はこれまで著名経営者を経営陣に相次いで招いてきた。18年6月、松本晃氏を代表取締役最高執行責任者(COO)に招いた。松本氏は伊藤忠商事出身。米ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人社長を経て、09年、カルビー最高経営責任者(CEO)となり、カルビーの経営を再建した。松本氏がカルビーを退くと発表した直後、瀬戸社長が直接口説き落とし、三顧の礼をもって迎え入れた。

 松本氏は「不振企業買収による拡大戦略をストップさせる」とした自分の役割を完了したとし、1年後の19年6月、取締役を退任した。松本氏の後任に中井戸信英氏が就任した。中井戸氏は住友商事で副社長を務めた後、09年、住友商事の子会社でITサービス大手の住商情報システム(現SCSK)の会長兼社長になり、16年、相談役に退いていた。

 中井戸氏は19年6月、ライザップの社外取締役になる。中井戸氏の求めに応じて取締役会議長の椅子を用意した。だが、20年3月、「任期満了を前に辞表を叩きつけた」(ライザップの関係者)とされる。ライザップの再建策をめぐって瀬戸社長と衝突したのが原因だ。

 大物経営者の2人が、在任1年で退任した。ライザップはM&A(合併・買収)による拡大路線を修正し、不採算事業の整理や本業のヘルスケア事業への経営資源の集中、ガバナンス(企業統治)改革を進めてきたとされている。この結果、21年3月期に3期ぶりの黒字化を達成した。コロナによる休業で、販管費を238億円削減した効果が出た。

 22年3月期の連結決算(国際会計基準)は売上高にあたる売上収益が21年3月期比0.7%増の1700億円、純利益は87%増の30億円の黒字を見込む。スリム化により、業績は底を打ったと判断。反転攻勢に転じる。

 ライザップは暗号資産など金融事業への進出を計画しており、そのために“金融のプロ”の車谷氏を社外取締役に招いたということのようだ。外部から招いた大物経営者は、すぐに辞めている。二度あることは三度あるという。「車谷氏も1年で去るのではないか」(有力金融筋)。株式市場は車谷氏のスカウトを冷ややかに見つめている。

(文=Business Journal編集部)

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