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配当が止まるリスクも…高配当で人気殺到「インフラファンド市場」が危ない

文=松崎隆司/経済ジャーナリスト
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東京証券取引所のHPより

高配当に惹かれ個人投資家が殺到

 ロシアのウクライナ侵攻により原油や天然ガスの価格が暴騰し電力価格が上昇しているなかで、兜町ではある金融商品が大きな注目を集めている。

 その金融商品の一つは、2015年4月30日に東京証券取引所に創設された、太陽光発電施設などのインフラを対象にした「インフラファンド市場」に上場している投資法人だ。このファンド市場は民間の資金を活用して巨額の設備投資が必要な自然エネルギーの開発を推進する目的で設立された市場で、現在タカラレーベン・インフラ投資法人やいちごグリーンインフラ投資法人など7つの法人が上場している。

 いずれも安定した投資先でありながら5~6%の高配当をうたっているため、設立以来、個人投資家を中心に人気を博し、投資口価格(一般企業の株価に該当する)はコロナ禍やロシアのウクライナ侵攻といった株価の不安定要因があるなかで安定して推移し、足下では上昇傾向にある。たとえばタカラレーベン・インフラ投資法人の投資価格は侵攻が始まった2月24日には10万6200円だったが、6月8日には11万4100円と年初来高値を付けている。

 こうした事態に当のインフラ投資法人は諸手を上げて喜んでいるのかと思えば、実は危機感を募らせているというのである。

「インフラファンドに対する期待ばかりが先行して、投資口の価格は比較的堅調です。しかし、それは実態を反映したものではありません。インフラファンドの投資家の6~7割は個人投資家で、プロの投資家からはほとんど見向きもされていないのです。ここにきて早くも制度的限界を迎え、当初の期待は大きくしぼんで今後の行く末が危惧される状態になっているからです」(インフラ投資法人関係者)

 では、いったいどのような状態になっているというのか。

リートの仕組みを活用したインフラファンド

 政府は2012年7月から再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)によって発電された電気を、国が定める一定の期間にわたって一定の価格で購入することを電気事業者に義務づける固定価格買取制度(FIT)を導入し、再生可能エネルギーの普及に力を入れ始めた。これで再生可能エネルギーは一定期間安定した収益を得ることができるようになり、これに着目して創設されたのがインフラファンドだ。当時の状況について東京証券取引所上場推進部の担当者がいう。

「インフラファンド市場が創設された背景には、インフラ資産が景気の影響を受けにくい安定資産であること、公的なインフラ施設の整備や運用面での課題解決に民間の資金やノウハウを活用しようとする動きがあったからです。さらにインフラ市場は韓国、シンガポール、タイなどアジアの市場ではすでに制度が導入され、日本でも2015年度までにアジアの他の市場に対抗する競争基盤を整備しようと12年9月から『上場インフラ市場研究会』で検討されるようになり、14年6月にはインフラファンドの組成に向けた環境整備を推進するための『日本再興戦略 改訂2014』が閣議決定されました。その後15年4月にインフラ市場が創設されました」

 インフラファンド市場は不動産などで良く利用されているリートの仕組みを活用している。インフラファンドは投資家から資金を集めてインフラ関連企業が所有していた再生可能エネルギー発電所などのインフラを購入し、そのインフラをオペレーターに貸し出す。オペレーターはこのインフラを使って電気をつくり、その電気を電力会社に売却して売電料をもらう。この売電料からインフラの賃貸料をインフラファンドに支払い、インフラファンドは賃料を原資に投資家たちへの分配金を支払うという仕組みになっている。電力会社がインフラ企業の発電した電気を一定の価格で総量買い取りしてくれることが制度で保証されていれば安定した配当をすることができる。

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 さらに税制面でも優遇措置がある。

「15年12月には導管性(証券化の際の法人税を非課税とする仕組み)の対象期間が10年から20年に延長されました。そしてインフラファンド市場は、インフラ資産の運営から創出される『安定継続的』な収益を元に価格形成が行われる『ミドルリスク・ミドルリターンインカム商品』として太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーやインフラ関連事業で活用されることが期待されたのです」(同)

20年を過ぎれば高配当は不可能に

 ところが現実はそう単純ではなかった。金融関係者が語る。

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