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白井美由里「消費者行動のインサイト」

通常価格より値引き価格の表示のほうが小さいと効果大?値引き価格は右側が効果的?

文=白井美由里/慶應義塾大学商学部教授
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「gettyimages」より

 値引きは魅力的であり、値引きを見て購入を決めたという経験は誰にでもあると思います。値引きの魅力度は、値引き額や値引き率などの値引きの大きさから評価することが多いですが、実は値引きの表示方法もその評価に影響を与えます。値引きをどのように表示するかによって、消費者による値引きの理解のしやすさが変わり、それによって評価も異なるのです。

 消費者行動研究では、様々な情報に対する消費者の理解のしやすさを「処理の流暢性(processing fluency)」と呼び、それが製品評価、購買の延期、情報の信頼度など多様な判断に影響することが実証されています【註1】。今回は、値引き価格を通常価格と一緒に表示するときに、どのような表示の仕方が評価を変えるのかについて、関連研究から説明したいと思います。

値引き価格と通常価格、どちらを大きく表示するべきか

 セールの表示で、通常価格よりも値引き価格のフォントをより大きく表示しているものをよく見かけます。それはもちろん、値引き価格が消費者の目に留まりやすいようにするためですが、実は、逆に通常価格のフォントをより大きくしたほうが効果的であることがコールターとコールターの研究によって示されています【註2】。

 コールターらは、値引き価格は通常価格よりも数値が小さいので、同様にフォントも通常価格よりも小さくしたほうが意味的に一致して理解しやすくなり、値引きがより魅力的に評価されると考えました。これは、数字は一般に「〇〇よりも小さい」「〇〇よりも大きい」のように相対的に記憶されやすいため、小さい数値には小さいフォント、大きい数値には大きいフォントのように、数字と一致するフォントを用いたほうがスムーズに理解されるという考えにもとづいています。

 コールターらはこの仮説を検証するために、インラインスケートの広告を作成し、値引き価格のフォントを通常価格よりも小さくした場合と大きくした場合とで、被験者の評価を比較する実験を行いました。その結果、値引き価格のフォントを通常価格よりも小さくしたほうが、価格の評価、値引きの価値、および商品の購買意図が高くなることを明らかにしています。また、この実験では被験者がフォントの大きさに気づいておらず、その評価は無意識に行われていたことも確認しています。

 つまり、消費者は値引き価格に意識を向けていたとしても、値引き表示に用いられたフォントのサイズも無意識に処理しており、それらの両方から値引きを評価しているということになります。コールターらは、値引き価格は通常価格よりも小さいフォントで表示し、目立つ色や動きをつけるなど他の要素で目立たせることを勧めています。

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5:30更新
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