
安倍晋三元首相を銃撃した山上徹也容疑者が「母親が旧統一教会の信者で、多額の寄付をして破産した。安倍元首相がつながりがあると思い込んで犯行に及んだ」などと話していることを受け、統一教会(世界平和統一家庭連合)の元信者や被害者支援団体などが相次いで、教団による悪質な献金集金手法の実態を証言し、クローズアップされている。だが、なぜ政府は、そんな統一教会の活動を野放しにしてるのだろうか。そこには、たとえ政府であっても、宗教法人の活動を容易には制限できない理由があるという――。
統一教会といえば1990年代、歌手の桜田淳子など有名人が合同結婚式に参加したことでその存在が注目され、教団が信者に多額の献金を納めさせ、壺や印鑑などを高額で売っている実態が明るみになり社会問題化。その後は世間の関心も薄れていたが、安倍氏銃撃の事件を受けて、現在も世界平和統一家庭連合と名前を変えて信者を集め続けていることが公になった。
11日に統一教会の田中富広会長らは会見を行い、「過去にトラブルがあったのは事実だが、2009年に当時の会長が声明を出してからは献金に対する姿勢は変わった」と説明したが、統一教会による被害者の支援に取り組む全国霊感商法対策弁護士連絡会は12日に会見を開き、弁護士や消費生活センターに寄せられた統一教会に関する相談の被害総額は昨年までの5年間だけで約580件、約54億円に上ると報告。現在も献金をめぐるトラブルは続いているとした。
会見に同席した元信者は、「犯人のしたことに関しては何一つ擁護することもないですし、正しいとも思っていません」とした上で、「人生を統一教会によって破綻させられた身としては、理解できてしまうという苦しい心情があります」「それだけ統一教会は人生を破壊します」と告白。また、各種報道では、教団が信者に保有する不動産を担保に借金をさせてまで献金させたり、一人に億円単位で献金をさせたりしているという証言も出ている。
「カルト的な集団」
同弁護士連絡会に所属する紀藤正樹弁護士も12日放送のテレビ番組『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)内で次のように語っている。
「統一教会がカルト的な集団であることは間違いなくて、社会規範との逸脱性が激しいからです」
「高齢者の方の“なけなしのお金”をですよ、霊感商法で奪って、それを統一教会に捧げることがですね、それが相手の救いになると思ってるんですね」
「昨日の(田中富広・統一教会会長の)会見でも『破産に追い込むまでない』って言ってましたけど、そんなことないです。『早く現金』っていって、統一教会のなかで『HG』っていってですね、借金献金のことなんですよ。統一教会にお金を捧げていくと、不動産売ることになる、現金は全部支払うことになる。最後、何も財産ない。そうすると『借金してでも献金しよう』なんです」
「そのときに統一教会の現場では何が教えられているかというと、『どうせ破産なんだから、どんどん借りてこい』っていうんですね」
「末端信者の方たちは『万物復帰の教義ですべてを捧げなさい』と言われている。実際の現場では『全てをいっぱい捧げることが自分の罪の清算になるし、先祖で苦しむ人の救うことになる』と教えられる。自分の財産すべてを提供することが、とても統一教会信者にとっては重要になる」