ビジネスジャーナル > 社会ニュース > 東京都外国人融資制度、税金で補填も
NEW

東京都、外国人「無担保」融資制度、債務不履行なら税金で補填…持ち逃げリスクは?

文=横山渉/ジャーナリスト
東京都庁(撮影=編集部)
東京都庁(撮影=編集部)

 東京都が新しくスタートさせた「外国人起業家の資金調達支援事業」に対し、Twitter上では「日本人差別だ」「持ち逃げされる」など批判の書き込みが続出。「中国で評判になっている」という投稿もあった。この新制度は、外国人起業家を対象に無担保で最大1500万円を融資するものだが、これらの批判は当たっているのだろうか。

 まず、新制度の返済期間は10年以内で、金利は固定で2.7%以内となっている。東京都にはこれまでも、国籍に関係なく活用できる制度として、「東京都中小企業制度融資」があった。これは無担保で最大3500万円を貸し付けるもので、金利は返済期間によって変動するが、3年以内の場合は1.5%を下回るケースもある。

 また、一般的に金融機関から融資を受けづらいとされる39歳以下の若者や55歳以上のシニア、それに女性(年齢制限なし)を対象にした「女性・若者・シニア創業サポート事業」もあり、こちらは最大1500万円だが、無担保で金利1%以内となっている。つまり、金利を見る限り、外国人優遇や日本人差別との批判は間違っている。

 いずれも、原則として代表者個人が保証人になる必要があり、その点は今回の新制度も同じだ。第三者の連帯保証人は必要ないが、融資を受けるには、銀行や信用金庫などの金融機関と、東京信用保証協会の二重の審査を通過する必要がある。

 新制度では、そもそも申請できるのは永住者や「経営・管理」ビザなど、事業活動の制限を受けない在留資格をすでに保有している外国人に限られる。海外から短期間だけ日本に滞在して“持ち逃げ”するようなことはできない。ネット上では保証人不要・無担保というところがフォーカスされていたが、創業期の企業は担保となる土地や建物を所有していないことが多く、担保を求めれば支援自体が難しくなってしまうだろう。

 さらに、新制度には「日本国内において創業した日から5年未満」と「東京都内に本店又は主たる事務所を置く法人の代表者」の条件がある。つまり、実質的に都内ですでに事業をスタートさせている外国人が対象であり、保証人の問題は実は大きな問題ではないとも考えられる。

 では、国籍に関係なく活用できる制度があるにもかかわらず、外国人を対象にした新制度をわざわざ創設した理由は何か。東京都産業労働局はこう話す。

「言葉の壁や金融機関のスキルの問題もあって、金融機関にはこれまで外国人起業家に融資するという機会があまりなかった。以前からビジネスコンシェルジュ東京には、実際の融資になかなか結びつかないという相談が外国人からあった。新制度では新設の統括支援機関(東京インキュベーション株式会社)が金融機関をバックアップしていく」

 ビジネスコンシェルジュ東京は、起業や事業展開を検討している外国企業向けに、ビジネス面から生活面までをトータルに支援する総合窓口で、東京都政策企画局が運営している。

東京都、外国人「無担保」融資制度、債務不履行なら税金で補填…持ち逃げリスクは?の画像1
東京都のHPより

債務不履行が発生した場合、都が半額を補填する

 日本人か外国人かを問わず、起業には一定の割合で失敗がつきものだ。融資先が倒産すれば不良債権となり、貸し倒れが発生する。

「融資希望者には、ビジネスコンシェルジュ東京に相談してもらい、中小企業診断士が事業計画書をチェックする。その後、東京都が事業の実現可能性などを審査する。都の認定後は、取扱金融機関が改めて審査する。仮に都が認定を出しても、金融機関が疑問を持てば融資はされない。中小企業診断士など専門家が融資の前後からサポートに加わることもあり、継続的に第三者の目が入ることになる」(同)

 不良債権を発生させないためには、しっかり審査し、怪しい案件には融資しないというわけだ。では、何が問題なのか、東京都議会の松田りゅうすけ議員(日本維新の会)に話を聞いた。

「新制度のスキームでは、東京都は金融機関に預託金を支払っている。金融機関は東京都から無利子で借りた預託金から融資を実施できるため、通常よりも低い金利で融資が可能となる制度だ。これだけなら、東京都も一時的に資金負担するだけでリスクがないと思われそうだが、融資を受けた企業が債務不履行を起こした場合、どうなるか。実は東京都が金融機関に融資額の半分の額を補填するという制度となっている。これは、ウェブサイトには記載のない大きな問題点だ。東京都が負担するということはもちろん、都民が納めた税金から補填するということだ」

 松田議員は「制度の早期見直しも含めて、都議会で問題提起していく」としている。東京都産業労働局に貸し倒れリスクをどのくらい見込んでいるのか聞いたところ、「まだわからない」との回答だった。

 新制度の受付が開始されてから2カ月が経つが、都の認定を受けた事業はまだない。最大で年間40件程度を想定しているという。

(文=横山渉/ジャーナリスト)

横山渉/フリージャーナリスト

横山渉/フリージャーナリスト

産経新聞社、日刊工業新聞社、複数の出版社を経て独立。企業取材を得意とし、経済誌を中心に執筆。取材テーマは、政治・経済、環境・エネルギー、健康・医療など。著書に「ニッポンの暴言」(三才ブックス)、「あなたもなれる!コンサルタント独立開業ガイド」(ぱる出版)ほか。

東京都、外国人「無担保」融資制度、債務不履行なら税金で補填…持ち逃げリスクは?のページです。ビジネスジャーナルは、社会、, , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!