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松崎のり子「誰が貯めに金は成る」

二重三重のバラマキか?使い勝手が悪い大量の「クーポン&商品券バブル」の不思議

文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト
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一万円札(「gettyimages」より)
「gettyimages」より

 東京都の「Go To Eat キャンペーン Tokyo」が2年ぶりに再開した。そういえば筆者もプレミアム付き食事券に申し込み、アナログ券に当選していたはずだった。2020年当時は当選メールを受け取った途端に新型コロナの感染拡大となり、東京都はキャンペーンを中止。あれから家族以外と外食する機会はめっきり減った。

 現在も冬に向けて感染者が増えており、大人数での会食は難しい雲行きだ。それもあって、受け取った当選メールはまだ有効だったが、今プレミアム食事券を購入すべきか、しばし悩んだ。2万円分を買えば、25%のプレミアム付きで2万5000円使えるが、果たして来年の1月25日までに家族でそんなに使う機会があるだろうか? というのも、手元には別のプレミアム付き商品券があったからだ。

 それは地元自治体が住民向けに発行したもので、やはり地元の飲食店で使用できる。こちらも一人当たり最大2万円だが、一世帯当たりではなく一人当たりだ。すでに手元には家族二人分、都合4万円+プレミアム金額の商品券があるわけで、これに加えてGo To Eatの2万5000円を購入すると、8万円近くになる。まさに商品券バブル状態だ。これを2、3カ月の間に無理やり使いきらねばならない恐ろしさに、Go To Eatは購入金額を減らすことに落ち着いた。

二重三重の「バラマキ」か

 タイミングが悪いことに、「Go To Eat キャンペーン Tokyo」は自治体がプレミアム商品券の募集をほとんど終えた後の再開だった。地元の飲食店を見ても、「Go To Eat対象」となっている店はそう多くない。先行するプレミアム商品券は使えますとあり、店としてはもうそっちで走り出していたのだろう。利用者としても、「プレミアム商品券が使えるので間に合ってますから」といった具合。こうした公的補助はありがたいが、まさに「バラマキ?」という気がしてくる。予算を取ってしまったので使い切らねばと、機械的に進んでいるのだろう。

 おまけに、自治体のプレミアム商品券を購入できるのは住民だけとは限らない。調べてみて驚いたのだが、名古屋市のプレミアム商品券は在住者が対象だが、大阪市は誰でもOK(申し込み多数で抽選となった場合は居住者優先)だった。さすが商売上手の大阪やと感心したが、どっこい東京でもフリーな自治体はあった。在住者だけでなく在勤者もOKだったのは、大田区、港区(デジタル商品券のみ)など。年齢制限はあるものの、在住の決まりがないのは江東区、世田谷区、品川区など。目的はあくまで区内の事業者支援であり、千客万来ということだろう。今やほとんどの区で申込を終えているので何ができるわけではないが、勤め先がある自治体なら申し込んでおく手もあったわけだ。

 Go To Eatに自治体商品券だけでもダブっているのに、ここに全国旅行支援のクーポンも参戦している。筆者の地元では、この3つのいずれかのステッカーが貼られた店ばかりで、言いたくないが「バラマキ感」が半端ない。それぞれ目的も管轄も違うからとはいえ、公的なお金の使い方として首を捻るばかりだ。

消費者のためとはいえない使い勝手の悪さ

 先の二つは、そもそもコロナ禍の影響で弱った飲食業や地元の店を応援しましょうという趣旨のものだ。しかし、物価高騰に苦しむ消費者としては、食費や日用品の購入に使えるのがありがたいし、政府や自治体にはそこにお金を使ってもらいたい。たとえば一家当たりのひと月の食費が5万円だとすると、夫婦で一人当たり2万円合計4万円+プレミアム分(20~30%ほど)の商品券を買えば、食費に充当できて助かるだろう。

 しかし、自治体のプレミアム商品券は、たいがい大手チェーンは対象外。日々の食品を買う大手流通系のスーパーでは使えないケースが多い。ドラッグストアもチェーンによって対応がまちまちだ。

 かと思えば、コンビニでは使えたりするのだから不思議だ。フランチャイズのため個人商店という扱いなのだろうが、全国一律で同じロゴが付いているコンビニで使えるなら大手スーパーでも使えるようにしてほしいのが消費者の言い分だ。

 現在、内閣の支持率低下がはなはだしく、挽回策として生活支援のバラマキは今後も続きそうだ。来年度も自治体を介してプレミアム商品券の発行があるのではと推測している。その際には、ぜひ生活者目線で「使えるもの」をお願いしたいものだ。

プレミアム付きでトクしたつもりが…

 冒頭でGo To Eatのチケットは2万円まで買えたのだがやめたと書いたが、購入する店では「いいんですか?」と不思議がられた。ほとんどの人は買える権利上限まで買うのだろう。自治体のプレミアム商品券にいたっては、一家で10万円分購入したという声も聞く。

 ここには、「申し込んで当選しないと買えない」という仕掛けが入っていることが大きい。誰でもいつでも買えるなら、それほど焦らないし必要な分を買うだろう。しかし、当選した=多くの参加者の中から選ばれて、買える特権を与えられた――となったら話が変わる。その権利を無駄にするなど考えられない、買わなくては損だと思ってしまう。なかなかひねられた仕組みなのだ。

 さらに、そうやって先払いした商品券には期限がある。期限を超えたらそれは紙切れとなる。何が何でも使い切らねばならない。この物価高のご時世、1円でも無駄にしたくないはずなのに、商品券を使い切るために必要でないものを無理やり買うのは二重三重に無意味な消費だ(店側にはありがたいので、趣旨には合っているが)。

 こうした無意味な消費を避けるためにも、商品券を購入する前にどこで使えるかを確認することは欠かせない。消費には、生活必需消費と不要不急の余裕消費がある。食費や日用品など、毎月必ず使う生活必需支出に使うのが最も効率的だ。大手スーパーはダメだとして、他に食品を扱っている店はどうか。普段利用するコンビニやドラッグストアではどうか。期限ぎりぎりの駆け込みでどうでもいいものを買わないためにも、扱い店のリストを確認したうえで申し込むべきだろう。

 筆者が買ったプレミアム商品券は、地元の酒屋で使えるのでアルコールを買いだめするか、それともマッサージ店でいつもより長いメニューの施術をしてもらうか。利用期限が来る前に有効な組み合わせを考えなくては――。

松崎のり子/消費経済ジャーナリスト

松崎のり子/消費経済ジャーナリスト

消費経済ジャーナリスト。生活情報誌等の雑誌編集者として20年以上、マネー記事を担当。「貯め上手な人」「貯められない人」の家計とライフスタイルを取材・分析した経験から、貯蓄成功のポイントは貯め方よりお金の使い方にあるとの視点で、貯蓄・節約アドバイスを行う。また、節約愛好家「激★やす子」のペンネームでも活躍中。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)。
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