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セイコーマート、商店消滅の村に出店、村長が直談判?過疎地でも利益あげる秘密

取材・文=文月/A4studio
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セイコーマートの店舗

 北海道のローカルコンビニエンスストアチェーンであるセイコーマート。道産食材をふんだんに使用した豊富な商品ラインナップや、店内調理した弁当、ホットスナック、おにぎりなどを販売する「ホットシェフ」、そして地域に根差した経営方針が評価され、多くの道民に愛されているコンビニである。

 そんなセコマをめぐって9月、Twitterに投稿されたあるツイートが3.1万「いいね」以上を獲得し、話題になっている。

<村から商店が消滅し、村全体が買い物難民化。そして村がセコマ本社に直談判して村有地を激安で貸し出して出店させた奇跡のセイコーマート初山別店。お昼なのもあり、役場の人や漁師さん、近所のお年寄りでとんでもない混み方してる>

 ツイート主が言及しているのは、2014年12月に開店した北海道初山別村にある店舗のことだ。初山別村は今年10月31日現在、人口が1082人しかいない過疎化が進む自治体。一般的にコンビニが開店するために必要な商圏人口は3000人ほどといわれていることを踏まえると、いかにセコマが大胆な出店を行ったかがわかるだろうが、開店当初からお店は盛況で地元住民の客足は絶えないという。実はかねてからセコマ側も初山別村への出店を計画しており、ビジネス的な視点を抜きに当時の担当者は「初山別村の買い物難民をなんとかしたい」という思いで開店に尽力していたという。

 とはいえ、利益を上げるのが難しい見込みの地域に出店するのは理にかなっていない。そこで今回、コンサルティング事業を手掛けるムガマエの代表取締役社長・岩崎剛幸氏に、セコマの経営のからくりについて聞いた。

独自の物流システム構築でコスト減を実現

 なぜ人口減少が進む地域へ出店できたのか。セコマの経営理念がヒントだと岩崎氏はいう。

「セコマが創業当時から掲げている最も大事な戦略は、北海道内で商売するということ。ですからセコマは北海道内で人が住んでいるところであれば、人口の多さに関係なくすべての地域に出店することを検討してきた企業なんです。現在、北海道の人口に対するセコマのカバー率は99%を超えており、その他の大手コンビニを抑え、堂々の道内トップシェアを誇っています。クラブカードの発行数も約540万枚に達しており、これは北海道の人口約520万人を上回る数字。いかにセコマが北海道で重宝され、かつ愛されている存在なのかがわかるでしょう。

 またセコマは、ロープライス、かつ道産食材を使用した弁当や総菜、インスタント食品、アイスなどのクオリティの高い商品が主流となっているので、地域住民からの評判も良い。初山別村もセコマが出店するまでは何十kmも離れた場所まで買い物しにいかなければいけなかったので、住民の方は歩いて行ける距離にセコマができて本当に助かっているようです。このような過疎化が進む道内の地域において、セコマはひとつのインフラのような役割となっているのです」(岩崎氏)

 国内のコンビニ店舗数第1位を誇るセブン-イレブンの道内店舗数が11月末時点で997店舗なのに対し、セコマは1082店舗もあるが、セコマが道内各地に店舗を構えられる理由は独自の物流システムにあるという。

「1990年代にセコマは、当時の社長であった赤尾昭彦氏の方針によって物流への投資を大規模に行いました。自社のトラックを用いて自社商品を道内すべての店舗まで配送するという物流網を整備したのです。そして、何よりセコマが画期的だったのは配送回数を減らしたこと。

 一般的なコンビニですと、乳製品、弁当・総菜、パンなどといった商品の種類別に異なる配送会社が担当することになり、1日あたり9回ほどトラックが店舗まで配送に訪れます。しかし、セコマの場合はなんと1日2回だけ。自社商品やお菓子、乳製品、お酒などといった商品を混載して運ぶ仕組みを構築できているからです。外注の配送会社へ手数料を支払う必要がないだけでなく、自社でまかなっている物流のコストもできるだけ抑えているので、過疎化している地域も含めた道内各地に店舗を構えられるのでしょう」(同)

目先の利益にとらわれない地元目線の経営

 またセコマはただ出店するだけではなく、地域全体のことを考えて実行に移すのだそうだ。

「初山別村店の開店の経緯を見ると、当初セコマ側は出店を検討していたものの、村内に商店が残っていたので、その土地の生活圏を壊してはいけないと考え、あえて出店しなかったといいます。その後、その商店が閉店することになり、村長が『村内に出店してほしい』とセコマに申し出たことで出店を決定しました。このことからセコマは街の生活圏を壊してまで強硬に出店しようとしているわけではなく、あくまで地域が必要としているからインフラとして機能していきたいと考えているようです。

 もちろん、企業として最低限の利益は守るために、赤字にはならないように出店しているとは思います。初山別村のように店の土地代を安く貸し出してもらったり、地元住民を中心にスタッフとして雇ったりと、その地域とうまく共同して出店計画を立てて、出店・維持コストを抑えているんです。1日の売上も平均45万円前後と一般的なコンビニの売り上げ水準を満たしているところが多く、過疎地域への配慮と売上の両方を維持している企業だと評価できますね」(同)

 粋な計らいによって、地元住民からの信頼も厚いセコマ。だがこれからの人口減少社会では、利用者数も減っていくことが予想される。初山別村のような過疎地域の存続も危ういのではないか。

「だからこそセコマは今後ますます道内のシェアを高め、リピーターを増やして売上を維持していくつもりなのではないでしょうか。幸いセコマは道内シェアが非常に高いため、リピーターを継続してつくっていくことができれば人口減少はさほど心配する必要はないと思います。

 また近年では、カップ麺やアイスなどの自社商品を関東地方のスーパーにも卸売りしています。コンビニ事業ではなく卸売り事業で売上をつくっていき、セコマブランド=北海道ブランドとして、道外でも利益を上げていく方針のようです。このように新しく収入源を獲得することによって、既存店の売上をさらにまかなうようにしているのでしょう」(同)

 セコマは過疎地域になぜ出店できたのか。その背景には強靭な物流システムと地域住民からの信頼のほかに、セコマ自身の北海道への愛があったのだった。

(取材・文=文月/A4studio)

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エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
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Twitter:@a4studio_tokyo

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