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小谷寿美子「薬剤師が教える薬のホント」

入手困難なカロナールの代わりに漢方薬を使う方法…葛根湯は家に常備し「すぐ飲む」

文=小谷寿美子/薬剤師
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「gettyimages」より

漢方薬でどこまでできる?

 12月14日付産経新聞で「薬足りない、現場深刻」という見出しの記事が掲載されました。一般紙に取り上げられるようになり、「カロナール(アセトアミノフェン)」をはじめとする薬の不足が認識されつつあります。私が勤務している薬局でもカロナール不足は深刻で、慢性的な痛みを持つ人には他の薬を服用していただきたいと切実に思っているほどです。そこで今回は、薬の代わりにドラッグストアの店頭で買える漢方薬を活用する方法について紹介します。

漢方は体質改善だけではない

「漢方薬=体質改善」というイメージが強く、「漢方薬は本当に効くのか?」と懐疑的な人が多いですが、西洋医学ではできない体質改善を漢方薬ができる場合もあります。「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」のようにダイエット目的で長期的に飲むような薬が漢方薬市場で主流となりました。

 ウイルス感染対策において漢方の力は偉大です。ウイルスが増えて症状がひどく出てしまう人と、すぐ治ってしまう人の違いは免疫力です。「免疫力<ウイルス増殖力」のときは症状がひどくでてしまい、「免疫力>ウイルス増殖力」のときはあっという間に治ってしまいます。

 この免疫力に関わる物質が「インターフェロンα」です。これがたくさん出るとウイルスを強力に破壊できますが、ゆっくりつくられるので、その間にウイルスが増えれば症状が出てしまいます。いかにインターフェロンαを素早くつくるのかというのがポイントとなります。

 ウイルス感染症に対する漢方の役割に関する研究として、マウスとインフルエンザウイルスを使ったものがあります(渡辺賢治ほか)。「十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)」という漢方薬を飲んでおくと、インターフェロンαをつくるための物質が増えたそうです。これにより、ウイルス感染が起こったときにすぐにインターフェロンαがつくれるようになったということでした。つまり、事前に漢方を飲んでおくと、ウイルスが体内に入ってもすぐ退治できるということです。似たような漢方で「補中益気湯」という薬があります。事前に飲んでおくとウイルスが体内に入ったときにインターフェロンαが増え、まさに「飲むワクチン」といえます。

 これらの薬は「養生の漢方薬」と呼ばれていて、体を温め、胃腸機能を整える効果があります。今回紹介したものは動物実験であり、人間に対して効果があると結論づけられているわけではないので、絶対やってくださいというものではありません。しかし、ウイルス感染予防のために何かできることはないかという思いには十分こたえてくれる薬だと考えています。

有名な葛根湯

「傷寒論(しょうかんろん)」という中国医学の古典がありますが、「伝染性の病気に対する対処法」についても書かれており、そのなかで紹介されている薬のひとつが葛根湯です。日本でもとてもメジャーな漢方薬なので、ドラッグストアに必ずといっていいほど売っています。私も店頭で多くの方に葛根湯を紹介してきました。

 葛根湯については犬を使った研究があります。犬に葛根湯を飲ませて体温を測るとともに、免疫細胞の一つであるマクロファージがどれだけウイルスに似せたビーズを食べるかを調べたものです。その結果は、まず体温は薬を飲んで1時間後に0.6℃上がり、それが12時間続きました。ビーズを食べる力は、葛根湯を飲ませた群でおよそ1.1倍増えました。また、マウスでの研究ですが、葛根湯は炎症を抑える効果があります。それはアスピリンと同じレベルです。

 葛根湯は、強く症状が出てから服用しても効果があまり出ません。ちょっと違和感を感じた段階ですぐ飲むようにしてください。「ウイルス増殖力<免疫力」という状態をいち早くつくりだすためには、ウイルスが少ないうちに葛根湯を素早く飲み、体温を上げ免疫細胞が活発に動ける状態にするのです。また、葛根湯と似た効果がある「麻黄湯」は悪寒、発熱、頭痛に効きます。こちらも「傷寒論」に掲載されている薬ですが、葛根湯ほどはメジャーではないので、店頭にひっそりと並んでいることが多いです。葛根湯や麻黄湯を家に常備しておくようおすすめします。

「小青竜湯」は鼻水や気管支の分泌物がある場合に使います。のどがイガイガして咳が続くような場合には「麦門冬湯(ばくもんどうとう)[F1] 」を使います。どちらもドラッグストアに並んでいますので、必要に応じて飲むようにしてください。

解熱・鎮痛作用

「芍薬甘草湯(しょうやくかんぞうとう)」は、痛みに対して「特効薬」といえるものです。山登りやマラソンをしている方にとってはおなじみの薬です。足が止まってどうにもならなくなった時に1包飲むと、痛みが消えてまた歩けるようになることから広まりました。この薬のいいところは、骨格筋のみならず内臓筋にも働く点です。つまり、腹痛でも生理痛でも筋肉痛でもいいのです。こちらもドラッグストアの店頭で買えるものです。

「地竜(じりゅう)」という生薬があります。これはミミズを乾燥させたエキスで、解熱効果があるため注目されてきています。ドラッグストアの店頭に並んでいないことが多いのですが、知っておいて損はありません。

(文=小谷寿美子/薬剤師)

小谷寿美子/薬剤師、NRサプリメントアドバイザー

小谷寿美子/薬剤師、NRサプリメントアドバイザー

薬剤師。NRサプリメントアドバイザー。薬局界のセカンドオピニオン。明治薬科大学を505人いる学生のなか5位で卒業。薬剤師国家試験を240点中224点という高得点で合格した。
市販薬も調剤も取り扱う、地域密着型の薬局チェーンに入社。社歴は10年以上。
入社1年目にして、市販薬販売コンクールで1位。管理薬剤師として配属された店舗では半年で売り上げを2倍に上げた実績がある。

市販薬、調剤のみならずサプリメントにも詳しい。薬やサプリメントの効かない飲み方、あぶない自己判断に日々、心を痛め、正しい薬の飲み方、飲み合わせを啓蒙中。

Twitter:@kotanisumiko

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