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疑惑の百貨店・ツタヤ図書館、市との癒着にメスが入るか?市民団体が住民監査請求

文=日向咲嗣/ジャーナリスト
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ツタヤ図書館、市との癒着にメスが入るか?
和歌山市民図書館が入居するキーノ和歌山(「Wikipedia」より)

 和歌山市民図書館の運営費支出に多数の不正疑惑があるとして地元の市民団体が12月27日、和歌山市に住民監査請求の手続きを行ったことが、このたび関係者への取材で明らかになった。

 同館は全国でTSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が指定管理者となる、全国で6番目の“ツタヤ図書館”。2020年6月、南海電鉄和歌山市駅前に開館した際には、お洒落で居心地のよい空間ができたと喜ぶ市民の姿を、地元メディアがさかんに取り上げた。

 その一方で、館内でCCCが経営しているスターバックスと蔦屋書店の賃料が周辺相場の数十分の一だったり、催事シーズンにはCCCが他店に館内スペースを“又貸し”をして稼いでいるのではないかといった不正疑惑が、当サイトの独自調査によって次々と浮上していた。

 こんな不正は看過できないと、ついに地元市民が立ち上がったことは、巨額の公金投入の陰に隠れた特定企業への利益供与という、ツタヤ図書館の構造的な問題にメスを入れる一歩になりそうだ。

 今回、監査請求に踏み切った市民団体は、市民図書館の指定管理者選定で不透明なプロセスがあったことをきっかけに2017年12月、和歌山市教育委員会等に公文書の開示請求を行ったという。

「教育委員会から開示された公文書は黒塗りされたものばかりで、知りたいことが何もわかりませんでしたので、そのつど教育委員会に不服審査請求を行うなどして、図書館に関する運営状況の透明化を求めてきました」

 そう話すのは、同団体の世話人を務める中村行子氏である。

 2019年3月には、同団体が中心になって「ライフスタイル分類とTカード利用の導入反対」の請願署名を集め、議会に提出。翌年3月にも、学校図書館へ直接雇用による学校司書の適正な配置を求めて請願を行うなど、一貫してCCCによるツタヤ図書館流の運営に警鐘を鳴らしてきた。いずれも不採択となったものの、この間の活動もあって、学校図書館の運営までCCCに委託される事態は回避された。

 だが、2020年6月5日に新市民図書館が南海・和歌山市駅前に全面開館して、不安が現実になってしまった。

「1階一等地が蔦屋書店とスターバックスに占拠され、手の届かない高い位置に書架を飾りとして配置するなど、本来の図書館機能がないがしろにされているのではと感じていました。そんな折、和歌山市がカフェと書店を月19万円という格安でCCCに貸し出していると知って驚きました。1階のほとんどはスターバックスと蔦屋書店です。それなのに賃料の対象が1階フロア全体の1割ちょっとと聞いて、私たちの税金で運営している図書館なのに、とんでもない話だと思いました」

 今回、同団体が監査請求の対象としたのは、スターバックス・蔦屋書店の賃料9割引疑惑や、1階店舗スペースの又貸し問題のほか、不当に安くなっている両店舗の光熱水費の返還請求など、11項目にわたる。いずれも、図書館の運営費が適正に支出されていない会計上の問題として、監査請求されている。

 果たして、市の監査委員は、市当局とCCCの“癒着”に、どこまで切り込めるのだろうか。

 なお、監査事務局では、27日は監査の受付のみで正式に受理の可否は後日請求者に通知するとのこと。いずれにしろ、60日以内に監査するかどうかも含めて結果が出るという。

【監査請求の主な内容】

(1)スターバックスと蔦屋書店の賃料(行政財産の目的外使用料)算定に誤りがあるため、それを改めて募集要項で明示されていた単価で計算し直して、不足分をCCCに請求せよ

(2)前記の使用料が誤りではないとするならば、募集要項でその3倍にあたる単価を掲げて公募した行為は、官製談合の疑いがあるため、その旨を関係機関へ直ちに告発せよ

(3)目的外使用料の対象エリアを細かく区切った使用料の申請は無効であるため、改めて2020年6月5日以降について、目的外使用料対象エリアを実情に応じて引き直しを行い、その場合に徴収すべき使用料不足分をCCCに請求せよ

(4)建物及び内装が完成した2019年12月~2020年6月5日までの開業準備期間についても、行政財産の使用料をCCCに請求せよ

(5)開業準備期間中の光熱水費をCCCに請求せよ

(6)不当に安くなっている民業部分の光熱水費を、過去にさかのぼってCCCに請求せよ

(7)通路部分等にて、臨時の使用許可を得て営業しているポップアップストアについては、

許可証で禁止している「又貸し」行為にあたるため、許可証で明記されている通り使用許可を取り消したうえで、CCCがこれまで同様の又貸しによって得た不当利益を自主申告させ、その金額を返還させよ

(8)開館準備業務委託が完了しないうちに一部開館したのは誤りであるため、その分の2019年度(令和元年度)の指定管理料7700万円をCCCに返還させよ

(9)図書館スタッフを店舗運営に従事させる公私混同分の人件費をCCCに返還させよ

(10)自社の都合で貼った不要なラベル分の費用3800万円をCCCに返還させよ

(11)司書資格者を減らした13人分の人件費をCCCに返還させよ

(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)

疑惑の百貨店・ツタヤ図書館、市との癒着にメスが入るか?市民団体が住民監査請求の画像2
市民団体が監査事務局へ提出した監査請求書の冒頭部分

日向咲嗣/ジャーナリスト

日向咲嗣/ジャーナリスト

1959年、愛媛県生まれ。大学卒業後、新聞社・編集プロダクションを経てフリーに。「転職」「独立」「失業」問題など職業生活全般をテーマに著作多数。2015年から図書館の民間委託問題についてのレポートを始め、その詳細な取材ブロセスはブログ『ほぼ月刊ツタヤ図書館』でも随時発表している。2018年「貧困ジャーナリズム賞」受賞。

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