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建設費用7200億円…「第二青函トンネル」構想、検討加速…誰が費用を負担か

文=小林英介
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青函トンネル(独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構のHPより)

 1988年3月、北海道と青森を結ぶ「青函トンネル」が開通した。そこを通る路線は海峡の名にちなみ「津軽海峡線」と呼ばれ、特急「スーパー白鳥」などの定期列車から「ドラえもん海底列車」などの臨時列車まで多くの列車が青函トンネルを使用し、現在はその座を北海道新幹線などに譲った。今、北海道内の建設業界などでは、この青函トンネルとは別の新しいトンネル「第二青函トンネル」建設の構想が持ち上がるなど面白い動きがみられる。そこで本稿では、「第二青函トンネル」とはどのような構想なのかについて迫ってみたい。

 その前に「青函トンネル」の歴史について少し振り返っておこう。「青函トンネル」建設の必要性が議論されるきっかけとなったのは、とある台風が関係しているといわれている。地元紙記者は語る。

「トンネル建設のきっかけとなったのは1954年に発生した洞爺丸台風だ。当時、運行されていた青函連絡船の洞爺丸が台風の影響を受けて沈没。多くの犠牲者を出したことから、トンネル建設への歩みが加速した」

国土交通省によれば、洞爺丸に乗っていた人のうち159人は救助されたものの、乗客・乗組員ら1155人は死亡したという。「洞爺丸が転覆した現場近くの七重浜(ななえはま)には多数の死体が漂着し、地獄絵図となった」(同)ということもあり、安全重視に舵を切るよう要望する声が大きくなっていった。

道建協副会長「7200億円の建設費用がかかる」

「第二青函トンネル」構想とは、2層構造のトンネルを新しく津軽海峡に作り、上には自動車等の専用道路を、下には貨物用の線路などを敷設するという壮大な計画である。

 構想の整備促進等を行う団体の一つ、北海道建設業協会(以下、道建協)副会長の栗田悟氏は本稿記者の取材に対し、次のように道建協の立場などについて説明した。

「2016年に日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)が青函マルチトンネル構想を提案している。これを受けてJAPICと協力し、2018年に道路専用トンネルとして『第二青函多用途トンネル構想』を民間有志で提案している。また有志メンバーの一人として、私が入っている」

「北海道経済連合会がその構想を自らのプロジェクトとして推進する立場をとっている。道建協としては北海道経済連合会(以下、道経連)と連携し経済界の一員として推進する立場だ。JAPICは2020年に道路トンネル+単線軌道を入れた構想『津軽海峡トンネル』(名称を変更したもの)を提案しており、現在はJAPIC提案の構想を北海道内経済界も推進する立場をとっている」

 また、栗田氏によれば、建設費用は「7200億円かかる」という。ちなみに、道建協の会長を務めているのは札幌建設業協会会長でもあり、道内の大手ゼネコン・岩田地崎(いわたちざき)建設の社長でもある岩田圭剛(いわたけいごう)氏だ。岩田氏は北海道商工会議所連合会・札幌商工会議所の会頭等も務めている。いわば「道内経済・建設業界のドン」ともいえ、顔が広い人物だ。見方を変えれば、それらの業界から第二青函トンネル建設への要望が相次いでいるともいえるだろう。

道内外でも「第二青函トンネル」への取り組みが拡大中

 第二青函トンネル構想をめぐっては、道内外で推進へ向けた動きが加速しつつある。青森県今別町は、第二青函トンネルの建設実現に向けた推進会議を今月にも立ち上げる見込みだ。取材に応じた今別町の担当者は、推進会議について次のように見通しを示す。

「今年7月26日、今別町内で推進会議の設立総会を開く予定だ。推進会議は(後述の)北海道福島町の第二青函トンネル構想を実現する会のようなもの。地元から情報を発信し、国や県に(第二青函トンネルについて)認識してもらうよう啓発を行う」

 また北海道福島町では、建設関係者や町民らで構成する「第2青函トンネル構想を実現する会」(会長・鳴海清春福島町長)が7月10日に総会を開き、青森県側(今別町)と連携してトンネル建設などの要望活動を展開することを目指すと確認した。期成会の事務局でもある福島町総務部の担当者は、「北海道と青森県への要請活動の強化や、北海道議会議員や国会議員への働きかけにより広く必要性を共有する取り組みを進めていく」と意気込む。北海道新聞の報道によると、総会には約40人が出席し、期成会に加入していない自治体への働きかけ強化などを盛り込んだ事業計画案を承認したという。

 このように一部ではトンネル建設への機運が高まりつつあるが、課題も散見される。福島町の担当者は次のように懸念を示す。

「工事費が莫大となることから、国が主体となり実施してもらう必要がある。新幹線の札幌延伸が最優先事項となっており、道内全体における機運がなかなか高まっていない。福島町だけではなく、北海道・青森県が一体となり国へ必要性を訴えていく必要があると考えている」

道建協の栗田副会長も「行政も含めたさまざまな機関に理解をしていただき、連携して解決していくしかないと考えている」とコメントした。果たして、「第二青函トンネル」は実現するのか。誰が7200億円という巨額の費用負担をするのかはもちろん、事業に対しての自治体・関係者らの「本気度」が問われている。

(文=小林英介)

小林英介/ライター

小林英介/ライター

ライター。1996年北海道滝川市生まれ。業界紙記者として働きつつ、様々な媒体でも活動している。

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