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モンスト、発売から10年でも国内売上1位の謎…巧妙な仕掛け&収益構造

取材・文=文月/A4studio、協力=岩崎啓眞/ゲームプロデューサー
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「モンスターストライク」の公式サイトより

 2013年にmixiがリリースし、10周年を超えたスマートフォンゲーム「モンスターストライク(モンスト)」。今年10月時点でダウンロード数は6100万を超えている。味方のモンスターを引っ張り、弾いてエネミーにぶつけて倒す、というシンプルなゲーム性と、友人・家族と一緒にプレイできる遊びやすさが口コミで爆発的に広がり人気に。9月30日と10月1日には10周年を記念したアニバーサリーパーティーがグランドプリンスホテル新高輪にて開催され、オーケストラの演奏や公式大会などで大きな賑わいを見せた。ガンホー・オンライン・エンターテイメントの「パズル&ドラゴンズ」とともに、国内初期のソーシャルゲーム市場を語る上で欠かせないゲームといえるだろう。

 だが、近年は高いクオリティの新作モバイルゲームが続々とリリースされているため、さすがに10年以上前にリリースされたモンストも低迷しているかと思いきや、人気はまだまだ健在。「ファミ通モバイルゲーム白書2023」によれば、2022年の国内モバイルゲーム市場において売上1位を記録しているのである。

 2位には「ウマ娘 プリティダービー」(Cygames)、3位には「Fate/Grand Order(FGO)」(Aniplex)、4位には前出のパズドラ、5位には中国発の「原神」(HoYoverse)がランクインしている。「ウマ娘」をはじめとした強豪を押しのけてのトップ獲得という結果は、モンストのコンテンツとしての強さがうかがえるというものだ。

ユーザー離れに苦しむも…トップセールスをたたき出せるワケ

 しかし、モンストもずっと好調だったわけではなく、ユーザー離れに苦しんだ過去がある。ゲームとしてのマンネリ化、モバイルゲーム市場の成熟化に伴い、18年頃からユーザー離れが問題視されており、「モンストはオワコン」「引退するか」といった声がささやかれることも珍しくはなかった。実際に19年3月期の時点で月間アクティブユーザーを示す指標であるMAUも低下。モンストを擁するmixiのデジタルエンターテインメント部門の売上高も16年頃から減収傾向にあり、モンスト自身も売上減少に苦しめられている。

 ただ、国内市場を俯瞰してみれば、比較的にモンストが高い売上を保持し続けられているのは事実だ。ゲームプロデューサーの岩崎啓眞氏は、mixiの運営の手腕とゲームシステムの操作性について次のように高く評価する。

「mixiは18年頃にモンストのユーザー離れが深刻化した際、1年ほど時間をかけてゲームそのものの立て直しを図りました。と同時に、離れたユーザーを呼び戻すカムバックキャンペーンをいくつか実施し、ゲームに復帰しやすい環境を整えたんです。モンストはシンプルな操作性で、かつほかのモバイルゲームに比べ、ガチャで生じるキャラクターの強さのインフレーションも起こりにくいという特徴があります。そのため、一度ゲームから離れたユーザーにも再びプレイしてもらいやすいのです。ある程度アクティブユーザーを増やし、現在までその方針を貫いているからこそ、モンストは安定的な収益をたたき出せているのでしょう」(岩崎氏)

 加えて、モンストはほかのモバイルゲームとは異なる収益構造となっており、それが功を奏してランキングトップの収益につながったという。

「実はモンストは、ユーザーひとりあたりが支払う課金額が、ほかのモバイルゲームに比べ少ないんです。ガチャシステムを採用するゲームは、一部のヘビーユーザーが大量に金額を投入する傾向にあり、結果としてそれが収益につながっています。一方、モンストでは、大量に課金せずとも強いキャラクターをゲットできるガチャシステムになっており、課金をするにしてもさほど多額をかけなくて済む。よほど難しいクエストに挑まない限りは、ゲームで勝つために大量に課金する必要がありません。ですからモンストでは、ユーザーひとりあたりの課金額は少ないけれども、多くのユーザーがお金を出しているおかげで収益が高く安定しているんです」(同)

 ゲームとしてのシンプルさやインフレのしにくさなどにより、モンストは気軽にプレイしやすいゲームとしての地位を確立できており、継続的にプレイする課金ユーザーを確保できているということのようだ。課金至上主義ではないゲームの仕様が好印象を与え、結果的に少額課金のユーザーを大量に生み出しているのだとしたら、一部のヘビーユーザーの大量課金に依存するゲームよりも、よっぽど健全なビジネスモデルといえるかもしれない。

国内市場はすでに飽和状態、プレイしてもらえるゲームの条件

 モンスト、ウマ娘、FGOと続く業界情勢だが、俯瞰してみると国内モバイルゲーム市場は「すでに成熟している」と岩崎氏。

「今の市場は、新規のゲームを売るのが難しい状況です。そもそもモバイルゲームというのは、ガチャやクエストで入手できるカードやユニットを集める蓄積型のものが大半を占めています。セールスランキング上位のモンスト、ウマ娘、FGO、パズドラ、原神はすべて蓄積型のゲームです。入手したカードやユニットは金額や時間を投資して得たものであり、ユーザーからすると“財産”のような認識となっているため、なかなか引退できない。引退は財産を手放すような行為になりますからね。

 また、モバイルゲームは同時進行でプレイできるのが、せいぜい3本ぐらいまでといわれています。しかも優先度が高い1、2本目ほど課金してもらい、3本目になるとほぼ無課金で遊ぶ傾向にあり、ゲーム会社はなんとか1本目の選択肢に入るべく奮闘しているのです。

 しかし、現在のモバイルゲームのタイトルには歴史が長いものも多く、アクティブユーザーもそちらに傾倒しているため、新しい作品はあまり注目されません。そういった背景があり、モンストやウマ娘のような気軽に引退できないゲームをプレイするユーザーからすると、ほかのゲームで同じ規模の投資をする余裕はないので、必然的に新しいゲームに課金する可能性は低くなるという構造になっているというわけです」(同)

 とはいえモンストが安泰というわけでもないらしい。現在の市場でトレンドとなっている人気ゲームも、油断ならない状況になるという。

「近年は、モバイル育成シミュレーションゲームが徐々に台頭していました。これはストーリー、シナリオで育てたキャラクターを、試合や戦闘に繰り出してプレイする、というゲームスタイルでして、『実況パワフルプロ野球』やウマ娘などがその筆頭です。

 タッチ操作でプレイできるRPGであるモンストやパズドラ、王道モバイルゲームRPGであるFGO、ハイグラフィックRPGで超大作である原神とは異なり、スマホをポチポチと操作するだけで簡単にやりこむことができる優れたゲームシステムとなっているため、人気を博しました。ちなみにウマ娘は21年にリリースされたばかりの新参ゲームなのですが、蓄積型とモバイル育成シミュレーションゲームという注目度の高い要素を2つ備えていたため、短期間でものすごい売上を叩きだしたのでしょう。

 ですが、モバイル育成シミュレーションゲームの欠点は、時間がかかりすぎること。漫画アプリや映画のサブスクリプションサービスなど、可処分時間に楽しめる娯楽は増えていますので、ゲームだけに時間を割くことができないという人も多いでしょう。モバイル育成シミュレーションゲームはもちろんですが、1回のプレイに時間がかかりすぎてしまうモバイルゲームは行き詰まりを見せていくと私は考えています」(同)

 モンストも高難易度クエストのプレイや強いキャラクターの育成をする場合には、時間がかかることもあるため、決して対岸の火事ではないということのようだ。

(取材・文=文月/A4studio、協力=岩崎啓眞/ゲームプロデューサー)

岩崎啓眞/ゲームプロデューサー、ゲームライター

岩崎啓眞/ゲームプロデューサー、ゲームライター

「天外魔境Ⅱ 卍MARU」「エメラルドドラゴン」「リンダキューブ」など、まずまずの名作ゲームを手がけてきたゲームプロデューサー。1994年からは「電撃PCエンジン」、「電撃PlayStation」、「電撃王」といった人気ゲーム雑誌でライターを務めてきた。
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Twitter:@snapwith

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