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巨大な資本力の中国ゲームメーカーが日本ゲーム市場で台頭…日本勢を駆逐?

文=佐藤勇馬、協力=岩崎啓眞/ゲームプロデューサー
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株式会社miHoYoのHPより

 日本のモバイルゲーム市場で中国系タイトルが台頭し、ネット上で「国内メーカーが駆逐されるのでは」と危惧する声が強まっている。今後、市場は資金力で勝る中国メーカーの独壇場になってしまうおそれはあるのか、ゲーム業界の関係者に見解を聞いた。

 モバイルゲームの調査データや分析環境などを提供するSensor Towerの発表によると、2023年上半期のモバイルゲーム収益ランキングでは、1位が『モンスターストライク』、2位が『ウマ娘 プリティーダービー』、3位が『Fate/Grand Order』、4位が『プロ野球スピリッツA』、5位が『パズル&ドラゴンズ』など、国内メーカーの定番作品が上位になったが、7位には韓国メーカーの開発で中国のテンセントゲームズが運営する『勝利の女神:NIKKE』、8位に中国の有力メーカー・miHoYoの『原神』が入った。

 さらに、収益成長ランキングではmiHoYoの『崩壊:スターレイル』が1位、先述の『勝利の女神:NIKKE』が2位で海外パブリッシャーがワンツーフィニッシュ。パブリッシャー別収益ランキングでは、7位にmiHoYo、9位にテンセントゲームズが入った。そのほかにも『アークナイツ』『アズールレーン』『崩壊3rd』『IdentityV 第五人格』『荒野行動』『リバース:1999』など、日本で人気の中国系タイトルが増えている。

 こうした状況を受けて、SNS上では予算規模の大きい中国系タイトルに国産メーカーが駆逐されるのではと危惧する声が続出し、以下のようなコメントが飛び交っている。

「2年前に『これから大陸から大資本を生かしたゲームがやってくる、もうおしまいだ』と業界人から聞いたけど、今年になってその答えがガンガン上陸してきている」

「国産の新規ソシャゲタイトルは大陸系に勝てなくなってきてる」

「中国メーカーは予算規模が大きいし、最近は日本ユーザー受けを学んで本気で進出してきてるからヤバイ」

政治的な問題に巻き込まれる中国のゲーム会社

 なぜここまで急に中国系パブリッシャーが日本市場で台頭してきたのか、日本進出を強めてきた意図はどこにあるのか。ゲームプロデューサーの岩崎啓眞氏はこう解説する。

「中国系のタイトルは急に台頭してきたわけではありません。例えば、『崩壊3rd』や『アズールレーン』は2017年のリリースです。それらの下敷きがあって、今のヒットにつながっているというのが正しい流れです。中国のゲーム会社は政治的な問題に巻き込まれて、海外進出をせざるを得ないという事情があります。中国国内でゲームをリリースするためには版号(ライセンス)と呼ばれる政府の許可が必要です。この版号の発行が18年から1年ほど、21年からやはり1年ほど意図的に中止されました。つまり、18年からの5年間のうち、2年はまともに中国国内でゲームが出せない状態だったのです。またいつ発行が止まるかわかりませんし、加えてゲームは麻薬のような扱いを受け、子どもに対するアプローチなどが厳しく制限されている状態です。会社の安定的な経営を考えると、こういう状況では国外にチャンスを求めざるを得ない、というのが実情です」(岩崎氏)

 Sensor Towerによると、日本のモバイルゲーム市場規模は世界3位。ダウンロードあたりの収益では世界1位とされ、アメリカ市場の約4倍となっており、中国メーカーにとって魅力的な進出先なのだろう。今後は中国のパブリッシャーに加えて、韓国のメーカーが台頭するとの指摘もある。

「すでに韓国産の人気タイトルは登場しています。例えば、現在大ヒット中の『ブルーアーカイブ -Blue Archive-』は韓国のゲームです。また、日本でも間隔を置いてヒットしている『リネージュ』シリーズも韓国のゲームです」(同)

中国国内のゲーム開発力は低下していく

 中国などの海外メーカーの攻勢によって、日本のパブリッシャーが駆逐されるのではと危惧する声がある。

「そうした心配はあまりないと考えていいでしょう。市場サイズは、かけられる予算にそのまま直結しますから『豪華さ』などでは太刀打ちできなくなる可能性はゼロではありませんが、日本のメーカーも中国メーカーと同じように欧米・東アジアなどの海外市場で戦っていることを考えると、言われるほどの心配はないと思います。また、先述した中国のゲームへの政策や制限によって、中国国内のゲーム開発力が低下していくのは火を見るより明らかで、そういう視点を持つと『中国資本ではあっても、形態は日本や欧米のようなゲームスタジオ』が増加していくと考えております」(同)

 現状、日本のモバイルゲーム収益ランキングの上位は国産タイトルが多いが、リリースから数年以上が経過したゲームが目立つ。そうした状況について「日本のメーカーは新規のヒットタイトルを生み出せなくなっているのでは」という意見もある。

「モバイルゲーミングの市場は成熟期を迎えており、かつモバイルゲームの大半はオンラインゲームです。オンラインゲームはいったん成功すると『年単位でユーザーが離れにくい』という、いわば囲い込みが起こります。そして日本は強く囲い込まれた市場になっています。ですから、そもそも新しい大ヒット作は簡単には生まれないと考えるべきで、新規のヒットタイトルを生み出せないわけではありません」(同)

(文=佐藤勇馬、協力=岩崎啓眞/ゲームプロデューサー)

岩崎啓眞/ゲームプロデューサー、ゲームライター

岩崎啓眞/ゲームプロデューサー、ゲームライター

「天外魔境Ⅱ 卍MARU」「エメラルドドラゴン」「リンダキューブ」など、まずまずの名作ゲームを手がけてきたゲームプロデューサー。1994年からは「電撃PCエンジン」、「電撃PlayStation」、「電撃王」といった人気ゲーム雑誌でライターを務めてきた。
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Twitter:@snapwith

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