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USJ、1泊100万円ツアーは妥当か…ディズニーRも超高額プラン拡充の理由

文=Business Journal編集部、協力=中島恵/明治大学兼任講師
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USJ(「Wikipedia」より/Rebirth10

 ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の1泊100万円の年末年始特別ツアー「NO LIMIT! カウントダウン 2024~最上級ラグジュアリープラン」が話題を呼んでいる。ほぼ毎日敢行されている約30~40万円(税込)の「ユニバーサル VIP エクスペリエンス・プライベート・ツアー」も発売後に即完売になるほどの人気ぶりだというが、こうした高額ツアーはどのような内容なのか。また、価格に見合う価値があると評価できるのか。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。

 2001年3月に開業したUSJは、初年度の来場者数が1000万人超える1102万9000人となり、幸先の良いスタートを切ったが、事故や不祥事などの影響で来場者は減少し、02年度は764万人にまで減った。04年には事実上の経営破綻に陥ったが、米国ユニバーサルから社長として送り込まれたグレン・ガンペル氏が再建を進め、07年には東京証券取引所マザーズ(当時)への上場を果たした(09年9月に上場廃止)。上場後も来場者数は伸び悩み一時は700万人台前半まで減少していたところ、10年に有力マーケターの森岡毅氏がユー・エス・ジェイに入社。家族連れ客の取り込みや集客の関西依存からの脱却を進め、14年7月には新エリア「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」を開業。以降は高い集客力を維持しており、2023年の来場者数は1600万人で世界のテーマパークのなかで3位になっている(米テーマエンターテインメント協会発表による)。

 19年には東京ディズニーリゾート(R)に先駆けて変動価格制(ダイナミック・プライシング)を導入し事実上の値上げを敢行。現在、1日入場券「1デイ・スタジオ・パス」は最低価格8600円、最高価格は1万900円となっており、東京ディズニーRと同水準だ。

安いとすら感じる外国人観光客もいる

 そんなUSJが現在力を入れているのがラグジュアリー感を押し出す高額ツアーだ。前述の年末年始ツアー(12月31日~25年1月1日)は4人1組で98万5000円と約100万円で、1組限定のところに34組の申し込みがあったという(10月11日付「BUSINESS INSIDER」記事より)。その内容は以下のとおり。

 ・所定の空港または駅まで専用車でお出迎え
 ・オフィシャルホテル「ザ パーク フロント ホテル アット ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」の最上階28階に位置するスイートルーム宿泊
 ・2日間の専属ツアー・ガイド付きパーク体験
 ・「スーパー・ニンテンドー・ワールド」の人気アトラクション「マリオカート ~クッパの挑戦状~」「ヨッシー・アドベンチャー」なども体験可能
 ・「ロンバーズ・ランディング」2階のバルコニーから「カウントダウン・モーメント」鑑賞
 ・レストラン個室での特別コース料理
 ・通常ゲストは入れない特別な会場でのパーティ
 ・ツアー参加者専用ラウンジの利用
 ・ツアー参加者限定オリジナルクレデンシャル&ネックストラップ、パーティグッズのプレゼント

 このほか、カウントダウンイベントのプライベートガイド付きのツアーとしては27万8500~32万8500円のものも用意されている。

 実はUSJでは年末年始に限らず、ほぼ毎日、こうした高額のプライベートガイド付きのツアーが敢行されている。「ユニバーサル VIP エクスペリエンス・プライベート・ツアー」と呼ばれるもので、1~4人の利用で約30~40万円。内容は以下のとおり。

 ・ツアー参加者だけの特別な入口から入場
 ・専任ガイドがゲストの要望に合わせて独自のパーク体験をカスタマイズ
 ・ツアー専用レストラン「Luminant ~VIP Private Lounge and Dining~」で限定メニューの食事
 ・「スーパー・ニンテンドー・ワールド」の人気アトラクション「マリオカート ~クッパの挑戦状~」「ヨッシー・アドベンチャー」なども体験可能
 ・「カーニバルゲーム体験」「フォーティセカンド・ストリート・スタジオ」「ライド・フォト」「フォト・オポチュニティ」から好きな特典を1つ選んで体験
 ・シーズン・イベントやショーを体験
 
 こうしたツアーも発売後すぐに完売するというが、テーマパーク経営に詳しい明治大学経営学部兼任講師の中島恵氏はいう。

「大みそかから元日にかけてというタイミングやカウントダウンイベントの体験、USJオフィシャルホテルのなかでもっとも高級なホテルのスイートルームへの宿泊という点を考慮すると、一人当たり税込みで25万円というのは妥当な金額といえます。

 USJも東京ディズニーRもコロナ禍の影響もあり、客数が減っても売上を確保できるよう客単価を上げる戦略をとっています。たとえば東京ディズニーRは2022年に確実に希望するアトラクションを体験でき1500〜2500円の『ディズニー・プレミアアクセス(DPA)』を導入し成功しています。以前にUSJの方にお聞きした話によれば、アトラクションの待ち時間を短縮できるエクスプレス・パスの購入者の大半は、泊りがけで来る関西圏以外の人やインバウンドだということですが、貴重な体験にはお金を惜しまない富裕層・プチ富裕層が増えているなか、高額な特別プランを用意して、そうしたお金を持っている層を取り込もうとしているのです」

 ホテル業界関係者はいう。

「年末年始の100万円ツアーに関していえば、USJオフィシャルホテル最上階のツイートルームに4人で宿泊でき、レストラン個室での食事や2日間の専属ガイド付きパーク体験もついていることを考えれば、高くはないといえます。特にUSJ好きにとっては、通常のゲストは入れない特別な会場でのパーティや専用ラウンジを利用できるというのも大きな魅力でしょうから、年末年始にUSJで家族とともに特別な体験ができるとなれば、これくらいの金額を払う人は一定数いるでしょう。

 また、毎日行われている30~40万円のガイド付きツアーは、特にインバウンドにとっては円安の影響もあり、4人で利用すれば、まったく高くは感じられないでしょう。レストランでの食事もついて英語などが話せるガイドがパーク内を案内してくれるとなれば、安いとすら感じる外国人観光客もいるでしょう」

東京ディズニーRにも高額ツアーが存在

 東京ディズニーRにも、こうした高額ツアーは存在する。詳細は公表されていないが、「プライベートVIPツアー」と呼ばれるもので、ディズニーリゾート内にある「東京ディズニーランドホテル」「ディズニーアンバサダーホテル」「東京ディズニーシー・ホテルミラコスタ」のスイートルーム、もしくは今年6月にオープンした「ファンタジースプリングスホテル」の高級客室グランドシャトーに宿泊した客だけが申し込めるサービスで、専属のガイドがディズニーランドもしくはディズニーシーの中をお客の希望に合わせて案内してくれる。価格は44万円、55万円、66万円の3コース(パークのチケット代は含まれていない)。このほか、東京ディズニーシー内の「ファンタジースプリングス」入場保証付きパークチケット「1デーパスポート:ファンタジースプリングス・マジック」が含まれる1人数万~30万円台の1泊2日プランなど、各種高額プランが日頃から用意されている。

「1人あたり1泊2日で10万円以上と聞くと高いように思えますが、入場のための『パークチケット』が1万円だとして、これに確実に希望するアトラクションを体験するための数千円の『ディズニー・プレミアアクセス(DPA)』が加わり、複数購入すればチケット代だけで1人2万円くらいになる。さらにディズニーホテルに宿泊すると1泊7万円以上かかる部屋が多いため、4人で20万円以上は普通にかかってくる。そう考えれば、数年に1度のご褒美としてプラス10~20万円出しても、キャラクターグリーティングやリザーブ席でのショー鑑賞、各種アトラクションをスムーズに体験できるといった、さまざまな特典がついているプランを選ぼうとなる人は一定数いるでしょう。特に熱心なディズニーファンにしてみれば、海外旅行に行くのと比較すれば高くはないと感じのではないでしょうか」(同)

(文=Business Journal編集部、協力=中島恵/明治大学兼任講師)

中島恵/明治大学経営学部兼任講師

中島恵/明治大学経営学部兼任講師

修士(経営学)(明治大学)
2005年明治大学大学院経営学研究科博士前期課程修了、2009年同博士後期課程単位取得満期退学、星稜女子短期大学(現・金沢星稜大学短期大学部)経営実務科専任講師、大阪観光大学観光学部専任講師などを経て2021年より現職。著書に『東京ディズニーリゾートの経営戦略(2013年)』『なぜ日本だけディズニーランドとUSJが「大」成功したのか?(2017年)』『テーマパーク産業論 改訂版 日本編(2022年)』など、いずれも三恵社。
中島 恵公式ブログ

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