リクルートが、「住み続けたい街」(自治体/駅)ランキング2024年首都圏版を発表し、その意外なランク順に驚きの声があがっている。「住みたい街」とは大きく異なることから、憧れる街と実際に住んでみた街では印象が大きくズレるのかもしれない。特に注目されているのが、吉祥寺や恵比寿、代官山といった「住みたい街ランキング」の常連の街が下位に沈んでいる点だ。これらの街は、なぜ評価が低いのか。また、これらのランキングには、どのような背景があるのだろうか。不動産の専門家の見解を交えて追ってみたい。
リクルートが10月、住民の実感調査による「SUUMO住み続けたい街」(自治体/駅)ランキング2024年首都圏版を発表した。同社は毎年、「住みたい街ランキング」を発表しているが、「住み続けたい街」は2022年に続いて2回目だ。「住みたい街」と「住み続けたい街」は顔ぶれが大きく異なる。
たとえば、住みたい街ランキングの1位は「横浜」で7年連続トップ。2位「大宮」、3位「吉祥寺」、4位「恵比寿」、5位「新宿」、6位「目黒」、7位「池袋」、8位「品川」と続く。一方、住み続けたい街ランキングの1位は「みなとみらい」で前回6位からジャンプアップ。以下、2位「馬車道」、3位「北参道」、4位「浜町」、5位「東銀座」、6位「三越前」、7位「鵠沼」、8位「湘南江の島」、9位「半蔵門」、10位「戸越公園」である。
住みたい街の横浜、大宮、吉祥寺、恵比寿は長らく常連で、多少の順位変動はあるものの、顔ぶれは大きく変わらない。ちなみに、横浜は全国版の住みたい街ランキングでも1位を取るなど、幅広く良い印象を持たれている街といえる。さらに、住み続けたい街ランキング1位のみなとみらいと2位の馬車道も横浜の中心部で、実際に住んでいる人たちからも高い評価を得ていることがわかる。
そんななか、住みたい街ランキング常連の吉祥寺は住み続けたい街ランキングで46位と低迷、吉祥寺も33位と芳しくない。オシャレの発信地ともいわれた代官山は15位と、かろうじて面目を保てる順位に位置する。
住みたい街と住み続けたい街、なぜ大きく異なる?
ではなぜ、住みたい街と住み続けたい街には、これほど大きな乖離があるのか。不動産コンサルタントに話を聞いた。
「まず、住みたい街はイメージ優先といえます。テレビなどのメディアに露出することが多ければ、“良さそうな街”という印象が広まり、住んでみたいと思う人が増える傾向にあります。また、ドラマや映画のロケ地に選ばれると、一気に人気が高まる傾向もあります。さらに、おしゃれな店舗やグルメ情報によっても好感度は上がり、住んでみたいと思わせる効果があります。その一方で、住み続けたい街は実際に住んでいる人の実感を問うものですから、その土地に住んでいない人が感じるイメージとは大きく異なるのは仕方ありません。さらに、住みたい街ランキングで上位に入る街は、総じて周辺の街よりも家賃相場が高くなる傾向にあり、コストパフォーマンスを考慮した場合に、住み続けたいとの評価にマイナスを与えるのかもしれません」
住み続けたい街ランキングも、まだ2回目で調査をしているのもリクルートだけであり、調査方法や調査対象、質問事項などによってもランキングは大きく変わってくる可能性もあるという。
「住みたい街ランキングに比べて住みたい街ランキングは、さまざまな不動産業者が異なる調査方法、調査対象で調査しているので、違った角度から比較することができます。たとえばリクルートはインターネットでアンケートを行い、回答者に1位=3点、2位=2点、3位=1点という持ち点で3つの街に投票してもらう形式です。大東建託の調査は、インターネットで設問に答えてもらう形式で、その人にとっての理想に近い街・駅を見つけ出していくといったスタイルといえます。LIFULLは『買って住みたい街』『借りて住みたい街』という分け方で、お客からの問い合わせの多さが基準になっています。
これらを見比べてみても、すでに街を絞り込んで探している人と、漠然としたイメージだけで回答している人によってつくられているランキングは、大きく異なることが容易にわかります。ほかにも、実際に住む意思を持って探している人なのか、なんとなく住んでみたいと憧れているだけなのかによっても、結果は変わってくるでしょう。どのような背景で調査されたランキングなのかを知ることで、その情報の使い方も違ってきます」
ランキングがつくられた背景を知ると、それぞれのデータの持つ意味合いが見えてくる。吉祥寺や恵比寿といった街が凋落したわけではなく、実際に住んでいる人からの評価よりもこれらの街に対する憧れを持つ人が多いため、住みたい街ランキングで過大に持ち上げられているという結果なのかもしれない。
(文=Business Journal編集部)