埼玉県川口市が、「住みたくない街」ランキングでワースト1位になったと話題になっている。わずか数年前には「本当に住みやすい街」ランキングで2年連続1位だったにもかかわらず、なぜ急転落したのか。地元の不動産関係者とともに理由をさぐった。
ネット不動産「イエプラ」が8月に発表した埼玉の「住みたくない街ランキング」で、川口市がワースト1位だった。その理由として、「埼玉県内で最も治安が悪い」「飲み屋や風俗店が多い」「外国人の数が県内で1番多い」の3つを挙げている。特に、県内で最も犯罪件数が多く、治安の悪いイメージが広がっていることが、最大の理由とみられる。
また、「イエプラ」を運営しているコレックが、別に運営しているサイト「引越しまとめ 不動産屋ベストセレクト」が10月、埼玉県民に聞いたアンケートを基に作成した「埼玉県住みたくない街ランキング」において、川口はさいたま市大宮区に次いで2位だった。
だが、川口は、2019年から2022年まで「本当に住みやすい街大賞」で4年連続トップ10にランクイン、さらに2020年と2021年は2年連続で1位を獲得。このランキングは住宅ローン専門金融機関アルヒ社が選定しており、特定の不動産会社や地域の利害には関わらない中立的な立場で、客観的に評価されているといわれる。
その「住みやすい街」が、「住みたくない街」となった理由はどこにあるのか。しかも、今回たまたま「住みたくない街」に選ばれたわけではなさそうだ。実際に、「SUUMO」「大東建託」「LIFULL HOME’S」など複数の不動産会社が発表している「住みたい街」「住みやすい街」ランキングで、川口は軒並みランク外になっている。つまり、川口の評価が急落しているのは間違いないといえる。
そもそも「住みやすい街」なのか
地元の不動産関係者は、川口の治安が急に悪化したわけではなく、そもそも「住みやすい街」で1位になったこと自体に疑問を呈する。
「川口は確かに県内で犯罪件数が最多ですが、全国平均より少し多い程度で、人口比で見てもものすごく犯罪が多いとはいえません。さらに、『住みやすい街ランキング』で2年連続1位になった2020年、2021年より急増したというわけでもありません。
ここ数年、クルド人による犯罪が増えている、とメディアで報じられることが多いので、悪いイメージが先行しているのが大きな理由だと思います。確かにクルド人は増え続けており、彼らによる犯罪や迷惑行為も増えているのですが、メディアが悪意のある報道で過大にクルド人による犯罪を取り上げているように見えます。
むしろ、人口が急増しているのは中国人です。川口は人口の6.54%が外国人(2023年1月時点)で約4万人に上り、全国の自治体で1位の人数です。そのうち中国人が最多で、外国人全体の過半数を占めます。しかも、市の中心部である川口駅と西川口駅の駅前はまるで中華街のごとく中国人の店が並んでいます。中国人が悪いというわけではないのですが、喧嘩が頻発したり、夜遅くまで大声を出す人がいる、など近隣に住んでいる人から苦情が多く出ています。
犯罪とまではいかなくとも、文化の違いなどから外国人が増えることで、住みにくくなったと感じる方は少なくないでしょう。実際に、ゴミ問題や騒音問題などでのトラブルはよく耳にします。
そのため、川口市の物件について問い合わせがあった場合に、住みやすい街です、とは言いにくいのが正直なところです」
では、そもそもなぜ川口は「住みやすい街」と評価されていたのか。
「たとえば川口駅は新宿駅まで20分強の距離にありながら、駅周辺から少し離れたら地価は都内に比べて数割下がります。また、ララガーデン、アリオ川口、キュポ・ラなど、大型の商業施設があり、買い物にも困りません。公園も多く、子育て環境も充実しています。さらに、2023年に駅前の再開発が完了し、ショッピングモールや図書館などが整備されたことも評価されていました。
アルヒの「本当に住みやすい街大賞」の審査基準は、『住環境』『交通の利便性』『教育・文化環境』『発展性』『コストパフォーマンス』の5つの項目です。このなかで川口は『発展性』と『コストパフォーマンス』の部分が高く評価されていたので、再開発計画による発展性に期待を込めつつ、都心から近い割に安い地価、ということで選ばれたといえます」
利便性や将来的な発展可能性、コストパフォーマンスなどを考えると、川口は「住みやすい街」だが、住環境や治安などを考慮すると、居心地が良いとはいえない、というのが総合的な評価なのだろうか。
(文=Business Journal編集部)