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「吉祥寺が1位陥落、理由は人気低迷」は嘘?住みたい街ランキングの誤読

文=A4studio
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吉祥寺駅前(「gettyimages」より)
吉祥寺駅前(「gettyimages」より)

 吉祥寺人気は終わりを迎えつつあるのだろうか? 不動産情報サイト「SUUMO」の「住みたい街ランキング 首都圏版」において、かつては1位の常連だった吉祥寺だが、現在は5年連続で横浜が首位を獲得しており、吉祥寺はもう5年もトップから遠ざかっているのだ。その背景には「若者人気の低下」などが囁かれているが、吉祥寺の街としての求心力は本当に下がってしまっているのだろうか。

 そこで今回は、不動産事業プロデューサーでオラガ総研代表の牧野知弘氏に話を聞き、「住みたい街ランキング」の実態や吉祥寺の求心力などについて解説してもらった。

イメージ先行で現実とは乖離しているケースもある

 まず、SUUMOの「住みたい街ランキング 首都圏版」は、どのような集計方法をとっているのか。

「このランキングはインターネットによるアンケート調査の結果を反映したもので、『住みたい街』と銘打たれていますが、実際は“住みたい駅”のランキングとなっています。対象となる駅は新幹線の単独駅である『本庄早稲田駅』を除く、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県にある駅。またアンケート対象者は東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県在住の20歳から49歳の男女となっています」(牧野氏)

 このランキングが「街の住みやすさやメリットで選ばれたランキング」ではない可能性に留意する必要があるという。

「5年連続で1位を獲得している横浜駅が顕著でしょう。横浜駅の周辺は、多くの人がイメージする華やかで歴史を感じる街としての横浜とは印象が異なるエリアです。多くの人がパッと思い浮かべる華やかな横浜は、みなとみらい駅周辺だと思うのですが、このランキングで横浜駅と答えた人のなかには、みなとみらい駅周辺をイメージしつつも『横浜』という単語に釣られて横浜駅と回答した方も多いのではないでしょうか。

 また、SUUMOはアンケートを集める際に、今後住んでみたいと思う街(駅)はどこですか、という聞き方をしているため、結果としてあがってくる街は1位の横浜駅のように、土地名の印象や、住めたらいいなという理想が投影されたものになりがちです。ですので、実際にその街に住むことを想定しているわけではなく、その駅周辺の実情を知らずに投票している人も多くいるかもしれません。そのため、家賃の安さや街の地域性などを細かく見たうえで出される“その街の住みやすさ・評価”とは異なるものとなっているでしょう」(同)

確かに変化は重ねているが「人気低迷」とはいえない

 では、吉祥寺駅が「住みたい街」として長年1位に選ばれてきた要因は何か。

吉祥寺駅は1971年に駅前に吉祥寺大通りが誕生し、74年に近鉄百貨店がオープンしたことなどで若者が多く足を運ぶようになりました。それに伴って風俗街なども増加。その後、風俗店の数は激減しましたが、それでもアングラな香りはかなり残りました。その清濁併せ呑む街の雰囲気を求めて、おしゃれで独創的なセレクトショップなどが増えていくようになり、80年代から90年代にかけて、雑誌などのメディアがこぞって吉祥寺の魅力を取り上げたことで、街のイメージが高まっていったのでしょう」(同)

 そんな吉祥寺駅がもう5年も首位獲得を逃しているのは、やはり現在の若者たちからの人気に陰りが出ているからなのだろうか。

「私は吉祥寺人気が下がったとは考えておらず、正直なところ統計上の誤差としか思っていません。ここ数年で吉祥寺から急速に若者が離れていくような、何らかの原因があったということが考えにくいからです。確かにSUUMOのランキングではここ5年、1位の座を奪われていますが、実は今年の最新ランキングで吉祥寺駅は2018年以降で初の2位となっており、首位ではないものの人気は健在。また東洋経済新報社が発表した今年の『住みよさランキング』の総合1位は、吉祥寺のある『東京都武蔵野市』となっていますからね」(同)

 だが、吉祥寺にいくつか変化が起きていることは事実だという。

「吉祥寺、武蔵野市に昔から住んでいる住民の高齢化が顕著になっているという事実はあります。ただこれが若者人気低迷の要因かというと、いまいち論拠に欠ける印象です。また、個人商店が減ってしまったことで吉祥寺らしいユニークなお店が減ってきたのが原因だといわれることもありますが、個人商店の減少は主にコロナ禍によるものと考えられます。ですのでほかの街も同様に減少傾向にあり、吉祥寺だけに限った話ではないため、吉祥寺だけを取り立てて論じるのはフェアではないでしょう」(同)

 吉祥寺の人気低迷を唱える際の根拠として、吉祥寺が住みたい街1位として話題になり続けたことで、地価が上がってしまったことが一因とする向きもある。だが、牧野氏はこれにも「確かに地価は上がってきていますが、これは吉祥寺が住みたい街1位として話題になり続けたからではなく、東京全体の地価が上がっているからです」と論拠として否定的だ。

東京全体の人気が相対的に下がってきている?

 吉祥寺人気が落ちているわけではないということだが、牧野氏いわく「東京全体の人気という点で見ると大きな変化が起きている」のだそうだ。

「約1400万人を擁する東京都の人口はいまだ圧倒的に多いですが、近年は隣接する千葉県や埼玉県に居を構える人が増加しています。もちろんもともと人気の高かった神奈川県も増加傾向でしょう。これは人口の多い都心でコロナ禍の影響をもろに受けることを懸念した人が増えたからであり、同時にリモートワーク文化の急速な普及で、職場に出向く頻度が激減したからだと考えられます。つまり隣接する3県の人気が高まったことで、相対的に東京都の人気にやや陰りが出てきたように感じます」(同)

 吉祥寺については、これからの変化に注視していく必要があるという。

「吉祥寺の住民の今後に目を向けるべきでしょう。というのも吉祥寺の住民は昔から、『街のスタイルを維持すること』に強いこだわりを持っていたこともあり、これまでデベロッパーなどが大々的に街の変革を実行しづらい街だったのです。けれど、そうした住民たちが高齢化しつつありますので、声を上げる住人が減っていけば、将来的に街のスタイルがガラリと変わる可能性もあります。これからも吉祥寺が住みたい街と思われ続けるかどうかは、そういった変化が起こった場合の方向性次第ということになるでしょうね」(同)

 吉祥寺の人気が低迷していると論じるのは早計なのかもしれない。だが、コロナ禍や止まらない少子高齢化の影響もあり、これからも“住みたい街”であり続けられるかどうかは当然ながら不確かだ。吉祥寺という街の未来に注視していきたい。

A4studio

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エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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