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失敗とまで言われた千葉ニュータウン、評価大逆転で「住みやすさ」急上昇の理由

文=長井雄一朗/ライター
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千葉ニュータウン中央駅周辺の高層ビル群(「Wikipedia」より)
千葉ニュータウン中央駅周辺の高層ビル群(「Wikipedia」より)

 大東建託は首都圏に住む20歳以上の男女を対象に実施した居住満足度調査の結果を集計し、「いい部屋ネット の住みここちランキング2022<首都圏版>」と「いい部屋ネット 住みたい街ランキング2022<首都圏版>」などを発表した。

「住みここち(駅)ランキング」では、約20万7000名を対象に調査。1位の「みなとみらい(みなとみらい線)」と2位の「築地・新富町A(東京メトロ日比谷線)」は2年連続で、3位は昨年5位から「表参道(東京メトロ銀座線)」が上がった。「住みここち(自治体)ランキング」では1位の「中央区」、2位の「文京区」が2年連続で、3位は昨年4位の「目黒区」となっている。

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出典:「いい部屋ネット 街の住みここちランキング2022<首都圏版>」

「住みたい街(駅)ランキング」では、約5万3000名を対象に調査。1位の「吉祥寺(JR中央線)」と2位の「横浜(JR東海道本線)」は2年連続で、3位は昨年4位の「みなとみらい」であった。「住みたい街(自治体)ランキング」では、1位の「世田谷区」と2位の「港区」は昨年の1位2位が逆転、3位は昨年と同じく「武蔵野市」がランクインした。

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出典:「いい部屋ネット 住みたい街ランキング2022<首都圏版>」

 いずれも上位に大きな変動はないが、詳細を見ると、一部の街には変化が見て取れる。5月18日には、大東建託賃貸未来研究所長・AI DXラボ所長の宗健氏による記者会見が行われた。

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大東建託賃貸未来研究所長・AI DXラボ所長の宗健氏

六本木一丁目、代官山、天王洲アイルが評価上昇

 会見で、みなとみらい駅など「住みここち」の評点が高い駅について、宗氏は以下のように説明した。

「ここ4年間で、上位にランクインした駅に大きな変化はありません。共通している点は、物価・家賃などの経済的側面よりも、生活の質を向上させ、便利な場所で暮らしたいという人々の思考が結果として表れているということです。賃貸物件だけでなく、さまざまな調査でも高品質優先で、より自分に合ったものを選択していくという傾向が世の中全体にあり、それが『住みここちランキング』にも表れたように思います。

 1970年代と比較して、日本の豊かさの質が変わってきました。国土交通省などの調査によると、家計に占める家賃の比率は上昇傾向にあります。これについて、社会福祉系の視点からは、家賃が上がっているのだから住みづらくなっているという指摘もあるのですが、クルマの所有率が下がっているのを見ると、人々は住まいにお金をかけることで、より快適な住まいを求めているように感じます」

 また、「街の住みここちランキング2022<首都圏版>」では、「六本木一丁目」(8位/東京メトロ南北線)、代官山(13位/東急東横線)、天王洲アイル(19位/りんかい線)が順位を伸ばした。これについて筆者が質問すると、宗氏は以下のように答えた。

「六本木一丁目は名前に反して、神谷町方面に行くと高級住宅街やマンション街が広がっているため、従来から評価が高く、代官山も同様です。やや意外だったのは天王洲アイルですが、マンションが多く、羽田空港への交通利便性も高いため、昔はJALの本社もありました」

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出典:「いい部屋ネット 街の住みここち/住みたい街ランキング2022<千葉県版>」

「住みここち(駅)ランキング2022<千葉県版>」では「印西牧の原」(1位)、「千葉ニュータウン中央」(5位)と、いずれも北総線の駅が上位にランクインした。かつて千葉ニュータウンは失敗と評する声もあったが、この結果の意外性について聞くと、宗氏は以下のように語った。

「北総線は運賃が高いことで知られています。千葉ニュータウンは1990年代に分譲されたニュータウンで、比較的手頃な価格だったため、当時の若いビジネスパーソンが多く購入しました。その方々が今は50代後半から60代前半になり、年齢につれて社会的地位も高くなったものと思われます。また、もともと社会的地位の高い購入者が多かった可能性も高く、その方々がそのまま住み続けているという住民の特性が、千葉ニュータウンの評価につながっています。

 そういう意味では、千葉ニュータウンは神奈川県横浜市都筑区を中心とする『港北ニュータウン』と住民属性が似ています。いずれも、都心に通勤するホワイトカラーの方々が多く住んでいる地域です。ちなみに、『街の住みここちランキング2022<神奈川県版>』では、横浜市都筑区が自治体のトップです。

 また、今回は前調査にあった『イメージ』という項目を削除し、新たに『防災』を設けました。従来よりも、地震や台風など自然災害に強い地域への関心が高まっています。千葉ニュータウンのエリアである『印西牧の原』『印旛日本医大』(成田スカイアクセス線)や『千葉ニュータウン中央』は津波のリスクが低い地域なので、防災面での評価が高くなっていることは注目点です。調査開始以来の4年間で大きく変わった点は、災害に対する意識といえます」

※後編へ続く

(文=長井雄一朗/ライター)

長井雄一朗/ライター

長井雄一朗/ライター

建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス関係で執筆中。

Twitter:@asianotabito

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