大東建託は首都圏に住む20歳以上の男女を対象に実施した居住満足度調査の結果を集計し、「いい部屋ネット 街の住みここちランキング2022<首都圏版>」と「いい部屋ネット 住みたい街ランキング2022<首都圏版>」などを発表した。
「住みここち(駅)ランキング」では、約20万7000名を対象に調査。1位の「みなとみらい(みなとみらい線)」と2位の「築地・新富町A(東京メトロ日比谷線)」は2年連続で、3位は昨年5位から「表参道(東京メトロ銀座線)」が上がった。「住みここち(自治体)ランキング」では1位の「中央区」、2位の「文京区」が2年連続で、3位は昨年4位の「目黒区」となっている。
「住みたい街(駅)ランキング」では、約5万3000名を対象に調査。1位の「吉祥寺(JR中央線)」と2位の「横浜(JR東海道本線)」は2年連続で、3位は昨年4位の「みなとみらい」であった。「住みたい街(自治体)ランキング」では、1位の「世田谷区」と2位の「港区」は昨年の1位2位が逆転、3位は昨年と同じく「武蔵野市」がランクインした。
いずれも上位に大きな変動はないが、詳細を見ると、一部の街には変化が見て取れる。5月18日には、大東建託賃貸未来研究所長・AI DXラボ所長の宗健氏による記者会見が行われた。
浦和vs大宮論争に決着か?
埼玉県版の「住みここち(駅)ランキング」と「住みたい街(駅)ランキング」では、いずれも「浦和(JR京浜東北線)」が1位となり、「住みここち(自治体)ランキング」と「住みたい街(自治体)ランキング」でも「さいたま市浦和区」が1位になっている。
一方で、さいたま市は2031年度をめどに市役所を現在の浦和区から大宮区のさいたま新都心に移転する予定で、今後は大宮区の再開発が活性化することも予想される。それらの影響について聞くと、宗氏は以下のように回答した。
「住みここちは住んでいる方の評価なので、住民が大きく入れ替わったり街が大きく変わったりすることで評価の変動につながります。一方で、住民の評価とは別に、外部からどれだけの方が遊びに来てくれるかについては、短期間で大きな変化が想定されます。一例として武蔵小杉やみなとみらいが挙げられますが、タワーマンションが一気に供給されると街の評価も変わります。そういう意味では、浦和と大宮の評価の変化は、もう少し時間がかかると予想されます。
埼玉県版の『住みここち(駅)ランキング』では『さいたま新都心(JR京浜東北線)』が2位になっていますが、ここも開発されてからしばらく経っています。近隣の駅も含めて、マンションや商業施設が時間をかけて整備された結果です」
では、「住みここち」で上位にランクインする街や自治体は、将来的に不動産価格が上昇する可能性はあるのだろうか。筆者の質問に、宗氏は以下のように回答した。
「分析のテーマとして、今年の調査から開始したところです。将来的にはわかりませんが、現段階では『住みここち』の良さと地価は一定の相関関係があるのではないかとみています。人口が増える街や自治体の地価は上がる傾向にあるといえます」
実は「住みたい街(駅)ランキング」では「特にない」という回答が突出して多いが、これについて、会見の中で宗氏は以下のように語った。
「多くの『住みたい街ランキング』では、どこかの駅を必ず選ばせる方式になっており、『特にない』が選択できないことが多いため、なんとなく有名な駅を選んでしまうケースも多いのです。一方、本調査では『特にない』を選択肢に入れています。直感的に回答してもらう方が、より実態に即した結果となるからです。今回、『特にない』と『今住んでいる街』が突出して多いのは、コロナ禍でテレワークが普及し、家族と暮らす時間が長くなったことで、今まで行かなかった近所の店などに行くようになったことなどが背景にあると思います。
他社の以前の『住みたい街ランキング』では『自由が丘』が上位にきていましたが、今はそうではありません。逆に、10年前は『横浜』は上位にランクインしていませんでしたが、ここ10年で順位を上げています。これは、社会の中で街に対する見方が変化した表れだとみられます。そうした『住みたい街ランキング』は、本当に住みたいというよりも、社会が街に対してどのような評価を下しているのか、あるいはどういう街が社会に望まれているのかのコミュニケーターとして見た方がいいと考えます」
(文=長井雄一朗/ライター)