今回の業務提携の拡大は、マツダの低燃費エンジンに注目したトヨタから持ちかけたとみられている。販売台数世界トップ、燃料電池車やハイブリッドカーなどの環境自動車でも先行しているとされるトヨタ。独自の環境技術によって「『山椒は小粒でもピリリと辛い』を体現している」(業界関係者)といわれるマツダの技術力を手中に収め、世界トップの座確保に向けて漏れのない体制を構築する。
「持続的成長のエンジンとなる商品と人材育成双方に、大きな影響を与えてくれると期待している」(豊田章男トヨタ社長)
トヨタとマツダは5月13日、両社の経営資源の活用や商品・技術の補完など、新しい協力関係を構築することで基本合意したと発表した。提携を拡大する内容は、両社で組織する検討委員会が今後、環境技術や先進安全技術などの分野を中心に詰めていく方針で、現時点では具体的なものは何も決まっていない。
変節した関係
両社はこれまで、トヨタがマツダを支援するかたちで提携関係にあった。トヨタは得意分野であるハイブリッドシステムをマツダに技術供与し、マツダ車のハイブリッドモデルのラインナップを支援した。また、マツダのメキシコ工場でトヨタ車を受託生産することでも合意している。
マツダは、2014年初頭に稼働したメキシコ工場からブラジルに輸出する計画だったが、ブラジル政府がメキシコからの自動車輸入を制限、目算が狂い困っていたところに手を差し伸べたのがトヨタで、トヨタ車のOEMによりマツダのメキシコ工場の稼働率アップを支援するものだった。
しかし、こうした提携関係はマツダの「ものづくり革新」によって徐々に変節する。マツダはフォード・モーターとの提携が事実上解消されてから、「ものづくり革新」として自動車の設計や開発体制を一新してきた。これによって世に出てきたのが「新世代商品群」と呼ぶ「CX-5」以降の新型車。さらに、「スカイアクティブ」と呼ぶ独自の環境技術に開発資源を集中し、多くの自動車メーカーがハイブリッドカーや電気自動車などさまざまな次世代環境技術を開発する中で、マツダは電気系統による動力補助装置を切り捨ててきた。ガソリンエンジンとディーゼルエンジンそのものを低燃費化する技術開発に特化し、先進的な低燃費エンジンの開発に成功したのだ。これら低燃費エンジンを搭載したモデルは、先進的なデザインと相まって市場から高く評価され、マツダ車の販売はグローバルで好調に推移している。