年収百万円台…食えない弁護士急増 借金&高額費用かけ超難関試験合格も仕事なし
イソ弁、ノキ弁、タク弁、さらにはケー弁といった言葉をご存じだろうか。司法試験合格後、弁護士事務所に就職できた新人はイソ弁(居候弁護士)と呼ばれ、給料をもらいながらキャリアを積むことができる。昨今、このイソ弁の労働条件はどの事務所でも悪化していると聞くが、まだ固定収入があるだけ恵まれているほうなのだ。
固定給はなく、ボスとなる弁護士(ボス弁)の事務所スペースを借りて開業し、おこぼれ仕事にあずかる弁護士がノキ弁(軒先弁護士)で、軒先を貸してくれる事務所すら見つからない弁護士はやむを得ず自宅で開業することになり、タク弁(自宅弁護士)と呼ばれる。さらには、その事務所を借りるお金すらない弁護士は、携帯電話だけで仕事をするケー弁(携帯弁護士)となるわけだ。弁護士業界も格差社会なのである。
実際、弁護士の収入分布は広がりを見せており、平均値が高いのは一部の超高額収入者の存在によって押し上げられているからと見る向きがある。
国税庁の12年度の調査によると、年収100~150万円の弁護士は585人、150~200万円が594人、200~250万円が651人、250~300万円が708人、300~400万円が1619人という具合に、サラリーマンの平均年収を下回る水準の弁護士も非常に多いことがわかる。また、所得が1000万円以上だった弁護士は5年前から15%減少。逆に200~600万円の人が20%ほど増加しているのだ。
収入は減り、支出は増える一方
弁護士は、なるまでにも、なった後にもお金がかかる。まず、法科大学院の平均的な初年度学費は100~140万円。しかし、そこでは司法試験の要である論文試験対策は行われない。「予備校的だから」という理由で、法科大学院で教えることはご法度とされているためだ。したがって、論文対策として別途予備校に通う人もいる。大手法曹予備校の授業料もまた、年間100万円を超える高額なものだ。
しかも、司法試験合格者が受ける司法修習の期間に支給されていた毎月20万円の給与が11年以降はなくなり、無給状態で1年間すごさなければならなくなった。法科大学院卒業までの多額の授業料を借金や貸付奨学金などでまかなっている人も多く、その費用返済と相まって、司法修習生の7割が経済的な不安を抱えているという調査結果もある。
また弁護士登録後は、所属する地方の弁護士会へ会費を毎月支払わなければならない。金額は地域によって異なるが、年額で50~100万円といわれており、いずれにしても高額である。
難関試験を突破するために多くの時間とお金を費やしたにもかかわらず、仕事は減り収入は安定せず、逆に出費はかさむ一方。そのような状態では、さらなる出費を要する営業活動にいそしむこともできず、経験や人脈がないまま仕事を進めていかざるを得ない。必然的に、弁護士の質の低下という事象になって現れることになる。
司法制度の改革は、国民生活の向上に資することを目的としていたはずだが、それが実現できているかは疑問である。
(文=新田 龍/株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト)