分社化とカンパニー制が企業を滅ぼす?ソニー、ウォークマンがiPodに敗北した根本要因
事業の分社化が業績不振企業の常套手段になっている。
ソニーは、2月18日の中期経営方針説明会において、すべての事業を分社化する方針を明らかにした。2000億円を超える赤字によって存続すら危ぶまれるシャープも、5月14日の決算発表の場で、3500人規模の国内リストラと並んで事業部制からカンパニー制へ移行することを発表した。
本質は管理単位の細分化と利益責任の明確化
各社が口をそろえて説明する分社化の効果は「意思決定の迅速化」だ。しかし、これには少々違和感がある。意思決定とは腹をくくることだ。それは組織形態の問題というよりも、個々人の“本気さ度合い”の問題だ。パスばかり回して誰もシュートを打たない一頃のサッカー日本代表のような組織は、誰もが「決めるのは自分じゃない」と思っている。そういう組織は、結局のところ、迅速な意思決定などできない。
経営管理的に考えれば、カンパニー制や分社化などの本質は、管理単位の細分化と利益責任の明確化にある。それは事業部制やアメーバ経営にもいえる。その中で分社化は、法的実態として管理単位を分けるという点で、その最も厳格な形態といえる。
それによって期待できる効果は、確実に利益を出すことだ。まず、管理単位の細分化によって、利益改善の具体的なイメージが湧きやすくなる。全社の利益を改善しろといわれても雲をつかむような話で、どこから手を付けていいか見当もつかないだろうが、それが一個人としてイメージができるサイズにまで細分化されていれば、何をやったらいいのか具体的なイメージが湧きやすくなる。
そして、その管理単位ごとに厳格な独立採算制を取れば、各管理単位は必死になって利益を出そうとする。その結果が個人の評価や進退に結び付いていればなおさらだ。黒字の足し算は必ず黒字になるので、利益を確実に出すためにはよく効く処方箋なのだ。
対照的なアップル
しかし、このような分社化は、長期的な成長という観点からすると必ずしも望ましいとはいえない。特に、事業間のシナジーによって新たな価値が生まれるような業種・業態の場合は注意が必要だ。
例えば、ソニーのウォークマンがアップルのiPodにあっという間に市場を奪われたのも、ソニーが事業ごとに厳格な独立採算制を取っていることが一因だと筆者はみている。