東芝幹部「ひどすぎる」、最悪見通し下回るテレビ販売の実態
●異常事態の売上高激減、1~9月で7割マイナス
電子情報技術産業協会(JEITA)がまとめた民生用電子機器国内出荷統計によると、1~9月の累計販売台数は前年同期比71.5%減の469万台。10~12月期が仮に前年と同数で推移しても、804万台にとどまる。メーカー関係者からは「700万台も割りかねない」との声もあがる。
年初段階で家電量販店関係者は「最悪のシナリオで900万台」と語っていた。調査会社の多くは控えめに見ても1000万台規模と予測していたことを考えれば、これは明らかに異常事態といえる。
●二大特需先食いで、もう何もナシ
想定外の市場の冷え込みの要因は、昨年3月のエコポイント制度の終了と同年7月の地上デジタル放送への完全移行という「二大特需」の反動に尽きる。家電業界に詳しいアナリストは「二大特需が、想像していた以上に需要を先食いしてしまった。4年分は食ったのでは」と指摘する。
実際、特需の大きさは出荷台数からも明らかだ。08年までの数年のテレビの国内出荷台数は800万台前後で推移して、09年に1362万台、10年に過去最高の2519万台を記録した。11年も7月までは前年を上回る勢いで推移したが、8月以降急失速した。11年は、薄型テレビの出荷統計を開始して以来初のマイナス成長となった。
●売り場構成変更もやむなし、販売店はスマホ販売メインへ
急縮小する市場に戸惑うのが関係者。家電量販店の従業員はため息をつく。
「テレビは売り場の顔。販売スペースも大きいので、ここまで売れないと売り場構成を考え直さないといけない。各社、テレビ売り場を縮小してスマホの販売にシフトしている。利益率の良いアクセサリーの品揃えを増やすなどしていますが、夢がないですよね」
当然、販売店以上に問題が深刻なのはメーカーである。テレビ事業は自社での生産を縮小するなど構造改革を進めるが、海外市場でも苦戦、頼みの国内市場が急減しては体力が続かない。東芝幹部は「反動減を踏まえても予想以上に販売が落ち込んでいる。ひどすぎる」と漏らす。同社の13年3月期の世界全体でのテレビ販売台数は、国内不振が打撃となり、期初予想の1600万台より2割程度落ち込む見通し。今期の必達目標に掲げたテレビ事業の黒字化は先送りになりそうだ。
ソニーの世界販売はすでに2度、テレビの販売台数見通しを修正しており、1450万台の予想。欧州や中国での減速に加え、国内不振が響いたのは明らかだ。
●3D対応もネット動画対応も撃沈
販売量がさばけない中、各社は高付加価値化路線に活路を見いだそうとするが、消費者の反応は鈍い。9月の3D対応テレビの販売は前年同月比23.9%減の6万5000台と薄型テレビ全体に比べれば健闘するが、全体を下支えするには至らない。インターネット動画対応は、同67.3%減の19万8000台にとどまる。