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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

大手居酒屋チェーンがヒドすぎる!料理遅い&冷たい、怒り覚える店員…組織巨大化の代償

文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授

 しかしながら、飲食業小売業では状況がまったく異なります。例えば、福岡県に消費者が驚愕するほどの大きく魅力的な店をつくったとしても、東京から頻繁に来店してくれるかといえば、通常そうはならないはずです。店には必ず地理的な商圏の限界が存在し、適正な購買費用の範囲内でしか消費者は行動しないからです。確かに店を大きくしていけば、それにつれ客数は増加するでしょうが、どこかのポイントで必ず売り場面積当たりの客数は低下します。つまり規模の不経済という状態に陥ってしまうわけです。

 こうした業界において規模の経済を実現する策がチェーンオペレーションです。店舗を大きくするのではなく、数多く出店することにより、全体として規模の経済を獲得しようという考え方です。

 では、具体的にどのようなポイントで規模の経済が働くのでしょうか。まず、店舗の外観や内装などのデザインは統一されるため、設計料やデザイン料が大幅に低下します。情報システムの構築・導入費用も一店舗当たりに換算すると劇的に低下するでしょう。従業員を教育するための管理費、広告宣伝費などにもプラスの影響を与えるはずです。また全体でまとめて原料や商品を購入すれば、仕入先に対するパワーも強まります。さらに、全国にあるということは消費者に対しても大きな信用を与えます。

急激な魅力の低下

 ここで、話題を大手居酒屋チェーンに戻しましょう。いろいろな大手居酒屋チェーンで「ひどいなあ」と感じることが多発し、あまり行かなくなりました。筆者も年を取り、店のターゲットに合わなくなったのかと思いきや、学生からも「大手チェーンは嫌だ」という声を結構聞くようになり、案外、多くの人がそう感じ始めているのかもしれません。

 具体的な筆者の不満は、例えば大手居酒屋チェーンAに関しては、まずメニューを見ても頼みたいものがありません。もちろん、個人の好みの問題でもあろうかと思いますが、それ以前に、手間のかからないメニューのオンパレード、刺身など傷みやすい商品のバリエーションは最小限といった印象です。つまり、「店にとって都合がよい“売り手志向100%”のメニューです。どうぞ召し上がれ」と言われているように強く感じてしまうわけです。ひいき目に見ても「客にうまいものを食べさせたい」という気持ちは微塵も感じられません。食べ放題や飲み放題なら安く抑えられるとはいえ、単品で頼めばあまりお得感はありません。

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

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