孫正義は、平成の松永安左エ門になれるか
現代人は、電力会社の地域独占が当たり前のように思っているが、戦前はそうではなかった。もともと、電力会社は何百とあり、それぞれ価格やサービスを競っていた自由競争の時代があったのだ。
再び電力自由化の時代を迎えた今、新しい電力戦争に立ち向かう経営者に求められているのは、戦前のような経営のダイナミズムではないだろうか。自由競争の中から、火力発電で電力新時代を切り開いた安左エ門という怪物が誕生したことを忘れてはならない。
ソフトバンクは電力小売業に参入したが、孫正義社長の狙いは送電網の解禁にある。
モンゴルの大英雄、チンギス・カンはモンゴル砂漠の片田舎、サルクヒトウルで馬を走らせた。首都ウランバートルから南に70キロ離れたこの地域は風の山と呼ばれ、一年中激しい風が吹き荒れる。
その荒涼とした大地に風力発電所を作り、無限の風を電気に変えて中国、韓国、日本に引いてくるというのが、孫氏が打ち出したアジアスーパーグリッド構想だ。グリッドとは、送電網の意味である。まさに、孫氏好みの雄大な計画だ。
電力戦国時代を迎えた今、孫氏は電力業界に風穴を開ける風雲児になれるのだろうか。「もしかしたら、平成の松永安左エ門になるかもしれない」と思わせるところが、孫氏が怪物経営者たるゆえんだ。
改正ガス事業法の対象が、大手3社だけになった理由
6月17日、大手電力会社10社と大手都市ガス3社のネットワーク部門を分社化することを義務づける、改正電気事業法と改正ガス事業法が参議院本会議で可決、成立した。
都市ガスの供給事業者は、全国に200社以上ある。大手3社は、最大手の東京ガス(登記上の正式社名は東京瓦斯)、京阪神地域が営業テリトリーで2位の大阪ガス(同大阪瓦斯)、愛知、岐阜、三重の3県に供給する3位の東邦ガス(同東邦瓦斯)だ。
西部(さいぶ)ガス(同西部瓦斯)は福岡市、北九州市が主要営業地域で、ガス販売量は全国5位だが、改正ガス事業法の対象外である。販売量で4位の静岡ガスも、同じく対象外だ。
電力会社は東京電力と、北海道電力、四国電力などの間に大きな格差があるが、都市ガス業界では、それ以上に事業規模に差がある。そのため、電力業界と同じ改革を促すのは無理という意見が出たため、改正ガス事業法の対象は東京、大阪、東邦の大手3社に絞られた、しかし、今後は「本当に上位3社だけの改革で済むのか」という議論が出てくるだろう。
(文=編集部)