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巨額なリストラ費用も、中村・大坪社長時代の負の遺産の前に効果なし

注力事業軒並み低迷、主力事業見えず…パナソニック復活のカギ

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注力事業軒並み低迷、主力事業見えず…パナソニック復活のカギの画像1「wikipedia」より
 家電大手のパナソニックは、2013年3月期の連結最終損益(米国会計基準)の見通しを、500億円の黒字予想から一転、7650億円の赤字に引き下げると発表した。前期(12年3月期)が7721億円の赤字だったので、わずか2年間に1兆5000億円以上の大幅赤字を計上したことになる。

 この決算内容は、人間の健康状態にたとえると瀕死の重体に相当する。「当社は普通の会社ではないと自覚するところから始めないといけない」と津賀一宏社長が言うように、普通の企業なら倒産してもおかしくないほどひどい内容だ。株主への年間配当も1950年5月以来、63年ぶりにゼロ(無配、前期は10円)に転落した。

●巨額な構造改革費用も効果なし……

 すでに同社は12年3月期に経営再建・黒字決算を目指して「構造改革費用」(下記の項目)7700億円の巨額資金を投入したばかりだ。その主な内訳は次のとおり。

(1)固定資産の減損損失(テレビ事業2700億円、半導体事業500億円)
(2)三洋電機ののれん減損損失2500億円
(3)早期退職一時金1000億円

 それにも関わらず、1年後にまた巨額赤字決算だ。2013年3月期決算の見通しは前期に続いて7650億円の大赤字を連続計上することになった。いったいこの1年間の収益回復・経営再建努力はなんだったのか? 巨額な構造改革投資は、まったく効果がなかったということか。経営トップは、その責任を厳しく問われても仕方がない。

 13年3月期の赤字決算の損失内容を、もう少し詳しく見てみよう。

(1)収益回復事業として期待した民生用リチウム電池、太陽電池、携帯電話事業は、軒並み想定したほど利益が見込めなかった。特に、最も期待した民生用リチウム電池は、韓国メ-カ-の価格競争に太刀打ちできず、大幅な事業縮小に追い込まれた。

(2)民生用リチウム電池・太陽電池の事業縮小により、三洋電機の買収で発生したのれん代ほか、無形固定資産は減損処理に追い込まれた。さらに、携帯電話事業ではスマ-トフォンの展開が遅れたことにより、旧松下通信工業買収で発生したのれん代も減損処理を余儀なくされた。これにより、当初三洋電機・松下通信工業の買収(M&A)で期待した成長戦略は完全に破綻した。

(3)それでは本業の主力製品はどうか? 白物家電は中国での不買運動の影響が懸念されるし、またデジタル関連製品・環境関連製品は売上高の見通しが下方修正されるなど、主力事業も不振または伸び悩みである。特にデジタル関連製品は薄型テレビ、ブル-レイディスクレコ-ダ-、デジタルカメラ、携帯電話など、ほとんどの製品が不振に喘いでいる。これら(1)〜(3)などの損失費用により、構造改革費用は前期に続いて13年3月期も3525億円が計上されている。

(4)構造改革費用の積み増しに加えて、さらに将来の税負担軽減を見込んで計上していた繰り延べ税金資産も4125億円取り崩すことになった。

●中村・大坪社長時代の負の遺産

 これらの損失拡大要因を見ると、経営トップの重大な判断ミスと意思決定の遅れによって発生したものがほとんどである。

 具体的には、以下のような点が指摘されている。

 ・薄型テレビ事業では、液晶よりもプラズマテレビへの巨大投資
 ・プラズマにこだわったことにより、液晶テレビの立ち遅れ
 ・携帯電話事業の展開の遅れ
 ・民生用リチウム電池や太陽電池など、電池事業の価格競争戦略の失敗と敗北
 ・三洋電機の買収など、甘い見通しとのれん代の評価損
 ・構造改革費用を積み増して「財務的リスクを一掃することで、今度こそ膿を出し切る」と津賀社長は言うが、中村・大坪社長時代の構造改革の取り組みや経緯がなんら検証されず、構造改革の甘い見通しが提示されるだけで、次なる成長戦略が具体的に見えてこないことなど

BusinessJournal編集部

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