現在、メディアではアベノミクスで株価が大きく上がり、これからも上がり続け消費も活性化しているという話がよく出ています。月刊誌「日経マネー」(日経BPマーケティング)の個人投資家調査によると、株高・円安を追い風として2014年に5%以上の運用収益を上げた個人投資家が半分を超えたそうです。金額ベースでは3割強が100万円以上の利益を確保し、利益率が高かった人はリスク性資産の運用比率が高かったとのことです。
しかし、13年末の日経平均は約1万6300円で、そこから1年半で2万円を超えていることを考えると、半数近くの人が5%未満の収益しか上げていないという結果には違和感を感じます。各金融経済団体や学識経験者で構成される金融広報中央委員会によると、20代単身者の金融資産保有額は14年の調査では147万円と、5年前の4割の水準に落ち込んでいます。14年に始まった少額投資非課税制度(NISA)も口座開設者は40代以上に集中しており、20代は3%にすぎません。
これは、若い人ほど投資に冷めていることを意味しているのでしょうか。それとも、新聞をはじめとするメディアや政治家が力説するように経済が好転して、その波及効果が投資ではなく消費に表れているのでしょうか。
いずれにしても、筆者の肌感覚としてはここ最近、大企業に勤めている人ほど本当にうれしそうにしているように見えます。昨今の株高や投資環境の改善は、大企業の社員に大きな恩恵を与えているのかもしれません。
そんな大企業でも、どこか停滞して、働いている社員があまり生き生きしていない企業に共通して見られる現象について、本連載前回記事では人材採用やコンサルティング会社の起用などの場面で垣間見えるものを紹介しました。今回は、会議や意思決定などにおいて見られる現象を紹介していきます。
(1)会議自体が大切な仕事
「大企業は会議が多いため、責任が分散して意思決定がどんどん遅くなる」と、以前からよくいわれています。では、なぜ減らないのでしょうか。
根底には、会議でただ座っていたり、役に立たない資料を作成することが仕事として認められているケースがあります。「無駄な会議や無駄な資料をなくす? そんなことしたら、どれだけの人間が社内失業すると思ってるんだ? 暇になって余計なことされても困るだろう」とは、ある有名企業のユーモアある役員が半分冗談半分真顔でおっしゃっていたセリフです。結論が変わらないことでも、いちいち検証のための資料をつくらせる。簡潔なメモ書きなんて許さない。やってみなければわからないことでも、やってみないうちに色々と仮定や試算を張りめぐらせます。会議に座っているだけでは責任も発生しませんし、「ホント、無駄な会議多いよなあ」と言う人の大半は、本音では少し心地よいとも思っています。