西京銀行と切れる
TATERUはなぜ、資産の売却を急ぐのか。
非上場の地方銀行の西京銀行(山口県周南市)から、借り入れ希望者の預金残高を水増しして融資を引き出していたことが発覚し、取引ができなくなったからだ。
TATERUの多くの客は、西京銀行から建築資金を用立てていた。一方、西京銀行はTATERUを通してアパート建築融資を拡大できるというウィンウィンの関係だった。不動産投資型クラウドファンティングの共同事業化でも提携した。
スルガ銀行が2000年代半ばごろから会社員ら給与所得者向けに投資用不動産への融資を増やし、高収益銀行に変貌した。大都市圏の不動産を担保に多額の融資ができることから、地方銀行がこぞって参入した。
西京銀行の平岡英雄頭取は5月10日の決算会見で、アパート投資向けの新規融資から撤退することを明らかにした。18年9月から新規の受け付けを停止した。19年3月期決算は、アパートローン全般を対象とする貸倒引当金を積み増したことが響き、純利益は前期比24%減の32億円となった。東京ローンセンターは6月末に廃止する。
TATERUは西京銀行から融資を受けるビジネスモデルが崩壊した。経営悪化は株式市場でマネーゲームの対象となる。TATERUの株価は、不正が発覚する前の高値が18年4月3日の2549円、不正発覚後の安値は19年5月14日の180円と93%の暴落だった。
国交省が業務停止命令
国土交通省がTATERUに業務停止命令を出す方針を固めた。
TATERUが建設資金の借り入れ希望者の預金データを改竄していた問題で、国交省は6月21日、同社に対する聴聞を開き、宅地建物取引業法に基づき業務停止処分とする方針を伝えた。同社は改竄の事実を認めた上で、「類似事例と比較しても業務停止という処分は重く、指示処分にとどめるべきだ」と反論した。
TATERUの古木大咲社長は聴聞の冒頭で「事実関係に間違いはなく、大変申し訳ない」と陳謝した。一方、業務停止をされる処分内容については争う姿勢を示した。
TATERUの株価は業務停止命令の方針が伝えられた6月18日、一時、前日比22%(50円)安の181円まで下落。年初来安値(180円、5月14日)に急接近した。終値は19%(43円)安の188円。値下がり率は東証1部上場銘柄でワースト1となった。業務停止によって「業績への悪影響は必至。今期(19年12月期)に赤字に転落する可能性が大きくなった」(建設・不動産担当のアナリスト)とみられている。
なお、6月24日には168円まで下落。上場来安値を更新した。「存続リスク」を意識した動きが出てきたようだ。26日163円、27日は162円。連日の上場来安値更新となっている。
(文=編集部)
【続報】
国土交通省は6月28日、TATERUに7月12日~18日の1週間、業務停止命令を出した。業務停止命令の期間が想定より短かったため、7月1日の東京株式市場でTATERU株は突飛高を演じた。一時、28.7%(48円)高の215円まで買われた。終値は30円高の197円。3月15日にも一時、25.6%高(68円高の333円)、5月27日には一時、30.1%高(65円高の281円)と買われたが、3月のケースでは2営業日で、5月の場合も5営業日で上昇分を帳消しにしている。マネーゲームだったことがわかる。2度あることは3度あるかもしれない。