「超高級ホテルに加え、近年は宿泊に特化した東横インやアパホテル、サンルートなど国内チェーン系ホテルの開業ラッシュが続き、東京は第3次ホテル戦争に突入しています。その結果、東京のホテル客室数は過去10年間で約2割、2万5000室も増加しているのです。客室稼働率は11年の東日本大震災で大きく落ち込みましたが、その後は急回復し、13年は約85%と好調な数字になっています」(ホテル業界関係者)
驚異の客室稼働率
そうした状況の中で、東京駅前にあるスモールラグジュアリーホテル(小規模な高級都市型ホテル)が大健闘している。創業は1899年の老舗、龍名館(東京都千代田区)が運営する「ホテル龍名館東京」(09年開業)だ。客室数135部屋、従業員は20名ほどの規模である。
14年3月期は決算期変更に伴い9カ月の変則決算だったが、宿泊売上高は5億6256億円に達した。年度ベース(13年4月~14年3月)は同7億4476万円(前年度比1%増)となり、4期連続で過去最高を更新した。客室平均単価も1万6944円(同5.4%増)となり、こちらも4期連続(前年同月比では45カ月連続)で過去最高となった。稼働率も9割前後と高い水準が続いている。
「お客様は国内が6割、外国の方が4割です。アメリカやオーストラリアなど、ビジネスパーソンの方が多いですね。景気が上向き傾向にあるという経済状況に加え、これまでの販売スタイルを見直したことがプラスに作用しました。販売代理店への依存度を下げ、自社販売の比率(直販率)を48.7%(前年度比9.7ポイント増)にまで向上させたことで、客室の販売価格の自由度が高まり、売上高アップにつながりました」(龍名館取締役の濱田裕章氏)
龍名館の歴史は古い。源流の「旅館龍名館本店」(千代田区神田駿河台)は1899(明治32)年の創業。開業以来、著名な文化人に愛されてきた。日本画家の川村曼舟や伊東深水、竹久夢二らが泊まったこともある。東京の風俗が描かれている幸田文の小説『流れる』(56年)の一節、芸者同士の会話の中にこんなくだりがある。