西五反田店(東京都品川区)は近くにオフィス街があるためか、男性用の衣料品を前面に打ち出しているのが特徴だ。筆者が訪れた時は、メインの入り口を入ってすぐのところにシャツがずらりと陳列されていた。その奥には書籍が配置されている。2階も同様で、階段を上がってすぐのところに衣料品や腕時計などが陳列されていて、奥のほうに書籍やCDなどが置かれていた。衣料品の在庫は豊富で、衣料品コーナーは来店客で賑わっていた。
地域の特性を生かした施策は、地域をよく知る現場従業員の力が欠かせない。そこでブックオフは、施策の実効性を高めるため、現場の裁量を大きくするようにしたのだ。それまでは店舗の管理体制を店舗形態別としていたが、これを地域別に変更し、地域営業部に権限を委譲した。これにより地域特性に応じた店舗運営が可能になったのだ。
4年間で100億円の資金を投入
こういった施策は、商材別の売上高の伸びに如実に表れている。19年3月期のトレーディングカード・ホビーの国内既存店売上高は前期比18.6%増、貴金属・時計・ブランドバッグが18.1%増と、それぞれ大きく伸びた。また、前年割れが続いていた書籍も2.3%増のプラスに転じている。
CD・DVD・ゲーム等も2.0%増と好調に推移した。そして通期の既存店売上高は3.5%増と大きく伸びることとなった。地域の特性に合わせた品ぞろえが功を奏したといえるだろう。
こうした成功を踏まえ、今期も書籍以外の商材の充実を目指す。都心の駅前を中心に買い取り専門店を大幅に増やして商材をかき集める考えで、今期は4店を出店する計画だ。主要都市圏の郊外では、「ブックオフ スーパーバザー」と呼ばれる500~1000坪超の大型総合リユース店を積極的に出店する方針で、今期は7~8店出店する。
こういった新規出店に年間10億円ほどを投資。ほかに、店舗改装や物流機能の強化などに年6億~8億円、ITシステムに年10億円、計26億~28億円を年間で投資し、今期からの4年間で総額100億円程度の投資を実施する考えだ。
今期は売上高が前期比2.7%増の830億円、営業利益は16.1%増の18億円を見込む。純利益は、前期がグループ再編に伴う税負担の軽減効果など一過性の要素を多く含んでいたことから、44.8%減の12億円とした。ブックオフは勢いに乗って、業績を伸ばしたい考えだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。