不適切会計問題で揺れる東芝の第三者委員会は、西田厚聰相談役、佐々木則夫副会長、田中久雄社長の歴代3社長に対する調査を進め、上層部の関与をすでに把握しており、佐々木氏と田中氏はすでに引責辞任の意向を固めたとも報じられている。
東芝は経団連会長も輩出してきた日本を代表する総合電機メーカー。2003年には委員会設置会社にいち早く移行し、社外取締役制度も積極的に取り入れてきた、大手上場企業の中でもコーポレートガバナンスを推進するモデル企業のような存在だった。その東芝で経営陣主導による不適切会計が行われていたということになれば、日本のコーポレートガバナンスのあり方が根幹から崩れていく。日本取引所グループの清田瞭最高経営責任者(CEO)は「進捗や最大限の修正額を適時開示するよう再三お願いしている」と語る。
その東芝で、いったい何があったのか。
前代未聞の事態
東芝の事件が発覚したきっかけは、証券取引等監視委員会への内部通報だった。2月12日には同委員会が同社を開示検査した。同社もまた3月下旬に独自調査で一部インフラ関連の工事で調査の必要性が判明したと発表し、4月3日には室町正志会長を委員長とした特別調査委員会を設置し調査を開始した。
調査を進めていく中で、工事以外にも調査の必要な事項が判明したため、日本弁護士連合会の定めるガイドラインに従い5月8日、外部専門家による第三者委員会の設置を決定した。22日に具体的な調査対象として4つの会計処理を決定し、調査を開始したという。
調査の対象となったのは(1)電力システム、社会インフラシステム、コミュニティーソリューションの3社内カンパニーの工事進行基準に関する会計処理、(2)映像事業における経費計上に関する会計処理、(3)ディスクリート、システムLSIを主とする半導体事業の在庫の評価に関する会計処理、(4)パソコン事業における部品取引等に関する会計処理の4つの不適切会計処理だ。東芝の中核事業のほとんどで不適切会計処理が行われていたということになる。
一方で東芝側も第三者委員会の調査と並行して、東芝本体とその連結子会社584社の会計処理の適切性について09~13年度分を調査し、12の案件で問題が判明した。定時株主総会に決算を上程できないことが判明すると、5月29日の取締役会で株主総会の開催を行うかどうかが検討され、「長期間総会が開かれないのは問題だ」(東芝広報担当者)という判断から株主総会の開催を決定した。