鈴木修会長がとどまることも辞めることもリスク
スズキの不健全な組織風土は、創業家支配の中で醸成されたものであり、「容易に改善できるものではない」(関係者)。
独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス規制逃れが明らかになり、自動車メーカーのモノづくりの姿勢に厳しい目が注がれる最中、スズキの燃費測定への不正が発覚した。
当時の経営トップの発言を再検証してみよう。「(現時点では燃費不正の問題は)ない」。修会長は16年5月10日、決算発表の席上で燃費不正の存在を否定した。だが、それからわずか1週間後の5月18日、一転して謝罪会見に追い込まれた。
「スズキの社風が影を落している」と指摘された。スズキの経営の真骨頂は、コストを徹底的に削る「ケチケチ作戦」。これが不正の温床になったとの、アナリストの分析もある。
この時も、不正の実態が経営陣に上がってこない風通しの悪さが最大の問題点と指摘された。不正が発覚した際に、修会長がCEO職を俊宏社長に譲ったが、その後、CEOそのものを廃止した。つまり、修会長が今でも実質的な最高経営責任者なのである。
不正検査の背景にあるのは、企業風土の問題だ。企業風土の改革には89歳の修会長が引退して自ら範を示す必要があるが、首に鈴をつける人がいない。
6月27日の株主総会では「修会長の大ファンだ」と前置きして質問に立った男性株主は、「修会長は以前から危機管理に力を入れていた。もっと会長を見倣うべきだ」と、ほかの役員を叱責した。
「スズキ=鈴木修会長」となっている。「修氏は生涯現役(経営者)だろう」との見方も多く、そうなると企業風土の改革は絶望的なのかもしれない。
一方で、修氏が辞めることには大きなリスクが伴う。株価も下がる可能性ある。とはいえ、企業の存続を考えるなら、もっと大きなリスクに目を向けなければならない。
19年の株主総会における修会長の支持率の急落は、俊宏社長に「親離れ」を促しているといえる。今決断しなければ、俊宏社長のほうが先に株主から不信任される恐れもある。
(文=編集部)