この結果、MTGの業績拡大を支えた韓国での販売が急速に減少した。中国のインバウンド需要を取り込んできた日本の百貨店や免税店などにおいても中国EC法の施行とともにリファに対するインバウンド需要が失速してしまった。MTGは中国国内における美顔器への需要は底堅く推移すると見込んではいるものの、日韓の販売減少を埋め合わせるだけのモメンタムはない。MTGは2019年9月期の営業利益を当初計画の98億円から10億円に引き下げた。
MTGにとって中国の需要に支えられた美顔器事業の動向は、ブランディングを通して高付加価値の商品を販売して収益を獲得するというビジネスモデルを揺るがす問題だ。トレーニング機器であるシックスパッド事業の売り上げは、緩やかに増加している。ただ、美顔器事業への依存度が高く、当面の業績への不安は高まりやすい。
中国子会社における不適切取引の発覚
MTGは中国需要の急減に加え、中国の子会社であるMTG上海における不適切な取引や会計処理、および虚偽説明の疑義といった問題にも対応しなければならない。中国子会社の問題からいえることは、MTGが成長を過度に追求し、中国ビジネスのリスクを見落としたことだ。企業として成長を追い求めることは当然だ。それは、持続可能なものでなければならない。MTGは相対的に成長期待の高い中国に狙いを定め、その需要取り込みを狙った。その発想自体に問題はない。
加えて、企業が持続的な成長を実現するためには、コーポレートガバナンスの体制を整え、強化することが欠かせない。その目的は、過度なリスクテイクがないか、適切に会計などの業務が行われているかを客観的にチェックし、経営者の強欲の行き過ぎを防ぐことだ。
振り返って考えると、MTGはあまりに前のめりの姿勢で成長を実現しようとしてしまった。2008年から2018年までの間に同社の従業員数は17倍近く増えた。昨年7月には東証マザーズ市場への上場も果たした。上場を行えば、経営者は株主への説明責任も果たさなければならない。
利害関係者が増えるに伴い、ガバナンス体制を整備することは不可欠だ。しかし、MTGはガバナンスの整備よりも中国での利得確保を優先してしまった。中国では、日本の常識が通用しないことが多い。リスクの管理には、国内事業とは異なる発想が必要だ。住宅設備大手のLIXILでは買収した中国子会社の不正会計が発覚し660億円の損失を計上した。ファミリーマートも中国事業をめぐって、パートナー企業との関係が悪化している。