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田中洋「マーケティングのキーインサイト」

なぜ花王は、梅雨前線の動きに合わせてエリア別広告展開?マイクロモーメントの時代

文=田中洋/中央大学ビジネススクール教授

 スマホPCとでは、情報検索のありようが異なるのでしょうか。スマホの検索(80%)のほうがPCの検索(52%)より、そのときどきに発生するニーズに対応した自発的な検索行動になる傾向があります。PCの検索はより、計画的な検索行動です。スマホによるマイクロモーメントとは、そのときどきに発生した情報ニーズへの消費者の対応モードなのです。

時間への対応

 こうした消費者のマイクロモーメント行動に、マーケターはどのように対処すべきでしょうか。

 マイクロモーメントの検索行動において、消費者は我慢強くありません。自分で期待する結果が消費者にはわかっているために、得られる情報への期待水準も高く、もし望む結果が得られないと、すぐにイライラします。マーケターは当然、消費者が望む情報が、ニーズ発生時点ですぐに得られるような情報提供を目指さなければなりません。

 ひとつは、季節やタイミングなどの時間的な対応です。ある調査によれば、米国シカゴでは、気温が高いほど、人々は「近くのレストラン」(restaurants near me)という検索語でレストランを検索する傾向があります。つまりマイクロモーメント行動においては、気候や温度など、消費者が置かれている環境の影響も大きいのです。環境の変化に対応したウェブ体験をデザインしなければなりません。

 花王では季節と地域ごとのウェブ広告を企画しています。梅雨の季節には、「広がる」「うねる」「くずれる」「まとまらない」など、ヘアスタイルの悩みが顕在化します。このためスタイリング剤のニーズが梅雨時には高まるのです。同社では、梅雨前線に合わせてエリア別に広告戦略を展開して成果を上げています。こうした季節×地域のきめ細かい対応も、マイクロモーメントへの対応方法のひとつといえます。

消費機会への対応

 また、新しいマイクロモーメントのチャンスを発見し、対応することも重要です。

 格安旅行の検索・比較サイト「トラベル・ジェーピー」が7月20日に発表した「国内旅行人気キーワードランキング」によれば、1位は「ディズニー」、2位は「USJ」が検索ワードとして挙げられています。これだけならあまり不思議はありません。しかし、第3位の検索ワードは「トーキョーブックマーク」というサイトです。

田中洋/中央大学ビジネススクール教授

田中洋/中央大学ビジネススクール教授

京都大学博士(経済学)
日本マーケティング学会会長、日本消費者行動研究学会会長を歴任。
1975~1996 21年間、㈱電通勤務。
1996~1998 城西大学経済学部助教授
1998~2008 法政大学経営学部教授
2003・4年度コロンビア大学ビジネススクール客員研究員
2008~2022 中央大学ビジネススクール教授
2022~ 中央大学名誉教授
元・東証一部上場・ソウルドアウト株式会社社外取締役
関心領域:マーケティング論・ブランド論・広告論
田中洋 中央大学ビジネススクール教授のオフィシャルサイト

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